それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?特殊スキルで無双出来るけど構いませんね?
ep0. 「真夏の夜の爪」 ①河原で×××を爆破する
それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?特殊スキルで無双出来るけど構いませんね?
SPD
ep0. 「真夏の夜の爪」
ep0. 「真夏の夜の爪」 ①河原で×××を爆破する
少年は嘔吐した。
「ガックン先輩、飲み過ぎっスよ」
後輩の概史が缶を取り上げる。
「まだ飲んでンだよ。返せよ」
少年は潰れた缶を概史から引っ手繰る。横から更にその缶に手が伸びる。
「ガックン、もう辞めなよ。耐性ないのに無理するから。」
マコトが少年を制止し缶を奪う。
逆さにされた缶は既に握り潰されている。
「マコト、お前まで概史の肩持つのかよ」
不貞腐れた少年は足元に転がされた缶を踏み潰す。
ガックンと呼ばれている少年とマコトは14歳の中2である。
後輩の概史は12歳、小6で二人の二学年下である。
彼らは高架下の河川敷にある錆びれた公園の管理事務所を根城にしていた。
かつて子どもが多かったであろう時代には少年野球チームの物置も兼ねていたと思しき場所である。
片田舎の小さな町にも少子化の波は押し寄せており、少年野球チームは数年前から活動を停止していた。
背の高さほどもある草に覆われたこの絶妙な場所は彼らの格好の秘密基地であった。
飲酒に喫煙、様々な遊びに興じていた。
学校にも家庭にも居場所がない事以外に3人に共通点はない。
彼らは特に深く考えず時間とエネルギーを持て余しながら代わり映えしない日常を過ごしていた。
「つーか、穴があったら入れてぇよな」
少年がボソッと呟くと、概史が素早く手元の空き瓶を差し出す。
「先輩、どうぞっス」
「これリポDじゃねーか。俺ボトラーじゃねえんだけど。てか、入んねぇだろうがよ」
茹だるような暑さの中、更に密閉されたようなプレハブの中で少年は吐き捨てた。
「フフ……この前貰ったTENGA擬きみたいな奴、どうしたんだよ?」
マコトが含み笑いを浮かべながらドアから入ってくる。
「マコトさお前さ、こんな真夏にパーカーとか暑くないのかよ。ボクサーでも目指してんのか?」
マコトは真っ黒なパーカーのフードを頭からすっぽり被っている。
真夏でもそれは崩さない。
ホワイトブリーチした髪の根元が黒いのを見られるのが嫌だからというのは本人の弁である。
マコトがコンビニのレジ袋からガリガリ君を取り出し、テーブルに置く。
「マコト先輩、いつもサンキューっス」
概史はいち早くガリガリ君に手を伸ばし、お気に入りのコーラ味を確保する。
概史の兄はフーミンという愛称で知られ地元では顔が広い存在であり、小さいバーを経営している。
バーで団体貸切があった際などのビンゴゲームの景品の余り物を貰うことが多くそれらは概史を通して少年達に提供された。
「お前の兄貴、頭おかしくね?いくら余ったからって小中学生にTENGA擬き配布するか普通?ハイレベルの変態か何かか?」
少年はソーダ味のガリガリ君を齧りながら窓を開ける。
「いやでもおれ、気に入って使ってますけど」
「は!?」
少年とマコトが思わず身構えた。
「概史……キミあれ使ってるの……!?」
マコトは得体の知れない生き物を見る目で概史を見ている。
「いや、せっかくなんでカスタムしたんスよ。中にLED入れたらいいルームランプ的な感じになったんス。もう夏休みの工作これで行こうと思ってるんで」
「なんであれを工作しようって発想になるんだよ。提出するとか正気か?兄弟揃って頭おかしいだろ」
少年がうんざりしたように呟く。
概史は最年少ではあるが時々とんでもない事をサラっと言ったりするものだから侮れないのだ。
「そういうマコト先輩はどうしたんスか?」
「え?僕はお地蔵さんにお供えしちゃった。今頃誰か拾って帰ってるかもね」
「いや、お前ら訳わかんねぇよ。なんで供えんだよ。なんで光らせてんだよ。なんで学校に提出すんだよ」
「お地蔵さんが恩返しに来てくれたらいいなって思ってさ……いい事でしょ?」
「傘地蔵っぽいノリで語ってるけど明らかにおかしくね?地蔵がどう使うんだよ」
「いや、ガックン先輩が一番イカれてますよ。優勝っス。」
「……ガックンはアレをどうしたのさ?」
マコトの手に握られた梨味のガリガリ君は溶けかけている。
「ああ?中にロケット花火何本かぶっ込んで河川敷で打ち上げた」
ガリガリくんの棒を齧りながら少年は答えた。
「は!?」
マコトが驚いて悲鳴に近い声を上げる。
「……猟奇的じゃない!?暴力的なんてレベルじゃなくない?ガックンてそういう趣味なの!?」
「違うんスよ、マコト先輩。こう見えて純情なんです。ガックン先輩は」
すかさず概史がフォローを入れる。
「いや〜なんつーかよぉ……。折角だからそりゃちゃんと世話になろうとは思ったんだぜ?思ったんだけどよ……後のこと考えたら無理っつーか。」
少年が言葉を濁す。
「……じゃあ使えば良かったじゃないか。」
「けどよぉー。使った後ってコレ、どうすンだ?放置してたらなんか怖くね?なんか出てきそうじゃね?」
「あー。それもあるんスよね。ホムンクルス的な生命が錬成されそうっスよね。」
「……いやホムンクルスじゃなくて小蝿とか虫とかが先に涌きそうだけど。てか放置する前提なの?」
ガリガリ君の棒を咥えながら少年は頭を掻いた。
「捨てるっつってもよ〜。コレ、どう分別すンだよ?俺んとこの町内会、分別ミスったゴミってよぉ、中身開封されて家の前に置かれるし実質公開処刑されンだぜ?無理無理無理。怖くて出来ねぇ」
少年の母親は数ヶ月自宅に戻っていない。
所謂ネグレクトである。
少年は家事の殆どを自身でこなさなくてはならなかった。
ゴミの分別・ゴミ捨ても当然これに含まれている。
「けどよぉ……。使わずに捨てるのもなんか可哀想じゃね?って気がしてよ」
「……いや可哀想ってなんだよ。イミフなんですけど」
マコトの手からポタポタと溶けた液体が床に落ちる。
「このTENGA擬きってよ……まあ多分ドンキかどっかでまとめて買ったんだろうけどよぉ……。人間に使われる為に存在してる訳だろ?工場から出荷されてよ、店に並んで……その間に『自分はどんな人間に抱かれるんだろう』って思いながら過ごしてる訳じゃん?それがよ、俺のトコなんかに来ちまったばっかりに……その役目も使命も果たせずただ捨てられるだけってじゃあ何の為に生まれたんだって感じになるだろ?」
「……なんないし」
マコトが吐き捨てるように呟く。
「なんか可哀想な気になってよ、供養してやろうって思った訳よ。次は『生まれ変わったら次はいい男の元へ行けよ』っつー願いを込めてよぉ……」
「いや次もオナホに生まれ変わる設定なんスか」
「……これの世話になってる時点でいい男じゃなくない?」
「それでよ、派手に見送ってやろうってんで打ち上げてやったワケ。今流行りの宇宙葬ってヤツじゃねーのこれ」
「……宇宙まで届いてないよねコレ……河川敷で打ち上げたなら文字通りの汚ねぇ花火で終わったんじゃないの……」
「その理屈でいいんだったら使用済みを打ち上げても良かったんじゃないスか先輩」
「……いやもっとダメだろ!?」
マコトは明らかに困惑している。
「地蔵に供えるのとどう違うんだよ。供養だろこれ?」
少年はソファにどかっと座った。
「3人揃いも揃ってロクな使い方してないっスねぇ」
概史がヘラヘラと笑う。
「……打ち上げる発想が僕にはわかんないよ。学校にでも置いてきたら良かったのに」
おっそうだな、と少年がだるそうに呟く。
「けどよ、未開封とはいえ学校に転がってたTENGA擬きとか使うか?使わなくね?」
「誰かのロッカーか机の中に入れてたらどうっスか?」
「出所不明なオ○ホだぜ?使えるか?なんか針とかで穴でも開けられてカラシとか塗られてたらどうする的なこと考えね?」
「……あー。確かにね……」
「いやー。俺だったら捨てるわ。ロッカーや机に入れられてたなんて怖えし。無理無理無理。使われずに結局捨てられて虚しく終わるなら供養して正解じゃね?」
少年が少し得意げに胸を張る。
「供養っていうか……じゃあ逆にオ○ホにとっての幸福ってなんスかねぇ」
概史がミネラルウォーターを飲みながら首を傾げる。
「……アダルトグッズコレクターや蒐集家の家にコレクションされるとか?……」
「俺わかんねぇけどよ、人間と同じじゃね?未開封で何も出来ずに本領発揮できるチャンスの無えまま朽ちてくってよ、どっちかというと屈辱なんじゃねーの?」
少年はどことなく真剣なトーンで呟いた。
「あーそっスね。ゴムも気をつけないと消費期限ありますもんね」
概史が頷く。
「え?そーなの!?」
少年が驚いて振り返る。
「コンドームも消費期限ありますから早めに使い切った方がいいっスよ先輩」
「やべー。財布ン中入れてたの忘れてたわ」
少年がポケットから財布を取り出す。
「……ガックン、ゴム常備してるんだ」
マコトが意外そうに呟く。
「違ーよ。1年の時にクラスで流行ってよぉ、金が貯まるってんで貰っただけだし」
「先輩。小銭入れに適当に突っ込んでるからベコベコになっちゃってます。コレもう捨てた方がいいっスよ。こんなん使ったら妊娠するんじゃないスか」
少年の財布を見た概史が呆れた。
個包装の外装パッケージは小銭にもみくちゃにされて小汚く真っ黒になっている。
「マジか!?だから金欠だったのか!?」
「普通にしてても破れる事あるんだからダメっスよ。せめて札入れかカード入れとかに入れないと」
「……どう転んでもガックン万年金欠じゃない?」
「どうしろっつーんだよ」
少年は頭を抱えた。
ダラダラと集まってダラダラと駄弁ってダラダラと1日が終わる、それが彼らのルーティンであった。
それで何も不足も不満もない毎日だった。その均衡が破られたのは先週の事である。
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