第一章 万物の空

ある時、一部の宇宙で物質がかたよって集まってしまった。

それがブラックホールになったのだ。


まず、一つの宇宙が苦しみ始めた。

「苦しい、苦しい、誰か助けて」

でも、誰も助けることが出来ない。

助ける方法を知らないのだ。


医者も、病院もない。

彼らは何が起こっているのか分からなかった。

「苦しいよー 苦しいよー」

宇宙たちは怯えた。

ブラックホールが宇宙を飲み込んでしまう。

ひとつの宇宙が消えた。

死んでしまったのだ。


そしていくつかの宇宙もブラックホールが発生しだした。

「苦しい、助けて」

「苦しい、苦しい」


「神様」


宇宙たちは驚いた。

神様? 神様ってなんだ……


「神様、助けて」


神様ってどういうことだ?

世界で初めて神という言葉が生まれたのだ。


世界は震えた。

神という言葉に怯えた。


僕たちの上に誰かいるのか?

誰が僕たちを造ったんだ。

何故、僕たちは存在するんだ?

僕たちに意味があるのか。

生きる価値とは?

ここにいる理由とは?

わからない、わからない。


彼らは悩んだ、

答えを求めた。

そうなんだ、そうなんだ、

神はいないんだよ、神はいないんだ、現時点で。

君たちが全世界、全宇宙最初の意識なんだ。

君たちはただ、偶然が重なって生まれたにすぎないんだ。


神はいない、

誰も助けてくれない……


いくつかの宇宙がブラックホールによって消滅した。

しかし、ここでブラックホールが発生したにもかかわらず死なない宇宙が現れた。

ブラックホールと共存した宇宙が……

その宇宙のいくつか、暗黒宇宙と名づけよう。

この暗黒宇宙が何かをたくらみ始めていた。


善も悪もないこの世界で。

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