第13話

大風呂をでた2人がたどり着いたのは、立ち湯と香り湯がある部屋についた。

ここも大理石のような石と金属の手すりタイルの床でプールを連想させるような雰囲気だが香り湯に浮かぶものがさっきと違って温泉らしさを出していた。



「これは…ヒノキなのかな?

オオダドンは何かわかる?」


「誰がオオダドンじゃ。

流石のウチも一目で木の種類を識別できないかなぁ、大工じゃないし。」



湯舟にはネットの中に入った気が浮いている。

何かの周期で変わるのだろうか、調べたHPでは別のものが浮かんでいて…あれは…確かリンゴだったっけか。


とはいえ、気持ちが良いのには変わらない。

ミナトは湯に浮かぶ木を触りながら体をつける、しかしオオダは何処か残念そうだ。




「…リンゴ…。」


「木の香りもいいじゃない。」



彼女のアレルギーは後天性らしく、昔はリンゴが食べれたらしく好物だったそうだ。

ミナト的には万が一の事があっても困るしコレで良いと思っている。


人が少なくてほぼ貸し切り状態でのびのびと入れるのは、ジーズンがズレて旅行した時の強みの1つだ。

見る物もあるし、いつぞやしたニセコの旅とは大違いだが…この話はまた別の機会に。



立ち湯の方も結構な深さではあったが、座って入りたい派のミナトはすぐにあがったが…オオダが立ち湯に入る様子はない。



「おや、オオダは入らないの?」


「うん、溺れることはないけど…足がつかなかった時の悲しさよ。」



切なそうな表情でそう言ったオオダの手を引いて部屋の扉をあけたミナトはメインディッシュと言える露天風呂にでる。

大きなコンクリートのようなもので遮られた壁に大きな岩で作られた淵とタイルの床の誰もがイメージする王道の露天風呂だ。


11月の寒くなっている夜の北海道の外の寒さは生まれたままの姿の人間にはかなりキツイ。



「っつつ!!」


「さむぅ!」



寒さにとても弱いミナトは、声にならない声で両手で体を抱きながら風呂の中に入り寒さに強いオオダも少し声を上げてミナトに続いて露天風呂に入る。

寒さから解放された2人は、安堵したように大きく息を吐きだして落ち着いて座り空を見上げた。


北湯沢も山の中にある為、北海道で綺麗な夜空が見える場所の1つで露天風呂から見える星空はとても綺麗だ。



「寒い時期だから空が澄んでるようで綺麗だね。」


「月が見えたらよかったのに。」



少し残念なのは露天風呂のライトが少しだけ強めな事か…それでも夜空の星は明るく綺麗だ。


…む?

すこし間をおいてミナトは、オオダを見つめた。



「おん、どうしたの?」


「オオダドンは…もしかして、私に月が綺麗ですねってベタな事を言わせようとしたかったの?」



ミナトの問いに露骨に顔を背けるオオダ。

できれば異性に言われる側に回りたいな…なんて考えながら呆れたように息を吐きだした。


何故オオダの思考回路はオッサンのようなのだろう、見た目と比例しなくていいのに…。

肩コリで辛そうにしているオオダの肩を揉みながら彼女の心配をしたミナトはうち湯の存在を思い出した。



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