第23話 新イベント発表会2
水蓮寺の声で再び会場は静まり返り、生徒会室中の注目が水蓮寺に注がれる。しかし水蓮寺はそれも予測できていたのか余裕そうに口角を上げた。
「解放祭……、それは鬱屈とした5月に繰り広げられる自由と欲望の解放をテーマとした新イベントです。新しい学年にも慣れ始め徐々に退屈になってきたこの時にこそ、自分の欲に正直に、自由に楽しむことが重要なのです! さあ、みなさんこのイベントで変わり映えの無い高校生活を盛り上げていきましょう!」
「素晴らしい! なんて素晴らしいイベントなんだ! 俺も、このイベントを盛り上げるぞ!」
「そうね! 私もやる気が出てきたわ! みんな、協力してこのイベントを成功させましょう!」
水蓮寺が話し終わった瞬間に生徒からは歓声が上がり、会場は熱気に包まれた。水蓮寺はここぞとばかりにドヤ顔で、
「どうよ、一条。完璧な発表だったでしょ? 私が本気を出せばこんなものよ」
「確かにお前の発表は良かったが……、さすがにここまで盛り上がるのはおかしいだろ。水蓮寺、お前何かしたな……?」
「当たり前でしょ。発表前に根回しくらいするわよ。このイベントの私は本気なんだから!」
根回しって本当に政治家かよ。そんなことを思っている間にも水蓮寺が手配したサクラたちは盛り上がりを増していた。ほとんどの生徒が椅子から立ち上がってそれぞれが大声を出し会場内は完全にカオスな状態になっている。どうやら水蓮寺は参加者全員に根回ししていたようだ。
「よーしっ! みんな頑張るぞー!」
「「「おおおおおーーーーーっっ!!」」」
もはや全員が本気で盛り上がっているのではないかと思うくらいのテンションで生徒たちは叫び続ける。……そしてそのまま10分が経過した。
「えっと……、そろそろ次に移りたいんですが……」
石立が不満そうな表情でこっちを見ている。俺はその冷たい視線にも全く気付かない水蓮寺の肩を強く叩いた。
「おい、お前が原因なんだからちゃんと言うこと聞かせろよ。発表会が上手く進行できなくなってるじゃねえか。でもここまで騒がしくなってたらお前の言うことも聞かないかもしれないけどな!」
「ふっふっふ……。なめてもらっちゃ困るわ。私が完璧に取り仕切るところをよーく見ておきなさい」
そう言うと水蓮寺は再びマイクを手に取り、颯爽と立ち上がる。どうやら生徒に近づいて止めに行くつもりらしい。
「みんな、盛り上がってるところ悪いけどちょっと聞いて! もうそろそろ次の話題に―――」
「あ、水蓮寺さんだ!」
「水蓮寺さんも僕たちと盛り上がりに来たんですね! みんな胴上げだ! 水蓮寺さんを胴上げしろーーーっ!」
生徒たちは一糸乱れぬ動きで水蓮寺を持ち上げると一気に胴上げを始めた。
「もうやめて! 私、ここまでやれっていってないでしょ! お願いします。もうやめてください!」
水蓮寺が泣き叫んでも生徒たちは胴上げを止める気配は無かった。結局、先輩が制止するまで水蓮寺は数十回宙を舞ったのだった。
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