第12話
何かあったのか?そう思いこいつらの視線を追ってみると、見知らぬ男の集団だった。
「ぎゃははは!お前のお陰で楽しい楽しいビリヤードが出来るんだ!しっかり感謝しねえとなあ?」
その内の一人が怯えている男にそう話しかけた。
「お金持ってないです……」
「お金がないわけがないだろうが!今持っているクレジットカードには金がパンパンに詰まっているって知ってるんだぞ?」
「あいつらはなんなんだ?」
俺は一番近くにいた神田に聞いた。
「あいつらか。見ての通り不良だよ。ここらへんで気の弱そうな男を引っ張ってきてはこうやって金を奪い取ってるんだよ」
なるほど。一般的な屑か。
「お前らの事だから早々にそういうのは潰してそうなもんだが」
こいつら普通に強いからな。
「あまりにも数が多いんだよ。今いるのは5人前後だがこの集団は50人を超えてるんだ」
神田は苦々しい表情でそう返した。
「高校もバラバラなお前らなら確かにそれはきついかもな。個々に襲撃されたら詰みか」
「俺たちの高校は別に荒れてるわけでもないし迷惑はかけたくないんだよ」
確かにそうだな。こいつら風貌が若干ヤンキーに寄ってるだけで中身は普通のいい奴らだものな。高校ではクラスの人気者でもやってそうなものだ。
だからこそ止めたいのに止められないのは相当にキツイものだろう。
俺は悠理とアイコンタクトを取り、互いにマスクと帽子を身に着け近づいた。
「ちょっとそこのお兄さんがた。人様の金を奪って楽しむビリヤードは楽しいかい?」
俺がまずは声をかける。
「あ?お前も混ざりたいのか?ただお前らが参加したいのなら金を払ってもらわねえとなあ?おい、こいつらが代わりに払ってくれるってよ」
下品な笑い声とともにそう言ってくるヤンキーA。恐らくこいつがこの中でのナンバー2に当たるのだろう。
「見てて不快だ。失せろ」
悠理は我慢できずにそう言い放った。こいつはっこういうのが本当に嫌いだものな。
「なんだと?架橋組に手を出すってのか?」
さっき神田が言ってた集団は架橋組っていうのか。
「そうだよ。目障りだから潰させてもらう。やるぞ」
俺は悠理に呼びかけ、乱闘が始まった。
2対7だしどうにかなるだろう。
悠理に下っ端は任せて俺は幹部っぽい奴と戦うことにした。
「俺の相手はお前で良いのか?そんな体で俺に勝てるとでも思ってるのか?」
「勿論」
俺と悠理のどちらが強いかという話になると実は俺の方に軍配が上がる。
といっても俺はタイマンに強く悠理は対多人数の方が向いているというだけのことだ。
理由は明白で
「オラッ!!!」
「ひょいっと」
反射神経が尋常じゃなく良いのだ。大体の攻撃は見てから避けられる。
だからこそ一対一なら大体の奴には負けない。
逆に複数人が入り混じった場合はそれがあまり機能せず、時々どうしようもない状況が発生するから弱いのだ。
というわけで顎をワンパンして終了。
その間に悠理も全員倒してしまったようだ。
「大丈夫か?怪我はない?」
俺はヤンキー共に巻き込まれていた男に声をかけた。
「僕は大丈夫です。本当にありがとうございました」
男はお礼を言って去っていった。
「あらら手を出しちゃった」
北条が少し楽しさをにじませた表情で言った。
「顔隠してるし問題ないだろ」
バレなきゃ犯罪じゃねえって言うし今回やったこともバレてなきゃ恐れることは無い。
「まあ二人がそういうなら良いけど。とりあえず気絶している奴ら交番に届けよ」
七森の言う通りに俺たちは近くの交番にヤンキーどもを連行した。
「なんだかんだ言ったが正直なところスカッとしたな」
散々皆が口で文句を言う中、西野がそう言った。
「噂によると近々他の高校の人たちを襲撃して金を得ようとする動きがあるらしいから助かったよ」
「それは誰から聞いたんだ?」
俺は北条に聞いた。
「その近くのヤンキー校の一つの集団だね。お前らの事守ってやるから金払えよって生徒会に直談判に来てた」
「みかじめ料的なやつか」
「そんなもんだな。流石にそこまでくると是が非でも対応しなきゃいけないってタイミングでお前らが久々に来てくれたってわけだ」
西野がすごい笑顔だ。ほんとに嫌だったんだな。
「なるほど。言いたいことは分かった。倒しに行かないとな」
というわけでヤンキー撲滅劇がスタートした。
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