ただの日常の切り抜き

waissu

第1話 散髪と薄いカツ

夕方のことだ。

「お金あげるから、店行って散髪してもらいなさい。」

母さんが夏休みの宿題をしていた僕に、そう言ってきた。

「嫌だ。別にこのままでいいじゃないか。」

「じゃああんたその髪型で修学旅行行くの?」

「それは…」

そういえば、夏休み中に修学旅行があるんだった。いや、でもな…

「 どうせ行くのが面倒って言いたいんでしょ。なんなら母さんが切ってあげようか?」

「それは絶対嫌だ!」

僕は覚えているからな。パンツ一丁で家の外の椅子に座らされて、母さんが素人のくせに調子のったせいで変な髪型になって、結局近所のおばさんに切ってもらったことを。

「嫌なら自分で行って散髪してもらいなさい。」

「分かったよ…。行けばいいんだろ、行けば。」

これ以上の抵抗は無駄と判断した僕は、渋々母さんから散髪代をもらって外出の用意をし始めた。

「じゃあいってくる。」

僕は自転車に乗って出発した。


でかいデパートにいつもの入口から入って、賑やかなゲームセンターを横目で見ながら歩く。しばらくしてその店に着くと、張り紙が張られてあった。

「カットのみ1000円か…前は確か1200円だったな。」

(200円猫ババできる…)

と心の中でガッツポーズ。

僕は少しニヤニヤしながらその店に入った。


しばらくして、スッキリした髪型で店を出た。

「ありがとうございましたー。」

お礼も忘れずに。


僕の前には、クレーンゲームがある。そう、今僕は、ゲームセンターにいる。猫ババした200円を握りしめて。一枚の板の向こう側には、僕の大好きなジャ●リコがピラミッドのように積み重なっていた。

「なるほど、スーパーボールをクレーンで運んで、ゴムボールに落として跳ね返ったのがあれに当たって落ちればいいのか。」

100円玉を一枚いれてやってみた。アームがスーパーボールを抱えてゴムボールの上で止まる。やがてアームが開き、スーパーボールが落ちてゴムボールによってジャガ●コの方へ飛んだ。しかし期待をこめたボール三個はあっさりとジャ●リコに跳ね返された。

ギリギリギリ…おっといけない歯ぎしりが。

別のやつしよ。


今度はビッグなカツのクレーンゲームだ。何と100円で3回も挑戦できる。

1回目は、1つゲット。よしっ。

2回目は、0個ゲット。…次だ。

3回目は、獲得ならず。…。

「まあまあ1つとれたしいいか。」

取り出し口から取り出すと、なんかぬるぬるしてたので店員さんのところまで行って取り替えてもらった。僕は袋を開けて中身をかみちぎった。200円の出費の末に手に入れたビッグなカツは、味が薄かった。




















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