第564話 ノコ

<ノコside>


「何で?

 何で失敗したの?

 もう少しで帝国を滅ぼせたのに‥

 クソッ!」


 ノコは壁を殴って怒りをあらわにする。


「こうなったら‥」


 ノコの手には念の為用意していた小型の爆弾が握られていた。


 ノコは最終手段として自爆するつもりだ。


『おいおいおい、それはないよ。』


 突然背後から声が聞こえてくる。


 ノコが振り向くと男が立っていた。


「誰?」


 ノコは隠し持っていた小刀を構える。


『誰でもいいしょ?

 それより自爆とか止めてくれない。

 ボクの美学に反するよ。』


 男はケラケラ笑うが目は笑っていなかった。


「だったらどうすれば‥」


 ノコが悔しさを滲ませる。


『ボクが力を貸してあげるよ。

 そうだなぁ‥

 2割程度なら‥

 いや、2割だと負ける可能性が‥

 よし!4割にしよう!』


 男は独り言を呟きだす。


「それで勝てるの?

 帝国を滅ぼせる?」


 ノコが男に詰め寄る。


『うん、大丈夫!

 ほら、こっちにおいで。』


 男がノコを手招きする。


 ノコは本能的にヤバい相手だとわかっていたが、恨みのある帝国を滅ぼす為に我慢する。


 ノコがゆっくりと男に近づく。


『そんなに警戒されると傷つくなぁ。

 まぁ、いいけど‥

 じぁ、ボクの力を渡すね。』


 男はそう言うと、いきなりノコの胸に手をぶち込む。


 手はひと突きでノコの胸を破り、心臓を鷲掴みにする。


「ウグッ」


 ノコが痛みから奇声をあげる。


『あっ、ごめん!痛かった?

 でも大丈夫!

 力は渡せたから。

 ほら、どう?

 力が湧いてきただろ?』


 男は真顔になるとノコに尋ねる。


「力?

 ‥‥‥」


 ノコは喋れなくなっていた。


『あちゃー、力に耐えられなかったかぁ。

 まぁ、しょうがない』


 男はさっきまでノコだった者を回収する。


『さぁ、手駒は揃ったよ。』


 男は天を見上げて笑うのであった。

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