第16話 花火の前に
転生者の世界の自由な恋愛は、そう思う奴が沢山いたからこその、自由な恋愛だ。最初から自由な恋愛がその世界では良いとなってたか、はたまた自由な恋愛を勝ち取るために戦ったのか。
でだ、自由な恋愛が禁止。道具が道具として生きてきたのに、自由な恋愛に憧れたからと逃げて匿われましたとか、笑えてくる。
たまに転生者が奴隷商から奴隷を勝手に逃がしたり、弱っている奴隷を買って、すぐに死なせたりするが、何がしたいのか分からない。
それぐらいこの世界と転生者の世界は違う。
レスフェニアはまず、道具としてじゃない自分の価値を提示しなければならない。
ショウとレスフェニアが想いあってるなら答えは簡単で、マロに道具の代金を払えばいい。
マロの名を冠した娘だ。相当に搾り取られて、この城すらも残らないかも知れない。そして第一子はマロに取られるだろうが、致し方ないと思う。
ショウがマロから魔王として言われているんだ。お花畑の二人はとっくにマロの琴戦に触れている。
交換しませんか? とノエルが言って、あぐらを組み替えるほどの時間が経った。ノエルはシャンとして何時までも美しい、足が痺れてないかが心配だ。
「……わかった。交換だ」
ショウが承諾してからは早かった。レスフェニアはマロのところへと帰り、一件落着となった。
この街の奴らは人に迷惑しか掛けていない。
ノエルの交換は、家に帰りませんか? という意味だ。
ノエルがショウという奴の物になるなんて冗談じゃない。ノエルはお兄ちゃんの物だと言っている、俺もノエルの物だ。
宿に帰り、さっさとこの街を出ようと言うと、まだ花火を見ていないと拒否された。
今日の夜に花火が上がるらしい。写真で見たが、綺麗だった。パンフレットには夜の空に大輪の花が咲き乱れるという話だ。
さぞや綺麗なんだろう。
少し休憩と宿に帰ったが、夕暮れから宿の外に出る。
狭い道に屋台が所狭しと並んでいる。これで夜の花火まで、時間を潰せよということなんだろうか。
小指くらいの魚を紙ですくう屋台や、風船を針ですくう屋台、射的に、当たりそうもないクジ。
横を見てみるとノエルは右手に綿菓子と、左手にりんご飴を持って、ニコニコしていた。その笑顔だけで、バタバタと人垣の中から意識を失う奴も出るぐらいだ。
ノエルの容姿は綺麗すぎて、人垣が割れる。そんなだから立ち寄った店の主人からはタダで物を貰っている。美人に男は優しくなるもんだ。
そして次から次に、派生して頼んでもいないのに、お土産が増えていく。さっきの店からは貰って、俺の店では貰わねぇって言うのか! と、意味分からないクレームを言われてからは貰うだけ貰おうということになった。
屋台から逃げるように道から逸れる。もうここに来るまでには相当な量のお土産を貰った。
ベンチに座って、ベンチにノエルの戦利品を置くと、焼きそば三個、お好み焼き二個、イカ焼き四本、たこ焼き二個、焼き鳥五個、焼きとうもろこし三本。
ノエルが持っているのが、合体している綿菓子三本と、りんご飴。
これで海まで三分の一と行ったところか。
海で花火を上げるらしいと聞いて、屋台をひやかしながら海に行こうと思って計画していた。それはノエルが美人すぎることを考慮していなかった。
「お兄様、飲み物いりませんか?」
「そうか」
っと、立ち上がり、俺が飲み物を買ってくるとしようか。
「いえいえ、すぐそこに飲み物の屋台がありましたので、お兄様は座っていてください」
ノエルに押されてベンチに座り直して、太ももの上に焼きそばを置かれる。
「ノエル一人じゃ危ないだろ」
「む、子供じゃありませんし、飲み物の屋台はここから見えませんが、すぐそこです。方向音痴でもないですし、すぐに戻ってきます」
「……じゃあ、頼むな」
「はい!」
俺に頼むと言われたことが嬉しいのか、ノエルはニコニコしながら飲み物を買いに行った。
でと、すぐそこじゃなかったのか?
お好み焼きと焼きそばを二個ずつ食べても、帰ってこない。
もうそろそろ探しに行くかと思っていた時に、ノエルが帰ってきた。
「お待たせしました」
「どこ行ってたんだ?」
「すぐそこの飲み物の屋台ですが」
ノエルは可愛らしく小首を傾げて、ハテナマークを浮かべている。言ったよねと言わんばかりに。
「どうしてこうも時間が掛かったんだ?」
最初からこう言えばよかったのか?
「あぁ、勇者さんとソフィアさんに会いまして、挨拶をしていました」
勇者はラクセルの街の街に来ていたのか。
「勇者はどうだった?」
「お兄様が勇者をやっていた時よりも、ヤル気に満ちておりました」
勇者にはソフィアが着いてんのか、不思議な組み合わせだ。
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