第5話 お猫様、ムギ

紬に言われた通りに、ログインする前にこれからオズワールドファンタジーを始めることをメッセージで送りました。

返事は待たなくても良いそうなので、私はそのままオズワールドファンタジーの世界に没入します。


そして紬に教わった通りに〖システム〗を開いて……………次は――――えぇっと?


……………………………………………………ふぅ。


なんとかIDなるものを探し出し、一旦ゲームを止めて紬にIDを送ってから再度ゲームを始めます。


降り立ったのは昨日と同じ森の中、すぐさま私はマップを開いて町の位置を確認…………………出来ました!

紬が迎えに来てくれるらしいですけど、目的地は町ですからそちらに歩いて行けばきっと早く合流出来ますよね。

それにオリンは敵と遭えばまず逃げることは不可能ですから、待っているだけだと余計に合流に時間がかかってしまうかもしれません。

戦っていればレベルアップもするかも?という思惑もチラッとあったりしますけど、今は何より合流が最優先です。

そんな風に考えて、オリンはイモイモと軽快に歩き出す。



オリンの低い視点はなかなかに新鮮で楽しいですけれど、果たしてこの芋虫ボディに慣れる日が来るのでしょうか?

目的地を目指してイモイモ歩きながらそんな事を考えてみたりします。

出来るだけ敵を避けて移動しないといけないんですけど、オリンの短い足じゃ目的地に近付かないのでついつい最短ルートを通りたくなってしまいます。


…………私って自分が思うよりせっかちだったんだ。


オリンになったことで得た私への『気づき』に内心笑ってしまいます。

嗚呼、平和ですねぇ………願わくばこのまま紬と合流―――――。


「ヒュールルルルル」


――――ですよねー。

だけども今日の私は昨日の私よりも成長している…………はず!!


スキル〖拘束攻撃〗発動!!


か~ら~の~。


〖逃げる!!!〗


オリンは逃げ出した………………………。



しかし回り込まれてしまった!!



何 故 !!?


拘束攻撃はバッチリ当たって微精霊さんは身動きできない状態だっていうのに、どうやって回り込んだんですか!?

まるで何かに運ばれたかのようにスムーズに私の前まで移動して来たんですけれど!?

逃げられない現実だけが私の前に残されて不満しかありません。

しかも時間経過で拘束攻撃の効果が徐々に解けかかっているみたいです、段々微精霊動きが激しくなってきました。

糸が千切られるのは時間の問題でしょう。

それならばもう仕方ありません。

もぞもぞと動く微精霊を抱える様に持ち上げ、その辺にあった石目掛けて――――。


全力で振り下ろします!!


芋虫オリンは移動こそ苦手ですが、微精霊を持ち上げるそのしなやかな動きは振り子の様です。

やってることは凄く物騒なのですが、メトロノームのように一定間隔で微精霊を無心で石に叩きつけていると経験値を獲得したので戦闘は終了しました。


もしかしてオリンって強いのではないでしょうか?


そんな勘違いをしていた時期が私にもありました――――――――。



イッモイモ――――――イッモイモ――――――。(2速限界トップスピード)


そんな状態で爆走(※オリン個人の感想ですそこまでスピードは出てません)中のオリンを追いかけてくるのは微精霊が5体。

どうしてあんなに遠くからオリンの方に一直線に向かってくるんですか!?

一瞬「あ、目が合っちゃったかな?」程度の接触とも言えない接触だったじゃないですか!?

アレですか?微精霊の皆さんは一瞬の視線の交錯も許さない田舎のヤンキーか何かなんでしょうか?(※この後このヤンキーと猫好きトークで盛り上がりました)

それともオリンが何か微精霊さんたちを呼び寄せる機能を備えている?

私の知らないオリンの新機能なんてハッキリ言って要らないのですが!?


私がそんな事を考えてる間に囲まれてしまいました。


うぅ………一対一でも謎の力によって逃げられなかったくらいです。

囲まれてしまった以上逃げることは不可能でしょう。


…………1体くらいなら道連れに出来るでしょうか?


そんな時でした。


「すごい勢いで微精霊が移動していくから何事かと思ったけど、行き先に凜が居るからびっくりしたわ」


微精霊の1体を倒して現れたのは、紫の長めの毛並みをした尻尾が二本有るお猫様でした。

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