第45話 溢れる笑顔と引っ掛かり
「遥さん、やりましたね! 生徒会に条件を突きつけられて、すぐに顧問と副顧問の先生を見つけるなんて普通の人ならできませんよ。本当に凄いです!」
「そうかしら? まぁ、私も転校してきたばかりではあるけど、隷属部の部長、そしてこの学校を引っ張る存在として貢献してきたからね。そんな私にかかれば、生徒会の厳しい条件なんて簡単。なんならもっと厳しくしてくれてもいいぐらいだわ!」
「こんな頼もしい人が部長だなんて凄く心強い……。これぞ、私たちの救世主! 私、一生ついていきます!」
部室前と全く同じやり取りを倍以上の熱量で行う遥と桐葉。ここは人通りの多い中庭だというのに、周りのことは気にも留めず、二人は喜びに浸りきっていた。
「全く……、遥も桐葉ちゃんも能天気なもんだよな。いくら先生が確保できても、部員が集まらなきゃ全く意味がないって言うのに……」
「ふーーん……。能天気ねぇ……。悠斗、アンタ随分と言ってくれるじゃない。私と桐葉ちゃんがそんな単純な思考回路しかないと思ってるの? もし、そうだとしたら部室で前と同じように制裁しておくべきかしら?」
悠斗は俺にだけ聞こえるようにこっそりと呟いたにも関わらず、遥は凄まじい速さで近づいて、その内容を全て把握していた。それが分かった途端に、悠斗は再び恐怖で顔が真っ青になり慌てふためきながら、
「ち……、違うっ! 俺は新入部員を集めれないと、この努力が無駄になってしまうことが気になってただけだ。決して二人を馬鹿にしたわけじゃ………」
「まぁ、いいわ。確かに今私達が油断できる状況じゃないのも事実だし、それで不安に思ってしまう気持ちも分かるわ。でも、そんな状況でもどうにかなるわ。桐葉ちゃん、隷属部の部長は誰だったかしら?」
「教祖s……。いえ、遥さんですっ!! 遥さんという素晴らしいリーダーがいる限り、私は明るい未来しか見えませんっ!!」
遥が軽く目配せすると、成功を経験したことでより目の輝きが強くなった桐葉の張りのある返事が響き渡る。それで、より機嫌が良くなったのか俺と悠斗が怪訝な目をしているのにも構わずに遥は鼻高々に胸を張って、
「そうよ! 私がいるんだから部員の一人くらい入部させるのなんて簡単よ。今、入部希望者が一人もいなかったとしても、この溢れるオーラと力が勝手に人を引き付けちゃうだろうから、明日にでも隷属部が復活するかもしれないわね。いったいどんな子が隷属部にやってくるのかしら? あーはっはっは!! 考えるだけで楽しみになって来たわ!」
「流石です! 明日の朝にでもパパっと部員を集めちゃいましょう! 遥さんの言う通りにすれば、上手くいくこと間違いなしです!」
「はぁ……。分かった、俺も遥に従うよ。だが、こんな調子で本当に大丈夫なのか……? なんだか、嫌な予感しかしないんだが………」
「………………………………」
自信が溢れて止まらない遥は豪快に笑い続け、桐葉と悠斗はそれぞれの反応を見せる中、俺だけは黙って遥を見続ける。タイムリープが久々に起こらなかった何気ない一日。俺は静かに違和感を抱えていた。
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