第3話 心霊写真

「ねえ、どうしよう。ヤバいものが写った〜」


 そう私に話しかけてきた友人が、スマホを片手に落ち込んだ様子を見せる。


「ヤバいものって何?」

「昨日、アンタの写真を撮ったの覚えている?」

「ああ。私が着ていた物と同じ物を買いたいから、写真撮らせてって言ったやつのこと?」

「そうそう! アンタの全身が映るように撮ったんだけど、その手前にぼやけたオレンジ色の何かが写っているの」


「え、それって心霊写真?」


 友人の言葉に私はゴクリと唾を飲み込んだ。


「やっぱり、そうだよね? アンタの足を隠すようにソレがあるから気味が悪くて……」

「ね、ねぇ。その写真見せてよ! 何が写ったのか確かめたいし」

「で、でも、いいの?」


 友人は私に写真を見せるのを躊躇い、両手でスマホを握った。


「いいよ、全然! むしろ、このままでいる方が嫌だし」

「分かった。じゃあ、見せるね」


 友人はスマホを操作すると、ゆっくりと画面を私の方へ向けた。

 はっきりと画面を見た私は目を見開き、友人に問い掛ける。


「ね、ねぇ、これって……」

「ヤバいのが写っているでしょう? ……私の指が」


 そう、私が写っている写真の端に友人の指が写っていた。レンズに当たった指がピンボケして私の足を隠すようにあったのだ。


「もう、変な風に言わないでよ!」


 私は思わず友人の腕を叩いた。


「痛っ、ごめんごめん」

「もー、ビックリしたじゃん‼︎ あんたの指で良かったよ

うー、靴も込みでコーデが良かったから写真を撮ったのに、これじゃあ見えないよ」

「後でLINEに靴の画像を送るから、落ち込まないの」

「わーい! ありがとう」


 現金な奴だな、と私は心の中で溜め息をつき、画像に視線を移した。


「ん? あれ?」

「え、どうしたの?」

「この写真、何かおかしくない?」

「おかしいって、何?」

「ほら、私の後ろの建物がガラスで出来ているから反射であんたが写っているでしょう?」

「あ、本当だ。気づかなかった」


 私がスマホを拡大して指差すと、画像の私の後ろにあるガラスに友人が写っていた。


「で、ここからなんだけど、あんたはスマホを両手で下を包むように持っているでしょう? ……指がレンズに当たってないんだよ」

「え?……あっ‼︎」


 友人も分かったらしく、みるみるうちに顔を青ざめていく。


「……あのさ、この指って誰のなの?」


 答えなんて分かっているのに、友人に問い掛ける。

 私の予想通り、友人は更に顔を青くさせて首を横に振るだけだった。


終わり

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