8話 石化状態
「ガムラン、ワドル、モンド、貴様らあぁ……おはようだっ!」
「おう、おはよう」
「おはようございます」
「おはよう」
こうして、俺と【深紅の絆】パーティーは、軽く朝食を取ってからウォルテム山の中腹へ向けて歩き始めた。
眠るのは交代制で、たまに発生するモンスターと交戦してたからあまり眠れなかったが、これは仕方ないことだ。
前のパーティーだと、こういう野宿をする際はみんなが熟睡する中で決まって俺だけ見張り役を命じられてたから、それに比べたら天国とさえ感じた。
徐々に周囲が明るくなってきた頃、視界も大分開けてきて中腹へ近くなったと感じるとともに、冒険者らしき者たちがいるのに気付いて俺たちは立ち止まる。
「うぬ……先客がいるとは」
「あーあ、先を越されちまったか……?」
「残念ですが、そうみたいですねえ」
「いや、待ってくれ、何か様子がおかしい」
「「「え……?」」」
「あいつらをよく見てくれ。まったく動いてない」
「「「あ……!」」」
グロリアたちも俺の言葉を理解したらしい。彼らは一向に動く気配がないし、それが意味するのは麻痺か石化で、
「――少々お待ちを……」
白魔導士のワドルが、石になった冒険者たちの状態を確認している。石化といっても石像になるわけではなく、見た感じは普通なので遠くからだと止まってるだけに見えるんだ。
「石化してからそう時間は経ってないようです……」
「「「……」」」
ワドルの発言によって緊張感が一気に高まっていく。どうやら、コカトリスはここからそう遠くない場所にいるようだ。
そんなに時間は経ってないってことで、彼が石化した者たちにリカバリーをかけてみたら、次々と息を吹き返した。もうちょっと遅かったら息絶えてもおかしくなかったらしい。
それでもかなり弱っていたが、ワドルがバフもかけておたのでそこら辺のモンスターから身を守りつつ帰還することは可能だろう。
「「「「「おかげで助かりましたっ!」」」」」
彼らから大いに感謝されつつ、俺たちは慎重に進んでいくことに。ここまで来たらいつ現れてもおかしくない状況だから。
「――来る」
「「「え……!?」」」
早速来た。みんなが驚くのも当然で、敵の姿も見えなければ気配だって感じないからだが、俺の戦闘勘が敵の襲来を知らせている。
「グロリア、ガムラン、ワドル、今すぐ臨戦態勢を!」
「よ、よし、わかった!」
「任せろ!」
「了解です!」
グロリア、ガムランがそれぞれ剣と弓を構え、ワドルが杖を掲げて全体に補助魔法をかけたときだった。
『ピギャアアアアァァァッ!』
けたたましい咆哮とともに、異様な風貌をした怪鳥が姿を現わす。あの巨大な鶏のような見た目はコカトリスで間違いない。
やつはリーダーのグロリア目がけて急降下していく。こっちまで風が吹くほど物凄いスピードだ。
「はあああぁぁっ!」
『ピギイイイィィィッ!』
グロリアが一歩も引かずに剣を振り下ろし、コカトリスの片翼が根本から断ち切られていく。とんでもない勇気と威力だが、翼はすぐに再生するとともに上空へ舞い上がっていった。
さすがコカトリスだ。C級モンスターの中でもトップの強さを誇ると言われるだけある。しかもやつは固い上に魔法耐性もそこそこあるんだ。
「き、効かねえだと!?」
ガムランが弓矢を次々と命中させるが、いずれも怪鳥が旋回中に浅く刺さった状態で、まもなく体内から押し出される格好で弾かれてしまった。
コカトリスの体で唯一再生しない場所、それは固い鱗と筋肉と骨に守られた心臓であり、そこを狙って攻撃するには尋常じゃない正確さに加えてパワーが要求される。
このパーティーではまだ荷が重いかもしれないし、俺がやるか。
「来い、鳥頭。お前の相手はこっちだ!」
『ギッ? ピッ……ピギイイイィィッ!』
俺は掌状に生み出した氷の破片をコカトリスの眼球に命中させ、誘導する。その思惑通り、やつは甲高い叫び声を発しながら猛然と急降下してきた。
わかる、わかるぞ、次にやつが取る行動は――
『――コオオォォォッ……』
やはり、そうだ。空中で停止した怪鳥は、俺に向かってくちばしを大きく開け放った。ペトロブレスだ。
『ガッ……?』
不気味な灰色の息を吐き出してからまもなく、コカトリスは地面に横たわり、そのまま動かなくなった。
「な、何が起こったのだ!?」
「ま、マジかよ! なんだ今の!?」
「い、一体、何がどうなったんですか……?」
グロリアたちが、いずれも驚愕した様子で俺の元へ駆け寄ってきた。
「ああ、自爆したんだ」
「「「自爆……?」」」
「そうだ。光魔法によって生み出した光線をコカトリスの心臓に命中させてやったんだが、俺の魔力は低いからそれだけじゃ倒せない。でもやつは光線を石化させたから物理でも心臓にダメージを受けて致命傷になった」
魔法によって発生した光は普通の光とは違うため、石化が適用される。なのでコカトリスは自分で自分の首を絞める格好になったわけだ。
「「「……」」」
みんな唖然とした顔で、まるで石化したかのように微動だにしなくなったが、こういうことは普段からよくやっていたことだ。前のパーティーじゃ当たり前すぎたのか、空気のように扱われてたが……。
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