妹に何もかも奪われた姉は仕返しを企む。地獄に落ちたくらいで許されるとは思わないでください:多
仲仁へび(旧:離久)
第1話 死に気付く事ができる力
名門貴族の家の娘である私、フィアルド・ティ―クスは、水晶を覗き込む。
そこにはとある映像が映し出されていた。
見えるのは、ここではないどこかの光景だ。
紫の空に、とげとげした険しい山。
周囲には、鬼と呼ばれる架空の生物や、死神などが映っていた。
地獄のような光景だが、それは比喩ではない。
そこは、正真正銘の地獄だった。
そんな地獄には私の妹、ユフィー・ティ―クスもいる。
ユフィ―は、地獄の中で地獄のような目に遭っていた。
息を切らして、鬼や死神から逃げ回る妹は、逃げ込んだ先で煉獄の炎に焼かれて苦しみだす。
妹のユフィ―がそんな目に遭う原因を作ったのは私だ。
私は、死神と契約して、妹を地獄に落とした悪女。
けれど、私がそんな事をするのは、妹の自業自得でもあった。
死神からもらった水晶。
その内部に映し出された妹が、「どうして死んでまでこんな目に」と言いながら地獄の業火に焼かれていった。
貴族として生まれ育った私フィアは、裕福な環境で過ごしていたけれど、ある時までは普通の人間だと思っていた。
ごく普通の人間のように友達を作って、普通に恋をする相手を見つけて、一生を終えるものだと思っていた。
自分の目の力に気づくまでは。
あの運命のその日から、私の運命は大きく変わってしまったのだろう。
私の目は、少々特殊だったらしい。
「どうして? 変な物が見えるわ、黒い布をまとったガイコツ。もしかしてこれっておとぎ話に出てくる死神かしら?」
ある日、突然私は人間でないものが、見えるようになった。
見えたのは黒い布をまとったガイコツだ。
それは、地獄からの使者、死神の姿だった。
それが分かったのは、屋敷の裏に住んでいた小動物が病で死ぬ前だ。
どこからか迷い込んできた動物で、ユフィ―と一緒に二人と一匹で遊ぶ事が多かったから、ショックだった。
その可愛がっていた犬が死ぬ前、死神が迎えに来るのが見えた。だからその時に納得したのだ。
自分のこの目は死が見えるのだと。
私はこれから死ぬ人が分かるようになってしまったのだ。
自分の目がどんな力を秘めているのか分かった時、自分が自分でなくなるようで怖くなった。
だからだろう。
秘密を一人で抱えるには重すぎて、耐えられなくなった。
「お母様、お父様。そしてユフィ―。信じられないかもしれないけれど、実は私、人の死が分かるの」
意を決した私は眠れぬ夜に、悩みながらもその事を両親と妹に話した。
どんな反応をされるか怖かったけれど、彼等は私を抱きしめてくれてくれた。
「よく話してくれたわね」
「俺達を信じてくれてありがとう」
「なにがあっても、ユフィ―のお姉さまはお姉さまです」
彼等は私が打ち明けた目の事を理解してくれて、私の味方だと言ってくれた。
とても嬉しかった。
だから打ち明けて良かったと、その時は思っていた。
それなのに、
ほどなくして、その話が噂になってしまった。
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