第566話 結界消失

「結界消失!」「結界消失!」「結界消失!」


 異常事態を知らせるアラートが止まらない。

 車内は赤いライトが点滅する。


「どうしよう‥」


 常に冷静沈着だった葵さんが困惑を口にする。


ドンドンドン!


 突然、バスのドアを叩く音が響き渡る。


 葵さんの心拍数が跳ね上がる。


ドンドンドン!


 さらにドアを叩く音がする。


 どうすればいいの‥


 葵さんが悩んでいると外から声が聞こえてくる。


「おーい!開けてくれ!」


 女性の声だったが、どこか間の抜けた声に聞こえた。


 葵さんは覚悟を決める。


「どなたでしょうか?」


 バスの強固な結界を壊す相手だ。

 そんな相手と会話が成立するのか不安だったが、それでも自分の勘を信じて話しかける。


「あ〜俺か?

 俺は鍛治神だ。

 ほら、名乗ったのだから扉を開けろよ。」


 自らを鍛治神と名乗る者は待ちきれないのか、バスを揺らす。


「鍛治神様!?

 何故地上に?」


 神が地上に降りることは、ほぼあり得ない。(女神様は例外中の例外だ)

 鍛治神様は神の中でもその姿を見る事がない引きこもり型の神だ。

 その神が地上に降りてきているのが、葵さんには信じられないでいた。


「とりあえず、開けてくれ。」


 鍛治神様がまたバスを揺らせる。


 このままではバスを壊してしまいそうだ。


「わかりました。

 ドアを開けますので、少しお下がりください。」


 葵さんは覚悟を決めると、ドアを開けるボタンを押すのであった。

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