第14話

「これで俺たちの勝ちだな」


 俺は咄嗟の判断で攻撃を避けたため背後に壁を背負ってしまった。


 流石に喧嘩慣れしているらしく、逃げようにも逃げられない。


 つまり、奇策も何もなしにこの二人を相手するということ。


 それでもやらなければならないらしい。


「じゃあ死になさい?」


 俺が逃げ難いように横に鉄パイプを振るう大賀。それに対しどう動くかを架橋が見極めようとしている。


 恐らく逃げた瞬間に攻撃を食らってしまうことだろう。


「ならこうするしかないよなあ」


 俺は鉄パイプを右手で受け止める。


 そしてその鉄パイプを使い架橋の攻撃をガード。


 その際に架橋側に近いところに攻撃を当てさせることに成功し、反動で手から鉄パイプが離れた。


「なんですって?」


「大賀。こいつは思っている数倍強い。気を引き締めていくぞ」


 この攻防のおかげで一旦俺から距離を取ってくれた。これで回避不可という状況からは逃れられた。


 ここから勝つためには今度は架橋から鉄バットを奪う必要がある。


「さあかかって来いよ二人とも。ここらの高校を狙うって言った割には雑魚じゃねえか」


 劣勢なはずのこちらが煽る。


「んだとコラァ」


 めちゃくちゃキレたのは架橋ではなく大賀だった。お前オネエじゃなかったのかよ。


「おい、やめろ!冷静になれ」


 という架橋の制止も聞かずに向かってくる大賀。さっきまでのオネエっぽい動きは一切消え去っていた。


 架橋が仕方なく合わせに来るが図体が大きい分鈍い架橋は間に合うわけもなく。


「1対1でお前らに負ける要素なんてねえんだよ」


 カウンターを一発。怒りに任せて全力で攻撃してくれた分威力が倍増したようで、その一発でノックアウトだった。


 そして遅れてやってきた架橋の攻撃は普通にかわして倒した。


 余裕が出来たので様子を見てみると、丁度他の奴らも倒し終わった様子だった。


 一旦こいつらを近くにあったロープで縛り上げた。


「なにするのよ!」


「俺たちは負けた。冷静になれ」


 対照的な様子を見せる二人。そんな中俺は皆と話し合って決めたことを述べる。


「お前らはこれからよく分からない組合を解体することになる」


「そんなのお断りよ!組合全員でやってしまえばあんた達なんか一瞬よ!」


 吠える大賀。それをされると確かに勝てない。しかし、


「俺らが本気を出してるとでも思ったのか?その気になりゃあお前らが束になった所で瞬殺だよ」


「それは本当なのか?」


 危機に陥った様子を一切見せてないため、俺たちの言葉の真偽は見極められないのだ。


「当然だ。そもそも俺たちは全員で来たわけではないしな」


 より恐怖に怯える二人。流石に観念したご様子。


 それでも万が一のことを考えて、


「後は任せた」


 北条に全てを任せた。徹底的にやってくれることだろう。


 そして待つこと一時間。そこには顔は見えないが楽しそうな雰囲気を出す北条と、憔悴しきった可哀そうな方々がいた。


 まあ当然の仕打ちではあるが。


「これで処理終了だよ。今後はああいう悪さはせずにひっそりと一生を過ごしてくれるはずだよ」


「相変わらず何やってるの北条サン」


 怯えたふりをして茶化す七森。


「内緒♡」


 後ろで神田が若干怯えたふりをしていたが気にしない気にしない。


「んじゃ、どっかで着替えてから帰るか」


 俺たちはあの変なコスプレ道具から普段着に着替え、何事もなかったかのように帰っていった。

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