第14話

壺湯を素通りしてうち湯に当たる2人。

ミナトも肩がすこしこっているためにうたれると気持ちがいい。



「うーん、整体とか通った方がいいのかなぁ。

酷くなるようだったら休職も視野に入れたらいいのかなぁ。」



真剣に悩むオオダだったが、ミナトの視線は彼女の胸元にいく。

間違いなくソレのせいじゃないかなぁ…アレをもぎ取ったら、彼女は救われるだろうか…などと考えを巡らせる彼女を他所にオオダは立ち上がる。




「少しのぼせ気味だから、ウチは上がるけどミナトはそうする?」


「私も上がるよ。

水を飲んで湯冷まししたら、宴会を始めよっか。」



それを聞いたオオダは目を光らせ、ムフーっと待ちきれないと言わんばかりにミナトの手を引いて早足で進む。

普段はオオダが静止する側なのにな、久しぶりの旅行でハイになったのだろうし…日頃のストレスもかなり溜まっているのだろう。


さて、今宵の晩酌は覚悟を決めなくちゃ。


本日2回目のドライヤーをかけながらミナトは覚悟を固め宿の浴衣に身を包むとオオダと共にエスカレーターを上がる。

途中、土産屋があったが荷物になるからと素通りし客室に戻った。




ソフトドリンク良し、お菓子良し、お酒良し、おつまみ良し、スマホをスピーカーモードにしてBGMよし。

フンスと満足気に準備を済ませたオオダは胸を張ってミナトを見る。


しかしお酒の量はかなりえぐく、異性がみたら絶対に引くやつだ。

彼女の名誉のために量や種類の詳細までは省くが…きっとオオダをお持ち帰りできる男はいないだろう。




「やっと、本番だね。

かんぱーい!」


「乾杯。」



カシュっと缶を開ける音を響かせたあとに強めに缶をぶつける。

割れてしまうコップじゃない為に遠慮はしていない。




ぐびぐびを飲み始める2人。



「そういえば、ミナトは最初はビールなんて飲めなかったよね。

いつ飲めるようになったの?」


「んー…職場の先輩の影響かな。」




ミナトには職場でかなりお世話になった人がいてその人物こそが、いま話した先輩だ。


ビール、たばこ、パチンコが好きなおっさんのような女性で顔は怖くて口調もやや荒々しいが部下や後輩思いの優しい人だった。

当時、新入社員だったミナトに対して自分もできないけどお互い頑張ろうと缶ビールを渡してくれたのが始まり。


この日以来、帰り道が一緒の方向もあって帰り道でコンビニで先輩がビールでミナトがつまみを買うのが日課になった。




当時、ミナトが買ったつまみのレパートリーは様々でチーズ、シュークリーム、から揚げ、煮卵等々…。

煮卵は殻付きで騒がしくていい思い出で、地下鉄の入り口に着くまでに殻をむいて食べなければと先輩が言ったものだから、短い距離で早食い紛いの事をした。



因みに、缶ビールの大きさも最初は一番小さいものだったが…いつの間にか一番大きいものになっていたという。



「へぇ、ウチは家系的にお酒に強かったらしいから今も昔も変わらないなぁ。」



会話しながらもあったが、ミナトが1本飲んでいる間にオオダは既に3本目を開け始めている。

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