第10話 新たな展開2


 僕は、レンタルショップビルを奈緒と一緒に出るとそのまま道玄坂に向かった。映画館の地下にリニューアルした寿司屋がある。以前、仕事関係で入って、店員の対応の良さを気に入っていた。


 私は、淳どこに連れて行ってくれるのかなと思いながら、渋谷駅前の交差点を渡った。

結構な人通りがある。淳と逸れない様に必死に彼の左手を握りながら人を避けて歩いた。


 たまに淳が、自分の方を振り向いて、大丈夫か気にしてくれているのが嬉しかった。

やっと交差点を渡りきると今度は、映画館方向に行くので


「淳、こっちの方に知っているお店あるの」

少し心配そうな声で聞くと


「うん、前に仕事で利用したお寿司屋が有って、店員の感じがよかったから、そこにしようと思って」

「嬉しい」

私は、少しだけ淳の方に寄り添うと、前から歩いて来た男が、羨ましそうに淳の顔見ていた。


映画館の手前のエスカレータを降りて、左にUターンするように曲がって右手の階段を降りると、中華や和食の店が並んでいた。


まだ、結構人が多いなと思いながら、階段を降りて正面にある寿司屋の入口に立つと結構な人が食事をしていた。


これならいいやと思っていると

「何人様ですか」

女性の仲居が、聞いて来たので淳は、右手の人差指と中指を立てて人数を伝えるとにこっと微笑みながら

「こちらへ」

と言った。


カウンタの中に入っている板前たちが、

「いらっしゃーい」

と元気な声で迎えてくれている。カウンタに案内された二人は、仲居が引いた椅子に奈緒を座らせると淳は自分で隣の椅子を引いて座った。


 すぐに後ろから、おしぼりとお茶を持った別の仲居が、二人の前にそれを置いて行く。

奈緒は、店の中を、首を右に左に振りながら見ると最後に淳を見て

「へーっ、素敵ね」

と言ってにこっとした。

二人がおしぼりで手を拭いていると、板前がカウンタの一段上の台の所に長めの皿を置き、ガリを皿の隅に置くといつでも注文どうぞという顔をした。

後ろから、間合いを見たのか、女性の仲居が

「飲み物何にしますか」

と聞いて来たので

「奈緒、何がいい。僕は取りあえずビール」

「うん、同じのでいいよ」

更に銘柄を聞いて来たので好みを伝えるとすぐに持ってきた。奈緒が、ビール瓶を持って

淳に差し出したので、淳もグラスを少し傾けて出すとゆっくり注いだ。

 前は、注ぎ方も分からず泡だらけにしていたが、さすがになれたらしい。グラスを縦にしたところで口元まで来ると、今度は淳が、奈緒が手に持つグラスに注いであげた。

 二人で、軽くグラスを掲げるとにこっと笑って口元にグラスを持って行った。

「奈緒、何食べる」

壁にかかっているプレートとメニューを見ながら少し躊躇していると

「じゃあ、握りの上を頼んで、足らなかったら他の物オーダーしよう」

そう言うと

「うん、それでいい」

奈緒は、育ちもあるのだろうが、寿司屋に入ってマグロだ、いくらだ、ウニだなどと言うはしたないオーダーはしない。

 連れていくお店は、結構値が張るところが多い。これも育ちのせいだろう。最初の握りを板前が、目の前にある長い皿に置くと、奈緒は、淳と自分の前に醤油皿を出して、二つに醤油を注ぐと、割り箸を割って握りを食べた。

淳の方を向いてにこっとすると

「美味しい」

「良かった」

淳も笑顔になりながら口に握りを運んだ。


結局、奈緒は、量は十分だったが、淳が少し足らずに追加オーダーをした。その間にビールが中瓶だったせいか、それを二本開けると更に日本酒を追加した。少しアルコールが入った頭で夕方の仕事の事を思い出していると

「どうしたの淳、急に静になった」

奈緒の方に顔を向けると

「うん、実は・・」

と言って、他の人には聞こえないように小さな声で、新しいプロジェクトの概要だけを離した。

「そうなんだ。淳が、海外に行くと会えない時間が長くなるな」

寂しそうな声をしながら言う奈緒に

「でも、行く前と後でいっぱい会うから」

そう言って奈緒の顔を見ると嬉しそうな顔になって

「本当」

「うん、本当」

そう言うと淳の顔をじっと見た。

まさかと思うと淳は話題を変えた。その間にも淳は、日本酒を飲んだ。

 奈緒は、さすがに日本酒は、まだ苦手らしく、ビールが終わるとお茶に変えた。淳は、日本酒を二合開けて、さすがにお腹が満たされると腕時計を見た。

「もう九時半だ。そろそろ出ようか」

奈緒は、帰ろうとは言わず、出ようかと言った淳の言葉に一瞬だけどきっとすると

「うん」

と笑顔で答えた。


 階段を上がり、エスカレータを上がると道玄坂に出た。まだ、映画館の前は、縁石に座ってる人や誰かと待ち合わせしているのか、人待ち顔の人、駅に向かう人などでいっぱいだった。

 まだ、いるんだなあ。こんな時間でもと思いつつ、二人で手を握りながら右に曲がり駅方向に歩き始めた。すぐ目の前の信号が赤で道玄坂を渡る方向に青になっている。

奈緒を見ると、少し酔っているのか、ほんのりと顔がピンク色になっている。淳は、何の気もなしに奈緒の手を引いた。

えっと思いながら奈緒は、淳の顔を見ると、淳は、まっすぐ信号の反対側を見ていた。コーヒーでも飲むのかな。でもこの状況でそれはないか、少しの期待とでも淳から誘うこともないと考えながら信号を渡りき来ると

「奈緒、今日いい」

意味はすぐに分かった。左に少し歩いて右に曲がればそちら方面だ。淳の顔を見ずに下を向きながら、頭で頷くと彼の左手をしっかりと握った。


 体がそれに慣れ始めていた。淳の手や口が自分の体に接してくると自然と声が漏れた。淳の優しさの中で、自分の体が自然と反応している。やがて、淳が強く自分自身を入れてくると激しく突き上げて来た。

 奈緒はたまらなかった。初めて淳と知り合ってからもう一年以上が立つ。あの旅行に行く前は、こんなこと想像もしていなかった。でも今は、体がそれを求める時があるようになっていた。体を突き抜ける快感の中で、遠くで淳の声がした。

「奈緒、今日大丈夫」

奈緒の頭は、良いと心地よさで、少しだけ自制心が甘くなっていた。

「うんいいよ」

と言うと思いきり淳は自分自身の気持ちを出した。

 ゆっくりと自分の上にかぶさって来ても、体重はかけてこない。頭を下から支えるようにしながら耳元で

「奈緒、ありがとう。今日何か、たまらなくて。奈緒と会うまでは、そんな感じなかったんだけど、一緒に食事をしていたら急に、奈緒を抱きたくなって」

「うん、いいよ。淳が私をほしい時は、私もそう思う時だから」

そう言って、彼の背中に手を回した。



―――――



次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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