第10話 楽しい囁き1
家に帰りつくと俺は制服のままベッドに横になった。自分のスマートフォンにイヤホンを接続し、自分の耳を塞いで画面を何回かタップする。さて……、もし間違ってたらどれくらい怒られるかな……。俺の指先は水蓮寺遥へと繋がる電話のアイコンを慎重に押す。親以外の異性との初めての電話がまさかこんな形になるとはな。軽く苦笑していると呼び出し音が突然途切れ、それと同時にバカに元気な声が聞こえてきた。
「おおっ! よく私の言いたいことが分かったわね。流石に私の秘密を知るだけのことはあるわ。正直一条があの隠しメッセージを読み解いてくるとは驚きだわ……」
「隠しメッセージ? あんなの俺からすればただの反対言葉だろ? 『私たちに残された時間は数日。ここで動かないと時間が戻ることなんてない。』とか言ってるときにはもうはっきり分かってたよ。それより……、今日は顧問探しについて話し合うんじゃないのか?」
「そう! 今日はとりあえず作戦を立てておこうと思って……。じゃあ、一条、最終勧告から逃れるためには最初に何をするべきだと思う?」
「なにって……。まずは条件を満たすために部員と顧問を探すんじゃないのか?」
「違うわよ! 何? 眠気と疲労で急に頭が動かなくなっちゃったの? 私達がまず最初にやるべきなのは私の能力を完全に理解して二人で共有することでしょ!?」
イヤホンで耳に集中しているからか水蓮寺の声はいつもよりやけに高く張りがあるように聞こえる。俺は軽く目をかきながら、眠気を飛ばして水蓮寺の計画をしっかり聞くことにした。
「いい!? 私達に残された時間はあと3日、それも生徒会が圧力をかけてくる状態で顧問と部員を探して来いだなんて無理に決まってるでしょ? だから、まずは私の能力を使えるようにして何回でもやり直せるようにしておかないといけないのよ」
「じゃあ、明日からの3日間は顧問を探したりなんかはしないってことか……? もし、いきなり水蓮寺の能力が使えなくなったりしたらどうするつもりなんだよ」
「その時はその時よ。とりあえず昨日まではちゃんと発動してるんだから、能力は消えてないはずだし。だから、一条は明日から私とつきっきりで能力の発動条件を見つけ出しなさい。分かった!?」
「はいはい……。全ては部長の仰せのままに従いますよ……」
跳ねるようなテンポとテンション感でしゃべり続ける水蓮寺に俺は内心どうしようかと戸惑いつつも、いつもより少し大げさに反応する。普段とは少しだけ違う二人だけの囁き話。そんなちょっとした特別感に耐えきれなくなった少女の笑い声が俺の鼓膜をくすぐった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます