闇を追いかけて

御等野亜紀

第1話 可憐

「ハッ!式神」

「そいつから離れるなついてけ!」

追いかける追いつけない。があわてることはない

奴は式神を払わなかった

魔世のほうが早いただのオウムじゃない使い魔だ

二つに誘導されること30分

古びた寺院にそいつはいた

そいつは狐から人の姿に変化していた

「随分なとこに逃げ込むじゃない覚悟を決めた?」

「臨兵闘者 皆陣列在前」九字をきり手前に放り出す

九字はどんどん大きくなり相手を包み込む

「朱雀!剣となりてわが身に下山せよ」

「随分悪さがすぎたようね討伐依頼がきたわ覚悟しなさい」

私は剣を振り下ろす…せないそのまま後ろにずべっていく

「朱雀?」手を離し身構える今度は後ろに

グサッと言って断ち切ったものは灰色の鬼だった

「こっちが親玉?」

「そうです。」

鈴のような声で応える姿はつるぎではなく

とても美しい女性の姿をしていた

中国の昔の皇女たちが着ているような服を着ている

年など判別できない絶世の美女とはこのことをいう

「随分悪さはしたようですが…

そちらは元来いたずら程度のものでしょう」

「9字をといて差し上げては」

「ああ。臨兵闘者 皆陣列在前、消失」

同じように九字をきる大きさが重なるとすーっと消える

「鬼ケ死んだのケ?」

「死んだわよ」

「俺自由っケ?」

「そう自由よでもまた悪いことしたら殺しに来るわよ」

「怖い怖い」

「全然怖がってるように見えないわよ

九字で身動きとれなくなってたのはだーれ?」

「俺ケ九字怖いケ母親は九字で切り裂かれたっケ」

そう九字で直接相手を攻撃することも出来る

まさにさいの目切りだ…

「悪いと思わないわよ

世の中には貴方たちのようなものを妖怪と呼び

拒絶反応を起こす人間はやまほどいるのだから

長生きしたければ大人しく静かに暮らすこと

その尻尾と耳隠せないの?」

「隠せない」

「まぁ愛嬌はあるけど人に混じっては暮らせないわね

2つ尾になってもそんなものか」

「個体差はあるっケ10年で人に見事に化けるものもいるっケ」

「10年で化けられても困るけど…そーゆ話もあるわけね」

「もうしないわけないすケ」

「仕方ないわよ獣の先祖返りは珍しいことでも

本人にどうすることが出来るわけでもないし」

「ほんじゃもう消えなさい悪さするんじゃないわよ!」

「わかってるケ」

「大丈夫でしょう。力は弱くっても2つ尾となれば100年は

有に生きているはずですもの」

「朱雀私たちも帰ろう」「かしこまりました」

チリンと鈴のような音がして朱雀は消えた


私は可憐、かれんと読む

名前とは裏腹に大雑把で乱暴で賑やかな性格をしている

成績もそこそこクラス長もしているなかなかできた人間だ

と祭り上げられたのでついつい受けてしまった

そんな調子なので今はお昼のパン買い中

「これとそれとあれとあれ、それからそれもください!」

「おお帰って来た」

「助かる~あの人ごみものともしない性格は便利だわー」

「ええ、そんなこというともう買ってきてあげないぞ」

「えー、そういわずお願いします」

「希望のパンが食べれるのって可憐が買いに行くときくらいなんだもん」

まー確かに人ごみの先頭で男に負けない声して叫ぶ女子というのも

私くらいなものだろう

でもパンを買ってくるのは当番製5人でローテーションで5つ買ってくる

「私はどんなパンでも食べれるからいいけどね」

「かなちゃんのクリームアレルギーはきついよね」

「正確には乳製品全滅です…パンもしようされてるの多くって…」

「わかってるってかなのパンだけは誰もが死守するじゃん」

「ありがとうございます」

5人でわいわいそんなこといいながら食べていた

実際買うのは難しいロールパンとかにも今は乳製品が練りこまれている

フランスパン系こっぺぱん系くらいなものか

ちなみに可憐含む3人はパンはおやつお弁当を持って来ている

食べすぎということなかれ普段から第6感目の神経がビンビンくる私は

自然とエネルギーをそっちに使う

授業中何気に窓をみたらでかい目玉がぎょろり2つ覗いていたりする

などということは始終なのだ


そして学校の帰りの事…

朝には居なかったのに自縛霊かぁ

まだ花さへ添えられてないし朝は居なかったし

昼に死んだのだろう

心の中で呼びかける

(そこの貴方、貴方はすでに死んでいるわ

自縛などされずに行くべき道を進みなさい)

(私死んだ知ってる。道は見えない)

自殺者か普通なら光となって進むべき道が目前にしるされる

だが自殺者には見えない目が見えないのと同じだ

(ここに居たっていいことなどひとつもないわ

帰るべき場所へ帰りましょう。いいわね)

(嫌、誰も私をとむらってなどくれてない)

(ここに居ても弔ってはもらえないわよ

弔ってもらえるのはお家ででしょう)

(嫌、誰も私をとむらってなどくれてない)

ふーっ、これだから自縛霊とは厄介なのだ

とりあえず小さな花束と紙コップに水をいれ角にそえに戻った

少し大きめの花束と湯飲み茶碗をもって飾ろうとしている人と出会う

「それ、娘のために持って来てくれたの?」

向こうから声をかけてきた

私は「はい。事故が起きてた様子だったので」

「娘の知り合いなのかしらそこの高校の制服よね貴方」

「知り合いじゃありません。白線がひかれてるから死人がでたのだと」

「ああ、そうね。そうわかっちゃうわよね。優しいのね」

さすがに見えちゃうしとは言えない

頭がおかしいとか気味が悪いとか散々言われて育った

私が真っ直ぐに育ったのは寺の住職をしてるじい様が

私の事を理解して守ってくれたからだ

「娘はねノイローゼーぎみでね自殺したの

諦めて就職しなさいと言っても勉強止めなくってね

はいりたい大学があったらしいのだけど

そこに彼氏が居てねでも1年も待てないって降られたらしくって

3日ほど泣き続けてたのだけれど

職安行ってくるって言ってそのまま戻らなくってね

警察から電話が来て赤信号に飛び出したってね

人様にめいわくかけて自殺なんてねぇ

彼氏なんてこれからいくらだってできるのに」

私はチラッと霊をみる小柄で太り気味

お世辞にもルックスもいいとは言えない

人は見かけじゃないでも悲観するほどに悩んだのだろう

この道は職安に続く決して嘘を言ったわけでない

発作的に飛び込んだのだろう

(お母さんが弔いにきてるよ

通夜でいそがしいはずなのに花束かってきたんだよ)

(ママ…いつも煩い人。就職しろ就職しろって…来たんだ)

(帰れる場所はあったんだよ。一晩考えてごらん

明日また迎えに来る)

「それじゃ私失礼します」

「ありがとうね。お礼しか言えないけど私も戻らなきゃだし」

「はい」


夜がざわめく

人の悲鳴がする

街中なんかに住むもんじゃない

じー様の家のが静かで落ち着く

だがほっとくわけにも行くまい

たぶんこれはあれの仕業だ

慌てて着替えて外に出る

ずるずる…でかい蛇

否、トカゲの尻尾だ

無意味だろうが切り落とす

やはり対した反応もせずに真っ直ぐ進んでいく

頭を切り落とすしかないか

「朱雀頭いくよ」

「承知いたしました」

だが切り落とそうとする寸前

火の玉がいくつも飛んで来てトカゲを包み込む

暴れるトカゲ慌てて下がるが

当たるか?と思った瞬間朱雀が人の形をとり

私の前に立つ

おもいっきしぶったたかれたのに倒れもしない

妖怪ネットワークの連中か文句のひとつでもいいたいが

相手はまだ子供のようだし

そんな暇はない朱雀気配追える?

「はい」というと赤い鳥に変化して飛んでいく

私も後を追いかける追いかけながら

「玄武!剣となりてわが身に下山せよ」

「玄武、私を守ってね」

「承知」

朱雀の剣がレイピアなら

玄武の剣はバスタードだ切るというより叩く剣だが

守りの意味のが強い

相手はもう何度となく切りあいしているが

倒せたことはない強敵だ

みつけた朱雀が鳳凰に変化して体当たるが

マント一振りではじき返す

相手はまるでバンパイヤのごとくの姿をしている

手で大きな円を描いている

こちらも同時に玄武で円を描く

朱雀が後ろに立つと私を抱くようにまとわりつく

真っ赤な鎧となりて私は軽鎧姿になる

スカートがはためく強い風と一緒に

いくつもの短剣が蜂の集団のように飛んでくるが

手と剣で描く円なら私の方が大きい

全て玄武が受け止めてくれているが

相手の属性は闇…光と対当する強い属性だ

玄武の円に当たった剣は蝙蝠となり飛んでいくが

きっちり玄武の円に隙間をつくる

いくつかの短剣がが飛び込んできて私の皮膚を傷つけるが

主要な場所は短剣はじゅうっと音を立てて炎として舞い上がる

次はこっちの番、玄武を斜めに振り下ろす

大地さへめり込み神渡りのような状態で相手に向かうが

その衝撃をなんなく片手で受け止める

相手は両手ききだ受けながらも手を振るおうとする

やばい衝撃波がくるか?

しかしそれは来なかった

バチバチと言った雷の鞭?が片手を捕らえてた

「馬鹿かお前、こんなの一人で相手になるかよ」

知らない奴にどやされて…いや知っている…学校でみたような

そうよくパンを買うときに出会う…

そうこうしているうちに5人ほどに奴はかこまれていた

それでもまだ余裕の顔を隠さない

「ふふんさすがに不利か」

そう言うとマントをばさりと頭からかぶると消えていなくなった

闇渡り影と闇さへあれば何処からでも自由に出没し消え去る

マントもさらさらと闇の砂となって消えていった…

「ありがとう」同じ学校よね

「1年上2年B組鳥沢輝。

ここらはうちの管轄だよネットワーク入ってくれるとやりやすいんだが」

「それはお断りするわ妖怪嫌いなわけじゃないけど」

「基本私が相手してるのは奴だけ。他の仕事にまで狩り出されたら面倒よ

それに妖怪の討伐依頼も受けているし敵に回ることもあるかもしれない」

「そっか結構強そうだったから入ってくれると助かるのに

それにやつは一人で倒せる小物じゃないぜ」

「知ってるわよ。両親の仇だもの」

「朱雀、玄武、ありがとう」

チリンと鈴のような音がしてすーっと気配が消えていく

「四力使い一昔前に活躍してたわね相我夫妻の子供かしら」

「そうです。属性炎でここのネットワークというと火炎姫ですね」

「そう。人間のときは萌香と名乗っているわ」

「もうひとり子供の炎の使い手がいたわ危うく燃やされるところだった」

「燈紫ね。注意しとくわ。まだ経験が薄いの」

「それじゃ失礼します。ネットワークと出くわすのは初めてだけど

大雑把にここにいる5人の顔は覚えたから敵に回らないこと祈るわ」

「それはこっちもだな。がっこうでなー」


そして翌日

やはり昼食に同じ中庭を使う集団に彼…輝と言ったかを認めたが

とりあえず会釈程度先輩だし知り合ってしまったので礼儀だろう

なにか勘違いされたのか仲間にどつかれている彼を横目に

いつもの5人と食事をとる今日はかなちゃんのパンが買えなかったので

お弁当組みの3人がごはんとおかずをだしあいかなに食べてもらう

かなちゃん自分もお弁当にすべきだと真剣になやんでいるのだが

実はすごい遅刻魔なのである。お弁当をつくるとさらに…


そして帰り道

(弔ってもらったでしょうそこを離れない?)

(昨日お母さんの声聞いた泣いてた)

(うん。泣いてたね。早まったことをしてしまったんだよ)

(でも健二のいらない私なんていらなかった)

(健二弔ってくれない)

(男の事はわすれなさい。その方が何倍も幸せよ

愛するんじゃなくて愛されるのその方が幸せ)

(ずっと友達でやっと恋人になれたのに弔ってくれない)

(自殺したらひっそりと葬儀もするものよ

その健二って人は死んだことさへ知らないと思う)

(だって友達だったのよ弔って…)


「だからさ、趣味友ってやつだよ。女にも興味あったし

だけどさ綺麗で気立てもよくっていつもそばに居られるってなりゃ

どうしたって鞍替えしたくなるじゃん

嫌だよ自殺した場所わざわざいくなんてあてつけも過ぎるじゃん」

「もう、いいわ。今の貴方に来てもらっても自縛は取れない」

「悪いな霊能者さんよ俺より餓鬼みてーだけどちゃんと払えよ

呪われるなんて真っ平だぜ」


(無理だった大学っておもうより忙しいみたい)

(嘘よ。あの女が来させないんだわ)

(女の人は関係ないわ。どんなに忙しくても一声かけにこようって

本人が思ってくれなきゃ意味ないの)

(諦めて昇天しよう。来世はもっと仲良しになれる人がいるかもしれない)

(無理よ自殺したもの地獄行きよ)

(誰も死んだら何処に行くかなんてわかんないよ

地獄が悪いとことも限らない。天国も地獄も人が思い描いたものよ)

(私にわかるのはここに居る限り貴方はもっともっと

悪いものを取り込んで自我を失い昇天できなくなるということだけ

悪霊になったら払うことでしかできなくなるそれは消失よ?)

(無理よここは暗くって真っ暗で昇天の道さへわからない)

(それは助けてあげられる今なら昇天できるのよ?)

(本当?)

(うん。それは本当)

(助けて)

(うん。)

「臨兵闘者 皆陣列在前、離縛!」

ポケットからあらかじめ作ってきた紙の人形を取り出す

「臨兵闘者 皆陣列在前、光点となれ!」

(光ってるもの見える?)

(見える)

(光の渦に飲み込まれるまでずっとその光に憑いていって)

(わかった。ありがとう)

(来世では幸せに)

霊が光について歩いていく

彼女には見えないが同じ方向へいくつもの霊が一点に向かって歩いていく

これを私は道と呼び行き先を昇天と呼ぶが正式なことは何も知らない

祖父は教えてくれないし両親ももっと大きくなってからと言っていた


そして私は家に帰る

「ただいま」

「おかえり」の声はない両親が唯一残してくれたものそれが家

ここには両親との思い出が詰まっている

本当は売り払って祖父と暮らしたいけど…捨てられないものばかりある

それが私の家

明かりをつける

「ただいま、違っておかえりでしょう」

オウムが言う

「ただいま」と覚えたので

「ちがっておかえりでしょう」と言い返すうちにそう覚えてしまった

奴との戦いにはあまりに危険なので篭にいれたままだった使い魔

篭から出してやる

「あー窮屈だった」

「私だって仲間なのよ」

「わかってるけど失いたくはないの

それに奴との戦いを貴方は怖がっている

両親が死ぬのを目にしてるから逃れるので精一杯だったから

そんな貴方を連れてはいけない戦いもあるのよ

わかって魔世」

「ピーピーピー私はオウムわかんない」

そう言ってばたばた飛び回る滅茶苦茶に

「こら、篭に入れるわよ!」

「1日半もいれっぱなしにされてたのにたまらない」

そういって肩に乗る「豆くれ」

「はいはい」と言って袋をがさごそする

「アーモンドが好きな鳥なんででぶるわよ」

「そんなにくれないじゃん」

「当たり前、戦闘に響くようになったら困るもん」


そしてソファーにどっともたれる

私の日常がちょこっと変化に彩られた日


頭に響く

それにやつは一人で倒せる小物じゃないぜ


そのまま私は眠りに入っていった


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