第9話「おっぱい平手打ち」
浴びてるシャワー音に悶々としながら待っているとやがて先輩は頭にタオルを被せながらリビングに戻ってきた。
「——覗いてないわよね」
そんな信用も糞もない第一声に戸惑いはしたものの、しっかりとパジャマを着ていた先輩に安どのため息が漏れる。
もちろん、バスタオル一枚でリビングに戻ってくる先輩は想像なんてしてないし、考えてもいないんだけどね? うん。そんな、そこまで変態じゃないし。
「もちろんですよ! なんにもしてないですからっ」
「そ、そう?」
「えぇ、そりゃ先輩が嫌がることはしませんからね。安心してくださいな」
「まぁ、ならいいんだけど」
「はい。というか、そんなことよりも先輩のパジャマ結構可愛いですね。似合ってます」
視線を顔から少し落として胸元へ。
あ、別にあれだよ?
小さい胸を見てるわけじゃないからね、貧乳を見てるとかそう言うわけじゃないからね。
「ねぇ、なんか変なこと考えてない?」
「いやいや、そんなわけっ」
「ま、なら、いいんだけど」
可愛いと言われたことが嬉しいのか頬をほんのり赤っぽくさせて呟いた。
そんな先輩の身を包んでいるのは最近流行りのアニメのパジャマだった。
思えば一か月くらい前にアニメにハマってネットで調べて買ったとか言っていた。
どっちかというと大人が着るような者ではないが、主人公のペットのキャラがいい味を出していて幼さと可愛さを演出していてこれもこれでギャップ萌えを感じられて凄く良い。
この姿を見れない一般生徒の皆には申し訳ないが俺だけのものにしておきたい。
あ、そうだ。それならば。
「先輩、一枚いいですか?」
「え、一枚っ!?」
「はいっ! 可愛いので是非スマホで収めておきたくてっ!」
「ん、ま、まぁ、いいけどさ」
「じゃじゃっ、失礼して」
ささっと肩がくっつきそうな位置まで近づいてツーショットをパシャリ。ぎこちない先輩の笑顔も相まって質屋で売ったら10万円はくだらなそうな一枚になった。
「そ、それで――この後はどうします?」
「この後? それは寝るけど……それともなんかしたい?」
そう問われて俺は先輩の部屋にかかってあった時計に視線を送った。
時刻はもう24時ちょっきり。変わりばんこでお風呂に浸かっていたので仕方ないが予想以上に時間が進んでいたようだ。
まぁ、明日も学校はある。あまり起きていると明日もしっかり起きれる自信もないし、ここは寝ておいた方がいいだろう。
「そうですね。俺も眠いですし、寝ちゃいましょうか」
「うん、それはいいんだけどさ?」
「は、はい?」
「カケルはどこで寝る?」
「あー、そう言えば決めてませんでしたね」
俺はソファーに鎮座しながら、風呂上がりの牛乳をごくごく飲んでいる先輩に視線を送る。
「ん、私?」
「え、いやまぁ、言えに誘ったのは先輩ですし――ほら、なんか勝手な場所に寝たらアレかなと思いまして……俺は玄関でも浴槽でもどこでもいいんですけどね」
「そ、それは駄目よ! さすがに身体に悪いよ、そんなところで寝るのは」
「とは言ってもさすがに同じベッドで寝るのはあれじゃないですか?」
「別に、私は駄目だなんて一言も言ってないけど?」
「……え、はい?」
ボソッと顔を隠しながら先輩が告げる。
「え、いや、さすがに一緒のベッドは駄目ですよ。俺が持ちませんし」
「……変態ね」
「べ、別に——俺は趣味が悪いとかそう言うのは持ち合わせてはいないですけどね? 先輩も腐っても女の子なので興奮はするって言うか、自制が効かなくなっちゃうって言うk」
すると、今度は赤くなった先輩が俺の胸倉を背伸びしながら掴んできた。
凄い形相で睨みつけて、ギギギと歯ぎしりが聞こえてくる。
「な、なんで、しょうか?」
「今なんて言った!!」
「え、いや何もっ」
「言ったでしょ! なんか、私のこと見て趣味が悪いとか何とかいってなかった⁉」
「ま、まぁ……先輩の胸は小さいというかなんというか、見ていてかわいいというかですね」
「さっきと言ってることが違うんですけどぉ!? ていうか、やっぱりカケルもそういう……うぅ」
「……あ、あぁっと悪気はなくて」
「カケル!」
「は、はい!!」
「目を瞑りなさい?」
「え、なんで」
「いいから!!」
怒号と共に繰り出される先輩、いや生徒会長としての部下への命令。
目を瞑るといったら、それはもうキスの時か歯を食いしばってビンタされるかの二択しかない。
前者か後者か。
それはもう、次の瞬間にはさく裂した。
「んんんん!!!!!」
「——っふげふぁ!?」
気合の籠った平手打ち。
この日、俺は先輩のコンプレックスについていじめるのはやめにしようと誓ったのだった。
次回、「私ってかわいいのかな?」
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