第5話 廃部通告とトリガー2
「どいうことだ……。俺達は先輩に会っただけなのに、なんでここに戻ってるんだ……?」
「分からない……。ただ生徒会室に入っただけでどうして能力が発動するなんて……。初めてだわ」
不可解な逆行に困惑する俺と水蓮寺。何が原因なんだ? 無言で頭を整理しているといつの間にか部室の扉が開け放たれていた。
「やはり……、ここに居ましたか……。二人だけでもいるなら結構です。今すぐに生徒会室に来てください。今日で終わる部活動なんですから、最後くらいは常識的に行動してくださいね」
先ほどと全く同じ石立のセリフと雰囲気に改めて同じ時間を繰り返しているのを自覚させる。また同じミスを繰り返せばその分だけこの瞬間から抜け出すのは遅くなる。そうなれば何が原因で戻ってしまったのか考えないといけない。俺が先輩と目があった瞬間にタイムリープが起きたのだとすれば…………。そこまで考えたところで水蓮寺はこちらに耳を寄せて、
「どうする? 私的にはここの選択が重要な気がするんだけど……」
「今回は水蓮寺だけが生徒会室に行って話を聞いてきてくれ。俺はとりあえず部室で待ってるよ」
「分かった。じゃあ、私ひとりで行ってくるわ。一条はこれでダメだった時にどうするか考えておいて」
水蓮寺は俺の提案を承諾すると冷静に石立のもとへと向かう。しかし今度は水蓮寺が石立について部室を出るよりも先に視界が眩みで歪んだ。
「また……、ちょっとだけ戻った……? これはどういうことだ?」
俺は水蓮寺の間近でまた激しい動揺に襲われる。しかし、なぜか水蓮寺は少し落ち着いた様子で耳にかかった髪をかき上げていた。
「これは……、おそらく私のせいね。自分の行動が自分の立ち位置とは合っていなかったらそこに戻ってやり直す。私はそうやってこんなキツい口調や激しいテンションを自分のものにしていったの……。だから、この場面もそれと同じ。私は隷属部の存続をかけて生徒会とは真っ向から対決しないといけないんだわ……」
そう言うと水蓮寺は人格を切り替えるように一気に表情を険しくして石立の元へ近づいていった。大股で固く拳を握りしめる背中は間違いなくいつもの水蓮寺だった。
「話はまとまったようですね。これからいったい何をするつもりですか? あくまで抵抗するようならこちらにも対抗手段を講じる必要がありますが……」
「はぁ? それが何だっていうの? アンタ達が理不尽な理由でこの部活動を潰そうとするのなら私にも考えがあるわ。対抗手段でも最終手段でもやれるもんならやってみなさいよ!!」
石立はもともと曇っていた表情に明らかな不快感を滲ませる。隷属部と生徒会による全面対決の幕が開けた瞬間だった。
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