第522話 女神の怒り5

 またもや飛び込んできた近衛騎士に全員が注目する。

 今回は前と違って会議を邪魔した事に文句を言うものはいない。


 急に静かになる王たちに飛び込んできた近衛騎士は動揺を隠せない。


「はよう、話せ。」


 困惑して固まる近衛騎士に王自らはっぱをかける。


 近衛騎士は突然王に声をかけられてさらに恐縮してしまうが、何とか声を絞りだす。


「ほ、報告します。

 国境にあった壁が全て砂になりました。」


 ‥‥‥‥


 有り得なさ過ぎて言葉にならない。


 あまりの反応のなさに報告した近衛騎士が誤解して、もう一度口にする。


「国境の壁が砂になりました。」


「「「「聞こえてるわ!」」」」


 全員が近衛騎士に突っ込みを入れる。


「有り得ない!

 有り得るわけながない!!」


 重鎮の1人が騒ぎ出す。


「壁が砂だと!?

 それが本当だとしたら大変な事だぞ!!

 おい、まさか全ての壁ではないよな?」


 重鎮が近衛騎士に詰め寄る。


プイッ


 近衛騎士が顔を背ける。


「おい、どうなのだ?

 早く答えろ!!」


 感の鈍い重鎮がさらに詰め寄る。


「全て確認出来ていませんが、見える範囲は全て砂になったと聞いています。」


 数名の重鎮はゾッとする。

 その報告がどれほど深刻な問題なのか理解しているからだ。


「まぁ、所詮は壁だろ?

 また作ればよい。」


 やはり理解していない者が現れる。


 その発言を聞いて王が自ら動く。


「所詮は壁だと?

 お主らはあの壁を造るのに、どれ程の時間を費やしたと思うのだ?

 全てが完成するのに数百年かかったのだぞ!!

 何がまた造るだ!!

 出来ぬ事を簡単に口にするな!!」


 王の怒号が部屋に響き渡るのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る