妖精の夏
阿紋
不思議体験
そろそろ秋の風が吹きはじめる頃になっても
僕はあのときの不思議な体験をどうとらえていいものやら
いまだわからずにいる。
車を借りて走らせてみたけれど
あのハンバーガー屋もラブホテルも見つけることができなかった。
あの公園はすかっりきれいになっていて草一つ生えていない。
僕は公園のベンチにすわって
固くなってしまったフランスパンをちぎって口の中に入れ
自販機で買ったジャスミンティでのどの奥に流し込んだ。
少しは涼しくなったとはいえ
スーツを着ているのは暑苦しかった。
クールビズって言葉はいったいどこに行ったんだ。
もともと僕にはそんな言葉なんてなかったんだ。
僕は上着を脱ぎワイシャツ姿になって
カバンから取り出したタオルで汗を拭った。
雲に隠れて日が陰る。僕はホッと一息をついた。
そしてあたりがだんだん暗くなっていく。
どうしたんだ。僕は空を見上げる。
日食なのか。そんなこと誰も言ってなかった。
僕が知らなかっただけなのか。
僕はあわてて公園の外に出た。
「また会いましたね」
背中から声が聞こえた。
僕は振り返る。誰もいないじゃないか。
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