魔法使いの少年VSロボットニンジャ ニンニンマジカル大激闘!

武州人也

プロローグ 黄昏時の灰色

 黄昏時の住宅街を歩く少年は、死の臭いを鋭敏に嗅ぎ取っていた。一般人ならともかく、がこの臭いを看過するはずもない。

 少年は切れ長の目を左に流し、そびえ立つ柏の木に視線を向けた。灰色の忍者装束をまとった男――背格好から男と判断したが、断言できるものではない――が、柏の枝の上からじっと地上を眺めている。男の顔の大部分は布に覆われており、その表情をうかがい知ることはできない。

 少年は灰色の男を睨みつけながら右手をかざした。すると、まるで手品のように掌からしゅるりと青く光るロープ状のものが飛び出して、男に絡みつこうとした。

 だが、男はそれこそ忍者のように跳躍してロープをかわしてしまった。飛び跳ねた男は住宅の屋根へと飛び移って、そのまま何処かへ去って行ってしまった。脱兎の如くという表現が似合う、鮮やかな逃走である。

 少年は、忍者が飛び去った方角を、ただじっと見つめていた。


「逃げられたか……」


 苛立ちを含んだ少年の独り言は、そのまま夕陽の中に溶けていった――

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