第256話
「……あれが原因かな?」
「恐らくそうでしょう。なのですぐにでも討伐するのが良いと思います」
グレッグに全面的に賛成だけど、空を飛んでるって事はあれの処理をするのは俺1人……なんだろう。せっかく連れて来たのに、役に立たないとなると途端に荷物のように見えてくるから不思議だよなー。
「そんな目をしないでもらえますか?」
「だってあの数を俺1人で処理するんでしょー?」
「それでしたら何か投擲できる物を用意していただければ助力しますが?」
「すぐ用意するからちょっと待っててね。そういう事は早く言ってよ全くー」
手のひらをくるくる返して土魔法で石をポンポン生み出す。
「こんなんでいい?」
「どうでしょう――ね」
言うが早いか第1投。随分と距離があったように感じたけど、気が付いたら赤黒い花火が1つ現れて汚いなぁとぼんやりと思った時にはもう2つ3つと続く。
「悪くありませんが数が必要ですね」
「うーん。なら一旦降りるしかないね」
土板の上じゃあ石を作るにも限度はないけどいちいち地面から引っ張ってこないといけないから面倒ではある。だから降りる。そうすれば一気に10だろうが100だろうが一瞬よ。
「さすが少年ですね」
「防壁とか要る?」
「むしろ邪魔になるだけです」
なんていうグレッグの投擲はもはやマシンガンだろ。って速度で石が鳥に向かって飛んで行っては赤黒い花火がポンポン打ちあがるが、それでもすべてを爆散させる事は出来ずに互いの距離が詰まって全貌が明らかに。
「うーわ。結構デカい」
「グリーンバードですね。見た目の割に大した強さではありませんよ」
大きさは鶏の倍くらい。名前の通り全体的に緑色をしてて綺麗っちゃ綺麗かな? あと速度は俺の目でも何とか追えるくらいなので、それほど早くはないって判断していいだろ。
「うーわ……」
ボケーっと鳥を眺めてたら、グレッグの投げた石が直撃して爆散。破片となった肉や内臓的なのがボトボト落ちていく光景はそこそこグロいけど、魔法の才能と一緒にそういう事に対する耐性を持ってるんで、肉がもったいないなーとしか思わな――
「ちょっと待ったグレッグ。あの鳥って食える?」
「食べれますよ。あまり美味しくはありませんけど」
念のため聞いといてよかった。美味しくないと言っても、あらゆるものが遅れてるテンプレ中世相当。ちょちょっと現代知識を駆使すれば何とかなるかもしんない可能性に賭けて、すべて爆散させられる前に回収しようじゃないか。
「じゃあ残りは全部狩るから手出ししないで」
「分かりました」
目に見える範囲の鳥を無魔法で拘束。一列に並べて風魔法で首を切り落とし、水魔法で一気に血抜き。これでざっと70羽くらい手に入ったんで、とりあえず1羽をグレッグに。
「試しに食ってみるから解体して」
「キノコの方はいいのですか?」
「……一応あっちでやろうか」
ここから見えるだけでもたったの1羽の姿も確認できないけど、柵の内部にいないとも限らないんで渋々キノコの里に。
「どう?」
「……大丈夫ですね。グリーンバードの気配は感じられません」
「じゃあ俺は爺キノコのトコ行くから、グレッグは解体しといてね」
大量の鳥と解体用のナイフ十数本を渡して奥へと進むと、あちらこちらで随分と悲しみにふけってるキノコ達が多いって事は、随分とやられたんだろうなーとか考えてるとようやく発見。
「よっす。俺を呼んだのはあの鳥どもが原因か?」
やはりそうらしい。
なんでも、数日前から急に現れたらしく、キノコ達も抵抗はしたらしいが相手は空を飛ぶ上に強いとあればどうにもならず、俺に助けを求めるためにフニィ茸を流して呼んだんだとか。
「とりあえず処理はしたから、今のうちに天井作るか」
面倒なんでただ蓋をしただけの物でいいだろうと土をかぶせていってると爺キノコから文句を言われた。
どうやら日の光が入るようにしてくれないと木々が成長しないし、そうやって日陰を作らないとキノコも育たないんだとか。それは困るって事で仕方なく1から作り直し。
「それにしても……狼の次は鳥かぁ……」
こうなると、またしばらくしたら新しい魔物が来るんじゃないかと考えるのが自然な流れだと思う。
となると次は何だろうか。陸・空・と来たら次は海? だけどここにある水場は淡水なんで、正確には水か。そこからやって来るとなると魚……あとは異世界って事を考えると半魚人とかかな。
「なぁ、念のためあそこも軽く塞いどいていいか?」
水場を指さすと爺キノコをはじめ、多くのキノコ共が難色を示したが、またこんな事があったらどうするん? ってな事をさらっと説明したら震えだしてすぐにやってくれって事なんで、壊されない様に周囲をぎゅっと押し固め。細かい網目でがっちり塞いだら不便だろうから、魚すら侵入できないくらい細い支流とため池をいくつか追加しておく。
「これで多分大丈夫だろ」
これで侵入出来たらそいつはフェルトや始祖龍を超えたスーパーな存在って事になるんで、それはもうどうしようもなくなる。
「さて、じゃあそろそろ帰るわ」
用も済んだし予防線も張った。ここでやる事は終わったんでさっさと帰ってぐーたらしたいなーと動き始めたら数キノコが立ち塞がってうにうに動き始める。
ふむふむ……どうやら、またこういうことが起きた時のための連絡手段が欲しいらしい。
確かに。何か起こるたびに金になるフニィ茸を水路に流されたんじゃ、その分が損にしかならない。かといって、そんな事が出来る便利なモンってなるとやっぱり魔道具になる訳で……面倒——ごほん。丁度いいからリンに押し付け――げふん。課題として任せてみるか。
「一応考えとくわ」
軽い物言いに随分と疑わしい態度を見せて来るんで、とりあえず簡単な物として土魔法で作った長方形に助けてと彫った物を数個渡す。
「ほら。これで何とかしとけ」
これでとりあえずは何とかなるだろ。犠牲を出したくないのは理解できるけど、物事には限度ってものがある。犠牲は出したくないがゼロって訳にはいかん。
「グレッグー出来たー?」
「半分ほどですね」
さすがにこの短時間で全部できるとは思ってなかったけど、それでも実験するには十分すぎる量の羽をむしられた鳥が手に入った。
後はどこまで美味く出来るかどうかを実験しよう。
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