アルファルドの星巡りの旅

如月雪人

旅の始まり

「ここが次の町、か。随分と賑やかだな……」

今までに訪れた町の中で、一番綺麗な町だな、とアルファルドは思う。

家には星などの飾りがつけられており、キラキラと輝いている。


 町をぶらぶらと歩いていると、町民に話しかけられた。

『あんた、ステラを知らないかい?』

「ステラ??知りませんけど……」

その返答を聞いた町民は、残念そうに別の場所へと走って行った。

そもそも旅人が町の人なんてわかるわけないだろう。聞く人を間違えている。


 しばらく町の中を見て回っていると、小さい女の子とぶつかってしまった。

「お前、だいじょ……」

「っ……!」

差し伸べた手を振り払って、女の子は逃げ出した。

何かに怯えたような顔をしながら。

ぽつん、と1人取り残され、そんなに怖い顔をしていただろうか?と考える。

「まぁ、いいか」

女の子に嫌われたところで旅に影響なんてない。

何か美味しいものでも食べに行こう。

広場らしき所に行くと、屋台などがたくさん出ており、

のぼりがそこかしこに設置されていた。

「なるほど。今日は何かの祭りなんだな」

これはラッキーだ、と思いつつ美味しいものを食べまくる。

旅はこれだからやめられない。


「はー、食べた食べた。……ん?」

 何やら広場が騒がしい。

こっそり物陰から覗いてみると、先程会った女の子が大人に囲まれていた。

「いやだ!はなしてよ!」

「どうして逃げるんだ!お前がいないと……」

何やら話しているが、遠くてよく聞き取れない。

誘拐だろうか。だとしたらどうしてあんなに広い場所でやるんだろう。

普通はもっと人気の少ないところでやるべきだろう。


「おい、お前!」

背後から怒鳴り声が聞こえ、びくりとしつつ振り返る。

いつの間にいたのか、男性が2人、アルファルドを睨みつけていた。

「この町の住人か?」

「いや、俺は……」

「こいつを捕らえろ!牢屋に入れておけ!」

反論する余地もなく、アルファルドは男達に無理やりどこかへ連れて行かれてしまった。


 * * *


 男性達に連れていかれた先は、薄暗い牢獄のような場所。

出られないように、と、足を鎖で繋がれてしまった。

「……ったく、どうして俺が捕まらなきゃいけないんだ……」

旅をしていただけなのに、捉えられるような事をした覚えはない。


 しばらく牢屋の風景を眺めていると、後ろから声をかけられた。

「おにーちゃん」

「ん……?あれ、お前」

見ると、怯えて逃げ出した女の子だった。彼女が声をかけてきたらしい。

どうしてこいつも捕まっているのだ。

「おにーちゃん、どうしてつかまってるの?わるいことした?」

「悪いことなんてしてねぇよ。むしろ悪いのは俺を捕まえてここに入れたあいつらだろ」

「……おにーちゃんは、ステラをみても、つかまえようとしないんだね」

「ステラ?ああ、何か言ってたな。知らないけど」


 街の人達は、皆アルファルドに同じ質問をしてきた。

『ステラを見かけなかったか』と。


 ステラはこの女の子の事だったのか、と思う。

しかし、町の人はどうしてこの子にそこまで執着するのだろう。

何か特別なことでもあるのか。

「みんなステラのこと、つかまえようとしてくるから」

「ふーん。人気者じゃないか。よかったな」

「にんきものじゃ、ないもん」

「じゃあ何だ、有名人か?」

「ちがうもん……」


 2人はそれきり話さず、静かな時間だけが過ぎていく。

ふと、ステラが口を開いた。

「おにーちゃん。おにーちゃんは、町の人じゃないの?」

「違うよ。ここには少し滞在してから別の町に行こうかなと思ってた」

「……ステラも、いきたい」

「あ?」

「ステラも、おにーちゃんといっしょにべつのまち、いってみたい!」

「やめとけ。旅は楽しいことばっかりじゃない」

旅は過酷なのだ。食料などがなくなる可能性だってある。

小さな女の子の面倒なんて、見ていられないかもしれない。

「うぅ〜……お願い、お願い……めいわくかけないから、お願い」

「両親とかいるだろ。いいのか?」

「この町にいるのは、もういやなの……」


「お前、友達とかいないのか」

「いない……」

「1人で生きてきたのか?」

「ううん、パパとママがいた」

「いるじゃねぇか」

「でも、2人ともステラのこと大切にしてくれなくなった」

「……そう、か」

「うん……。ステラね、みんなみたいに、外で自由におさんぽしたりしたい。ずっとこの町にいるのはいや!」

何だか、昔の自分を見ているような気持ちになる。

初めてこの町に来た時は綺麗な町だな、と思ったが、今は綺麗などとは言えなかった。


 覚悟を決め、女の子を旅に連れて行く事にした。

しかし、ここは牢獄。中から押したりしてもびくともしない。

出ることは絶望的だ。何かあればいいのだが、今のアルファルドには脱出方法など少しも思いつかない。

「でも、出れねぇぞ。俺が体当たりしてもびくともしねぇ」

「うーん……あ、ステラに任せて!」

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アルファルドの星巡りの旅 如月雪人 @Kisaragiyukito

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