第607話 伝家の宝刀

 斗馬はキスによってウットリとした表情の妹を見ながら覚悟を決める。


 こうなったらアレしかない。

 日本人がよく使っていたアレを!

 斗馬は伝家の宝刀を抜く。


 妹を押し返せないので腕を動かし、手を無理やりキスに割り込ませる。


 突然キスを中断されて、驚く妹。


 さぁ、あのセリフを言うのだ!


「こ、この続きは夜にね。」


 キョどりながらも何とか口にする。


 そう、伝家の宝刀とは先延ばしである。


「この続き???」


 先延ばしにされた妹は俺の言葉を聞いて考え込むと、少しだけ顔を紅くする。


「わかった。

 夜にだね?

 だったら、今すぐ夜に‥」


 何か不穏なことを口にしそうになるので、それを全力で阻止する。


「ちょっと待って!!

 ほら、今から夜の事を考えると嬉しくならない?

 そのフワフワした感じが楽しいじゃないか。」


 かなり無理があると思えるが、声を大きくし勢いで誤魔化す。


 さぁ、妹はどんな反応を見せるのか。


「‥‥‥うん、わかった。」


 照れた表情の妹を見て、とりあえず安堵するのであった。


 ・

 ・

 ・


「逃げたつもりでしょうが、それは悪手です。

 あれは相当期待してますよ。」


 安堵する斗馬を見ながら、多分何も考えていないのだろうと心配するサブ最高神であった。

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