ヒナとヨーコ

百合ヘン隊 くろ

第1話 はじめてのキス

「ふぁ」とあくびをしながらお風呂上がりの濡れた髪をドライヤーで乾かしているのは私のルームメイトの夏川陽奈なつかわひな


「ヨーコも早くお風呂入ってきなよー」


 ヨーコとは私の名前でフルネームは吾妻陽子あづまようこ。ヒナと同じくらいの長さの髪を一つにまとめている。きつい印象を与えてしまいがちの目はヒナが好きって言ってくれるから私も好きになった。


 そんな私は今、ヒナに恋をしている。


 ヒナは小さくて可愛い、仕草とかも女の子女の子していて可愛い、ドライヤーで髪を乾かしているヒナが小さくて可愛い、小さくあくびをしているヒナが可愛い。


 私とは正反対。


 最近どんどんヒナの事が好きになっていっている。


 ジーッとヒナを見つめているとクリクリとした目が私とあった。


「もお、ヨーコ早くお風呂入って寝ようよー」


「ごめんごめん、ヒナが可愛くて見惚れちゃった」


「なにそれー」と笑うヒナ。


 はあ、好き。


 早くお風呂に入ってしまおう。


 入浴を済ませて部屋に戻ると二人分の布団が敷かれていた。


 ヒナが用意してくれたんだ、優しい。


 大体の学生寮といったら二段ベットとかを想像すると思うけど、私のところは部屋の左右にお互いの勉強机があって真ん中にもう一つ小さな机、寝るときは机を立てて壁に寄せてそこに布団を敷くって感じ。クローゼットも二人分あって少し大きめの部屋になっていて結構過ごしやすい。


「お風呂上がったよ」


 ヒナはドライヤーを持ちながら「ほら、こっちおいで」と言って敷いてくれた布団をポンポンと叩く。


「うん」


 何事もないようにクールな感じで返事をしたけど、内心ではやったー嬉しいって感情が爆発しそうになっている。


 好きな人に髪を触られるのも嬉しいし、乾かしてもらえるのも特別な感じがして嬉しい。


 とにかく嬉しい。


 心を落ち着かせて座っているヒナの前に座る。


 ヒナはお風呂上がりでタオルでは乾ききっていないしっとりとした私の髪を優しく撫でるように触ってからドライヤーのスイッチを入れた。


 ブォーと勢いよくあったかい風が私の髪を揺らして髪の水分を奪っていく。


「できたよー」


「ありがとう、ヒナ」


 部屋の電気を消して自分の布団に横になる。


 布団に入った後も少しお話しをしてだんだんとヒナの目が閉じていく。


「おやすみ、ヒナ」


「ん、おやすみ」


 私はいつもヒナが寝てからすぐには寝ない。


 毎日この時間が私にとって大事な時間で、好きな人を誰にも邪魔をされずに見つめていられる時間。


 すぅ、すぅ、とヒナが寝息をたてている。


 ああ、可愛い。


 仰向けで寝ているヒナの横顔はとても気持ちよさそうでこっちまで何だか幸せな気分になってくる。


 すぐ横に寝ているヒナの頭に手を伸ばして髪を撫でる。


 サラサラで触っていてとても気持ちのいい手触りだ。


 ヒナ、好き。


 とても、とても好き。


 口には出せないがヒナを見つめながら心の中で気持ちを伝える。


「んぅ...ヨーコ...」


「っ!?」


 ドキッとしてヒナの頭を撫でていた手を引っ込める。


 寝言...か。ヒナの夢の中に私が出てきてるのかな?そうだと嬉しいな。


 ヒナはいつも私を可愛いって言ってくれる、目が好きって言ってくれる。


 私だって...ヒナが好き。


 そんな事を考えていると自然と体が動いてヒナにキスをしていた。


 柔らかくぷるぷるとした感触が唇に伝わってくる。


 とても幸せな気持ち。


 いつもは頭を撫でるだけで我慢してるのに。


 ヒナが寝言で私の名前を呼ぶから。


 いつも好きって言ってくるから。


 我慢出来なくなった。


 この日初めて私はヒナにキスをした。

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