第参拾弐話 敗北! 月面の戦いの終わり!

 第0325クレーター


「マキア?!応答しろ!」

 コックピット内には静寂が広がり、モニターには暗黒が映る。否、何も映らない、壊れているのだろう。

 ジークは、拘束具と化した、操縦用フレームを外す。

 コックピットの中心部分に触れることで、ハッチは開くのだが、予想していた通りに開くことはなく、非常時の開閉装置も使用不可だったので、出ることを諦めざるを得なかった。

 機械という機械全てが、照明すらも使用不能となり、ほとんど暗黒とも言える、コックピット内は、虚無を体現した様なものだった。

 少しすると、様々な物音が聞こえ始める。


 ガゴン


 機械を使わずに水平を保つ、水平装置は床を傾かせなかったが、感覚的にわかる事があった。

 運ばれている。何かと接続され浮遊されながら、運ばれている。運んでいる組織は敵が味方か分からないが、とにかく運ばれている。彼が征くのは、天国か、はたまた地獄なのか、現在時点で、わからない事であった。



 イゼルローン基地内通路


「サラ中尉、第ニ混成突撃部隊と連絡は取れるか?」

「ダメです。出撃から約20分以降、一切の連絡が取れません。」

「そうか、この中で、最速のレッグ部隊は第0325クレーターへ向かって、確認して来てくれ。」

『了解!』

「サブロウ隊長!そろそろ管制室へと、侵入できます!」

「そうか、サラ中尉。ジェキンス中尉とグラウディー中尉ら、アーム部隊は、敵機が出て次第、すぐさま攻撃を行ってくれ。」


『分かりました!サブロウ隊長!』

「突入まで、3、2、1、行きます!」


 ドッドドン‼︎


「総員警戒!順次突入!」

『了解!隊長‼︎』

「な、何故ッ!こんな事にっているんだッ!?」

「抵抗の意志を持つと思われる兵士は見られません!」

「こちらは、銃という銃が使えなくなっています!」

「何故、武装解除された、兵士しか居ないのか!?」

「私は、イゼルローン基地の指揮官のジョージ大将です。本基地の戦力は全て降伏を申し出る。」



 イゼルローン基地 地下格納庫


「やはり、残骸しかありませんね。」

「その様だな、キング大尉。」


 ブゥン


「こちらは、ボディ隊のサブロウ少佐だ。敵基地司令官が降伏を申し出てきた。」

「そうか。しかし、なぜこのような状態なのかわかったか?」

「いや。まだ、聞き出すに至っていない。それよりも、第二混成突撃部隊と通信が途絶した。」

「なに!?艦長達とか!?」

「あぁ。私の部下のレッグ部隊が偵察に向かわせているのだが、敵は反撃する能力すらないようだから、そちらも第0325クレーターに向かってくれるか?」

「了解した。」「全機、作戦変更だ!地下格納庫格納庫から出て、第0325クレーターの第二混成突撃部隊と合流する。」



 ▉▉▉▉▉ ▉▉▉内

「...りゃ、ダ......ゃ...。...路が......P攻撃......られとる。」

「.........式...部強制解錠機を使...しかな...そ......ゃの。」

「...れ...ゃ、取り付け......と。スイッ...ON!!」

「......たは...じゃぞ!...っさと出......!!」

 ジークは、ハッチに軽く触れると...


 ガコンッ


 月面の微かな重力に引かれつつ、ハッチはふわりと浮くように開く。


「やっと、出てきたか。ジーク。」

 三博士が待ち構えている。

「ジーク。お主、何という体たらくじゃ!と言いたいところなんじゃが、あれは、恐ろしいなんてものじゃ無いほどの物だと、ワシは思う。」

 ジークは少ない回数ながら、会話の中で形成された、シキシマ博士の人物像の中で、絶対に出ることのないと思っていた言葉が、飛び出てくることに、驚き、否、それ以上のものを心の中で感じる。


「お主、神を殺して聖書を書き換えてみたいとは、思わんか?」

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