最終戦:ホーム・スイート・ホームな件について
1.
宵も半ば――……。
「家を出たのはいいけど……」
これから先どうしよう。家を後にしてから数分と経たない内に、私の口から自然とため息が吐き出される。
お母さんの残してくれた貯金はあるけど、でも、そんなに多くはないから。できるだけ節約しないと。まずは寝床の確保からだよね。ホテルは……って、もっと節約しないと。そうなると、やっぱり野宿しかないかな。仕方ない。
分かっていたつもりだったけど、世知辛い現実に早くも目を背けたくなった。月光は目に突き刺さるようにまぶしくて、その光の強さにまたしても自然と吐き出された息は、薄っすらと夜の静けさにしみ込んでいく。
なんて、感傷に浸ってる場合じゃなかった。
私は首を軽く横に振ると再び走り出そうと一歩大きく踏み出したけど、その矢先。
「あれ、牡丹? こんな時間にどうしたの?」
「みっ、美竹――!?」
せっかく固めさせた決意もむなしく。思いも寄らなかった人物との遭遇に、踏み込みかけた足はすっかり行き場を失ってしまう。
ひくひくと頬を引きつらせている私に、美竹は、コンビニのロゴの入ったビニル袋を揺らしながら、こてんと首を傾げさせた。
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