第24話
文化祭が終わってから一週間くらい経った土曜日、俺は街のデパートに来ていた。
加賀美の指示によって。
曰く、カップルらしいことがしたいとのこと。
休日までこいつと関わるなんて当然嫌だったので断ったら、付き合ってくれるのなら好きな物を何でも買ってくれるとのこと。
というわけで俺はアルバイトとしてここにのこのこやってきたのだ。
休日に悲しくデートか。なんて思っていると、悠理がやってきた。
「悠理じゃねえか。今回は加賀美と晴の悲しきデートではなかったのか?」
「俺は小野田と加賀美と晴と4人で買い物に行こうって誘われたから来ただけなんだが」
別に隠すことも無いだろうに……
「おまたせ!!」
俺が安心した隙に小野田さんと加賀美がやってきた。
「じゃあ、行きましょうか」
「そうだな」
そして有無を言わせずに俺の手を握る加賀美。
「なっ!!」
「小野田さんには黙っているって決めましたよね?」
そう小声で説得され、渋々付き合わされることに。
まあこいつだと思わなければただの美人と手を繋ぐっていう役得だ。
服もお洒落だし。スタイルも良い。そして多分良いにおいがしている。お高い香水だ。
よく見ると顔も綺麗だ。ああなんて日の打ちどころのない女なんだ。
俺は今ラッキーなんだ。うん。おいそこの黒須、笑うな。
実は文化祭の後、3人で話し合い、小野田環にはこの事は絶対に明かさないと決めたのだ。
だから文化祭で手を繋がれた時とは違い、嬉しそうで楽しそうな表情でなければならないのだ。
最初に辿り着いたのは最近女子高生の間で話題となっている洋服屋だった。金持ちの娘二人ではあるが、思っているよりも女子高生っぽい感性を持っている。
時々金持ち特有の話題も出てくるのだが、基本的には今まで付き合ってきた女子たちとさほど変わらない普通の女子だ。
「これ可愛い!!千佳ちゃん着てみて!!」
着くなりテンションが高めな小野田さんは、加賀美を着せ替え人形のように服をあてがっていた。
確かに見た目がいい奴の服装を選ぶのは楽しいからな。
「そうですね。後でまとめて試着をしましょうか。今度は環の番ですね。これとかどうですか?」
完全に俺たちが置いてけぼりにされている。
「なあ晴さんよ。俺たちっているのか?」
「さあ。試着の時に散々見せられるんじゃないか?」
「それもそうか」
「二人とも、試着室に行くよ!」
俺たちは小野田さんに連れられ、試着ルームに行くことに。
「晴さん、こういうのはどうでしょう?」
「悠理くんに晴くん!どやっ!!」
恥じらう女性を演出する加賀美に、堂々と仁王立ちで服を見せてくる小野田さん。
「二人ともよく似合っているよ」
二人ともルックスもスタイルもいいので基本的に似合わないってことは無かった。嫌いフィルターをかけていようがそれ自体に嘘は無い。
「よく似合ってんじゃねえか」
小野田さんを純粋に褒める悠理。
「えへへ。ありがとう」
照れる小野田さん。正直可愛いと思う。こういう所がバド部で愛されている理由なのだろうな。
その後様々な路線の服を試着した後、加賀美は俺が一番良いと言ったものを、小野田さんは悠理の反応が一番よかったものを購入していた。
「さて、今度はあなた方の番ですよ」
そう強く言われた俺たちは、男性物の服を選びに行くことになった。
その場所は、あまり俺たちが見に来ないタイプの服屋だった。
「二人とも私服のセンスがとても良く、大変似合ってらっしゃるのですが、若干柄が悪いと言いますか。もう少し爽やかな服を着てみて欲しいなあって」
確かに俺たちの服はヤンキーというか、そっち方面に寄っている。不良ではないのだが、そういった格好の方が好きなのだ。
悠理はどっちかと言えば不良っぽい顔つきをしているし、俺は銀色のメッシュを入れているのが若干拍車をかけている節もあるが。
「爽やかな服か……」
悠理が若干苦い顔をする。
実は中学の頃七森たちとたまには今のようなファッションではなく、爽やかに行ってみようということで服屋に行ったことがあるのだ。
その時に服を選んだのだが、悠理に似合う爽やかな服が見つからず、どうしてもお坊ちゃまみたいになってしまっていたのだ。
そのせいで散々笑われて以降、こういった服は二度と着ないと公言していた。
「はいはい行きましょー!!!」
そんな悠理の事情なんて知らないであろう二人は俺たちを押すように服屋に連れて行った。
「これとこれとこれかな」
若干テンションが下がっている悠理を完全に無視して二人はスマホを見ながら服を取っている。
「何を見ているの?」
俺は加賀美に何をしているのか聞いた。
「これですか?私がある程度当たりをつけていた服と、クラスの女子から貰ったリクエストですね」
「クラスの女子からリクエスト受けてるのか……」
「文化祭の時に衣装を二人に着させたでしょう?あの後から私服を弄ってみたいと話題になっていまして」
「着せ替え人形にする楽しさを知ってしまったということか」
「はい。お二人ともタイプが違う美男子ですもの」
これはやられたかもしれない。何か買ってもらえるとは言っていたがまともな物にならない可能性が出てきた。
けれで約束してしまったものは仕方がない。諦めて悠理と共に待つことにした。
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