着信アリ
ALT・オイラにソース・Aksya
メリーさん
着信があった。
男は仕事終わりに気持ち良く、居酒屋で同僚と飲んでいた。今の時間に電話をかけてくる人物に心当たりはない。
男は不審に思いながら、トイレに向かい電話に出た。
「私、メリーさん。今あなたの家の近所のコンビニにいるの」
相手はそれだけ言うと、プツリと電話を切ってしまった。
男は憤慨した。イタズラ電話に決まっているからだ。同僚の元に戻ると、誰からの電話か聞かれたので、悪質なイタズラ電話だと言った。
それから30分くらい経った時、またもや着信があった。
トイレに行き電話に出る。
「私、メリーさん。今あなたの家の近所の小学校の近くにいるの」
「誰だ、こんなイタズラをするやつは。私は今、家にはいないのだぞ。怖がらせようとしても無駄だ」
男が言ったときには既に通話は切れていた。男には、なぜ自分の近所に小学校があることを知っているのか、という疑問が浮かんできて背筋が少し寒くなった。
戻ると同僚がまた同じことを聞くので、男はまたイタズラ電話だと説明しなくてはならなくなった。
さらに30分ほどした時、またもや着信があった。
男は、今度は出ないようにしようかと思ったが大切な電話だといけないので仕方なく出ることにした。
「もしもし」
「私、メリーさん。今あなたの家の前にいるの」
「ずいぶん手の込んだイタズラだな。しかし私は家にはいない。よく聞け、これは犯罪だぞ。こう何度もイタズラ電話をされては不愉快だ。次かけてきたら承知しないからな」
男は早口でまくし立て、今度は男の方から電話を切った。
男は少し清々しい気分になった。
そして飲み会は続き、最後に会計を済ませるかというところで、着信があった。
「もしもし。」
「私メリーさん。今あなたの家にいるの」
男は思わず怒鳴ってしまいそうになった。しかし同僚の前なので怒りを抑え込み、そのまま電話は切った。
会計を済ませると、男はタクシーを拾って家まで帰った。家の近くでタクシーを止めさせ料金を払うと、千鳥足で家まで向かう。
すると自分の家の扉が少し開いているように見えた。
男は先ほどのイタズラ電話を思い出した。出る時は必ず扉を閉めたはずだが、開いているように見える。もしかしたら本当に家にメリーさんがいるのかもしれない。
男は恐る恐る扉の取っ手に触れた。金属でできたそれは、異様に冷たい。
男は少し扉を開いてみた。すると家の奥の方に人影のようなものが見えた。自分は1人暮らしのはずだと、男は自分に言い聞かせた。人影のようなものが見えたのは気のせいだと、無理やり納得させてみた。
しかし手足は金縛りにあってしまったかのごとく動かなくなり、それどころか物音まで聞こえたような気がした。
男はあまりの驚きで過呼吸になってしまいそうだった。しかし何とか最後の気力を振り絞り、男は扉を開けた。
「私、メリーさん」
開けた瞬間、暗闇の中からそんな声が聞こえ、叫び声もあげることもできずに、男は泡を吹いて倒れた。
□■□■
あるところに2人の男がいた。
男達は泥棒であった。
「しかしボスと組んでから面白いように仕事が上手くいきますね。家を漁っていて、住人が帰ってきてもボスが何か言うだけで、泡を吹いてぶっ倒れる。だから顔も見られないし、発見も遅くなって、警察にも追われない。ボスは魔法使いか何かなんですか?」
「さぁな。」
ボスと呼ばれた人物は意味ありげに携帯電話を見せて、呟くのだった。
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