第54話 三人の旅路


 俺は旅の支度を終え、ポーチを腰に掛けて、一階に降りる。


 俺は良い匂いにつられて部屋に入ると、テーブルには朝の食事が綺麗に置いてある。


 料理はもちろん俺の大好物だ。


 テーブルに座るとノエルも厨房から現れる。


 ノエルもテーブルに座り、俺が食べ始めるとノエルも食べ始めた。


「やっばりノエルの料理は美味いな」

「もちろんですよ」




 そして食事を終えた俺とノエルは、ノエルの支度を待って、神器の弓で転移する。



「完璧に直ってるな橋は」

「はい」


 俺とノエルは結構頻繁に行商人が馬車を走らせ行き交う大きな橋。橋の隅を二人で手を繋ぎながら渡る。


「こんなに旅を始めるのが遅くなるなんて思ってもなかったな」


 俺がノエルの顔を見ると、目は泣き腫れて、鼻は赤くなり、表情は暗い。ノエルは放っておいたら泣きそうなぐらいに弱々しかった。


 でもやはりノエルの美しい顔は絵になる。


 ノエルの顔について言ったが、俺の顔も酷いだろうな。


 俺の顔はノエルみたいには絵にならない。


「ノエル、ありがとう」

「私は礼を言われるよう事は何もしてないです。私も楽しかったんです、毎日毎日」

「あぁ……そうか」


 橋の中間に差し掛かって俺たちは二人で絶景を楽しむ。


「たまには旅の土産話を持って、ムークリ王国の家に帰らないと行けませんね」

「そうだな。羨ましくさせてやろう」

「はい」


 橋からの絶景。大きな海と大きな空、そして崖に突撃する津波。


 絶景を見ていた。ずっと、ずっと。


 ノエルは動き出すまではずっと。



 夢が終わり、これからの俺たち三人の旅は一生続いていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る