でこぼこで正反対なカップルが同棲を始めたそうです。

江宮りゐ

0 君とぼく

第1話 ツンとデレ


「あ、千紗ちゃんおかえりー」



1週間ぶりに出張から帰宅すれば、マンションの重工のドアの向こうには洋服やゲーム機が散乱した部屋。



あまりの驚きにぽかーんと口を開けたまま唖然としていると、キッチンからひょいっとエプロン姿の雄太が顔を出し、玄関まで駆け足でやってきた。



『いやいやおかえりじゃないでしょ』



相変わらず雄太のだらしなさに千紗は絶句した。



ヘトヘトで帰宅した矢先がこれじゃあ、早々呆れてしまう。



「いや、俺が散かしたんじゃなくて、服がここに居たいって言うから」



『嘘つけ。服がしゃべるか。』



全く、ひどい誤魔化し様に千紗は一つため息をついた。



嘘が下手にも程があるだろうに。



千紗が頭を抱えて呆れた顔をすれば、雄太は潤んだ目でじっと見つめてくる。



まるで何かを訴えかける子犬のような。



散かした雄太が悪いとはいえ、千紗は少し言い過ぎた気がしてなんだか申し訳なくなった。



『…ごめんね?』



珍しく千紗が素直にそう言えば、



「え、なんで千紗ちゃんが謝るの?」



と、先ほどの子犬のような表情とは裏腹にどこか嬉しそうにニヤついて見せた。



どうやら千紗の謝る顔が見たかっただけらしい。



『それが目的か』



ぷんぷんと拗ねる千紗に、



「ごめんごめん、おかえり」



雄太は優しく微笑んで見せた。





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