酒悪魔

まじっかぁ

第1話

I氏は酒好きだ。


朝から、晩まで酒を飲んでいる。


彼は、働いてはいない。


生活保護だ。


だから、不満もある。


あー、浴びるほど酒を飲みたい、毎日…。


酒を飲めるなら、何でもする。

悪魔に魂を抜かれてもいい。


あー、酒を飲みたい。


いっそのこと、悪魔でも来てくれないかな?


そんな風に酔いのまどろみの中で、つぶやいていると、

ドアからノックの音がした。


「トントントン」


彼は、ドアを開けた。


そこには、白く輝く美しい女性が立っていた。


「お呼びになりましたでしょうか?」


「へ?」


「いま、悪魔をお呼びになったのでは、ございませんか?」


と、女性は言うと、そーっと家の中に入り、ドアを閉めた。


「私、酒悪魔という悪魔ですの。」


「悪魔?」


「えぇ、願いを3度叶えてあげますわ。」


「そ、そうか…。じゃ、毎日、浴びるほど酒を飲みたい。毎日な。」


「わかりました。では、毎朝枕元にお届けに上がります。今日のところはこれで。」


というと、悪魔は帰っていった。


翌日から、I氏の下には、毎日酒が届くようになった。


それも、彼が酔いつぶれて寝てしまうほど。


こうして、毎日毎日酒漬けになったI氏は、

ついに、倒れてしまう。


あー、誰か、誰か、助けてくれー。


心の中で、そう叫ぶと、先日来た悪魔が現れた。


「あー、これは大変、たすけてあげますわ。」


そういって、忽然と消えると、

I氏の耳元に遠くから聞こえる救急車の音がした。


こ、これで、助かる…。



こうして、彼は、病院で入院し、寛解し、家に戻ってくると、

そこには、あの悪魔がいた。


「お、おまえは…。」


「お待ちしておりました。では、次の願いを…。」


I氏は考えた。


「お、お前の目的はなんだ?」


「私の目的は、あなたを、いや、全世界の人を、酒漬けにして、殺すことよ。その為には手段は選ばないわ。ただ、あまりに性急に殺すのも可愛そうだから、少しずつ少しずつ真綿をゆっくりと閉めるように殺しているだけ。ただ、苦痛は与えないわ。お酒で夢を見せながら、ゆっくりと殺すの。あなたは、特別だから、私が直接来てあげたの。」


I氏は震え上がった。


酒は、酒悪魔の殺人兵器だったのか。


彼の心は、はっきりとここで決まった。


「願いは無い。ここから、立ち去れ!」


その言葉を聞くと、酒悪魔はすんなりとドアから出て行った。



彼女が消えて、ほっとした彼は、心に決めた。


断酒しよう。


そして、酒悪魔を殺す方法を考えよう。




数年後、I氏は、未だ断酒をしながら、酒悪魔を殺す方法を考えているという。

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酒悪魔 まじっかぁ @pervect0731

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