第14話 驚異の数値
「ささささささ、さあああああっ!?」
「さ、さんびゃっくぅ!?」
「ちょ、こ、こわれてんじゃねーのか、コレ!?」
「三百とか、は、初めて見たぞ……」
「やば、ヤバいヤバいヤバいッ!?」
顎が外れたかのように大きな口を開けて驚く冒険者たち。
その中には、チューニも居た。
だが、マシンは冷静に……
「ふむ。上限があるのか……ならば、あまり参考にならないようだな」
と、特に驚いた様子も無く、それはジオ達も同じだった。
「確かにな。つか、テメエ、スピードに特化しすぎだろうが。それに、体が機械だからか? 魔力も0。潜在能力も0。だが、機械ゆえにテンションに左右されずに安定してるとも言えるが……」
そう言って、ジオが前へ出る。マシンも頷いて場所を開け、次はジオが魔鏡の前に立つ。
すると……
暴威の破壊神・ジオ
・腕力:200
・スピード:200
・魔力:500
・潜在能力:999(最上限)
・レベル475
「……まっ、こんなもんか」
「お前は……潜在能力が高いのだな」
「みてーだな。確かに、昔からキレて大暴れすると、いつも以上の力がよく出たもんだがな。とはいえ、上限があると参考になんねーな」
「……だろうな」
「平均レベルじゃお前に勝ってても、互いの上限が本当はどこまであんのか分かんねーから、本当に勝ってるか分からねーな。まっ、戦えば俺が勝つだろうがな」
「……別に、そこを張り合おうとは思わないが」
「張り合えよ! つまんねーヤローだな!」
最新鋭の測定アイテムが何の参考にもならないと話し合う、ジオとマシン。
しかしこのとき、既にギルドに居た者たちは皆、絶句して何も反応できなかった。
さらに……
「ぐわはははははは! では、次はワシじゃ♪ ど~れ……」
闘神・ガイゼン
・腕力:999(最上限)
・スピード:800
・魔力:3
・潜在能力:500
・レベル:575
「ぐわははは、ワシは魔力が無くて、腕っ節自慢だからのう。潜在能力も、まぁ、今さら上積みはあまりないということか」
「いや……今の時点で更に500も増えたら、そりゃヤバいだろ。この化け物ジジイ……」
「参考にならない数字でもやはり、怪物だな」
ガイゼンの数値にはマシンもジオも唖然とする。とはいえ、上限ありの数値化ならば、こんなものだろうと三人とも納得したような様子だ。
もっとも、この場に居るそれ以外の者たちは、シルバーシルバーも含めてガクガクブルブル震えている。
そして、ガイゼンは豪快に笑いながら、皆と同じように腰を抜かしているチューニを抱え上げる。
「ほれ、チューニ。ウヌもせんか」
「えっ!? いや、無理無理無理無理!? 一緒にしないでください! いや、ほんとマジで、僕はあんたたちなんかと関われるような奴じゃないんで!」
「試すぐらいよいじゃろう」
「無理ですって! 去年やったら、あまりにもレベルが低すぎて数値化できなかったぐらいなんで!」
ジオ達のような規格外の数値の後にやりたくない。というよりも、同じ一味だとすらも思われたくないと、必死に抵抗するチューニ。
そもそも、チューニはそのレベルが低かったからこそ魔法学校を中退したのである。
だから、今さらやる意味などない。そう叫ぶ。
だが、ガイゼンはニタリと笑って……
「いやいやいやいや、案外そうでもないかもしれんぞ?」
「はいいっ!?」
「ワシは魔力はからきしだが、その分、鼻が誰よりも利く。ウヌも数値化できなかったのは、案外レベルが低すぎたのではなくむしろ……」
「ちょ、むしろなんですか?! いや、ほんと止めて欲しいんで!?」
「まっ、とにかく最新というこの測定アイテムで試せばよかろう♪ 要するにワシは、面白くなさそうな奴まで仲間にしようとするほど、誰でもいいというわけではない」
そう思わせぶりなことを口にして、ガイゼンガチューニを鏡の前に放った。
すると……
落ちこぼれ魔導士見習い・チューニ
・腕力:???
・スピード:???
・魔力:???
・潜在能力:???
・レベル:???
魔鏡は無反応で、何の数値も出なかったのである。
「うわ~……無反応。本当だったのか」
「言葉も無いな……」
流石にこれはジオもマシンも哀れに感じて、かける言葉も見つからなかった。
「ほらーーーっ、だから嫌だったんで! いや、ほんとこれトラウマなんで! というわけで、さようなら!」
案の定、数値化できないほど低いゆえに魔鏡が反応しなかったのだろうと、チューニは怒り気味でそのまま別れを告げてギルドから出ていこうとする。
「まあ、待つのじゃ」
「うげ!?」
だが、その首根っこをガイゼンが捕まえた。
「ちょ、なんなんすか!? あの、いや、もう無理でしょ? というか、レベル何百もある人たちとか無理ですから! つか、もう僕に関わらないで欲しいんで!」
逃げようとジタバタするチューニだが、ガイゼンはニタニタ笑みを浮かべながら、チューニを離さない。
そして、ガイゼンはジオとマシンに顔を向ける。
「のう、ジオ……マシンよ。おかしいと思わぬか?」
「はっ?」
「数値化できないぐらい低いから、魔鏡が無反応ということがじゃ」
「……?」
何がおかしいのかとジオたちも分からなかった。だが……
「だって、ワシの魔力を3とちゃんと数値化しておるし……何よりも、マシンの魔力も潜在能力も『0』なのに、ちゃんと『0』と数値化しているではないか」
「……あっ……」
「つまりじゃ。低すぎて数値化できないというのは、おかしいことではないか」
ガイゼンの言葉に、ジオもマシンも、そしてチューニもハッとなった。
そう、『数値化できないほど低いから魔鏡が無反応』というのはおかしい。
仮に、『0』だったとしても、そのときは魔鏡に『0』と映し出されるはずなのである。
つまり、魔鏡が『無反応』ということ事態が本来はありえないのである。
「確かにそうだな。じゃあ……どうして、チューニに魔鏡が反応しないんだ? ひょっとして魔鏡が壊れてんのか?」
では、理由は何故か?
「ふむ、チューニよ。ウヌは、魔法をいくつぐらい使える?」
「えっ? いや……一つも……魔法学校では座学をやって、魔法の実技は進級後の予定で……それに僕は平民だったから貴族の奴らと違って、個人的に魔法を覚えられる環境にもなくて……」
「つまりこれまで魔法を使ったことはない。そして……魔法と戦った経験……魔法をくらった経験はあるか?」
「いや、あるわけないんで……」
「そうか……なるほどのう。じゃから……気付かぬわけか……」
ガイゼンのチューニに対する質問に何の意味があるのか、ジオたちには分からなかったが、今のやり取りでガイゼンは何か分かったようだ。
それどころか、むしろ楽しそうに余計にニヤニヤしている。
「ワシの時代にこういう魔鏡はなかったから、こいつについてそこまで知らぬが、それでもこいつが『マジックアイテム』ということは分かる」
マジックアイテム。魔力が動力となる道具のことである。
「そして、これが壊れていないのなら……なぜ、チューニには無反応なのか。その理由は一つ。『無反応』なのではない。『無効化』されて、本来出るべき数値が出なかったということじゃ」
ガイゼンの辿り着いた答え。それは『無反応』ではなく『無効化』という結論。
それがどれほど重大な事実なのか、この場に居た者たちにはまだピンと来ていないため、誰もがポカンとしていた。
そして、そんな皆の前で、チューニ自身も知らなかった、チューニの能力の内の「一つ」が明るみになる。
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