第11話 桐葉と部活2

「一条、お前! こんな可愛い妹居たのか?」


「え、あなた達兄妹なの? 桐葉ちゃん良かったわね。こんなお兄ちゃんに似てなくって」


 俺と桐葉が兄妹だったことが余程衝撃的だったのか、悠斗と水蓮寺はしばらく俺に質問し続ける。しかし俺にはそんな質問に答える余裕は無いことを察知したのか、代わりに桐葉が返答をした。


「私とおにいは義理の兄妹なんです。春に両親が結婚した関係で……」


「ああ、そういうことか。てっきり一条が何年も妹のことを隠してたのかと思ったぞ」


「はい! じゃあこの下り終わり! ねえ、じゃあもうそろそろ桐葉ちゃんの依頼を言ってもらってもいい? 私もう楽しみで仕方なくって!」


 俺の話を続けるのが耐え切れなくなったのか、水蓮寺は強引に話を切り替える。すると桐葉は急に元気が無くなり、真剣に悩んでいるような素振りを見せた。家でも元気で明るい桐葉の悩み事か。俺も少し考えてみるが、全く思いつかない。そのうちに桐葉は目をうるませながら話し始めた。


「その……、実はですね……。私には義理の兄がいて……。1か月間二人暮らしをしてるんですが、全然仲良くなれないんです。私は自分から積極的に話しかけるようにしてるんですけど、兄は全然心を開いてくれなくて……。だから……、隷属部の皆さんに兄と仲良くするお手伝いをしてほしいんです……」


「分かった。それで桐葉ちゃんはどうやってこのクズ野郎と仲良くなるつもりなんだ?」


 いつの間にか悠斗は黙って俺の首を腕で締め、水蓮寺は汚物を見るような視線を向けていた。もう、俺は隷属部の中でも底辺になってしまったか……。兄が人権を失い絶望する姿を見て、桐葉は昨日と同じように悪戯っぽく微笑んだ。





「おい、桐葉。これは一体どういう状況なんだ?」


「おにい、今は勝手に話すのはダメだよ。おにいは奴隷で私はご主人様なんだから」


 俺が四つん這いになり桐葉を背中に乗せた状態で問いかけると、桐葉は上機嫌に物騒な内容を口走った。そうか、俺はもう奴隷になってしまったのか。俺はもはや歯向かう気力もなく、こんなおかしな状況をすんなりと認めてしまっていた。


「分かりました。ご主人様、私は何をしたらいいでしょうか?」


「おお! おにい分かってるね。じゃあ、とりあえずこのまま旧校舎一周行ってみようか!」


「え、流石にそれは……」


 俺は正気を取り戻し、抵抗しようとする。しかし、後ろを振り向くと水蓮寺が鬼のような形相でこちらを見ていることに気がついた。俺は観念して大きくため息をついた。


「分かりました。やります」


 俺は桐葉を背中に乗せて廊下を進み始める。兄が従順に従う姿に、桐葉は静かに笑い声を上げた。

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