この世で一番嫌いな自慢の彼女
僧侶A
第1話
教室に入るや否や男の前に立ち、堂々と宣言した。
「よくぞ出会った黒須悠里よ!大親友様の九条晴が相手になってやろう!」
固まる大親友黒須悠里。突然の登場に言葉も出ないようだ。
「どうしたよ晴。頭でも狂ったのか?」
「俺の頭は正常に決まってるわ。何言ってんだよてめー」
何がおかしいというのだ。どう見ても正常だろうが。
「そうだな最初から狂ってたなすまん」
「んで、何かいいことあったのか?」
「よく聞いてくれた。ついに彼女が出来たんだよ」
「そうか」
「なんだよその冷たい返しは!大親友の吉報だぞ?」
「お前1か月前まで彼女いたじゃねえか。それに何人目だよ」
「記念すべき20人目だな」
「そんなにいたのに祝うわけねーだろ」
「人数とか関係なく大切な人ができたんだから祝えよ」
「突然正論で殴るのやめろ。おめっとさん。んで今度はどこのどちらさんよ」
全然心がこもってないがいいだろう。
「おはようございます。晴さん」
「ちょうどいいところに。この人が俺の彼女の加賀美千佳だよ」
「お、おう。よろしく。黒須悠里だ」
「こちらこそよろしくお願いします。黒須さん」
「黒須君に九条君、よろしくね!」
加賀美千佳の背後からひょっこり現れたのは小野田環。加賀美千佳の親友らしい。
「よろしく頼む」
「それではまたあとで」
「おう。昼休みな」
そして昼休み。俺たちは屋上に居た。
「どうして俺もここにいるんだ?」
悠里が文句を言う。
「飯を食うためだけど」
何を言ってるんだ?それ以外ないだろうに。
「言い方を変える。何故俺はカップルの飯の時間に巻き込まれているんだ?」
「飯を食うためだけど」
悠里は大きくため息をついた。何がおかしいって言うんだ。
「まあまあ。落ち着いてください黒須さん。早く食べてしまいましょう」
「あんたもそっち側なのかよ……」
「おまたせしました!」
元気良く現れたのは小野田環。学食のパン競争にどうにか勝てたようで大人気のメロンパンを抱えている。
「……なるほどな。俺がここに居るのはそういうことか」
「分かってくれるのなら話が速いですわ。私たちはこれからお付き合いをさせていただくのですが、その中でお互いの友人の方とも仲良くさせていただければと思いまして」
「そういうわけでよろしくね!悠里君!」
「知らないのは俺だけか……」
「言ったら逃げるだろお前」
「分かってるなら呼ぶなよ」
「本当にお二人は仲がよろしいのですね」
「そうだね。大親友だ」
俺はすかさず悠里の肩に手を回す。
しかし嫌そうな顔で手を払われた。
「なんだよ突然気持ちわりぃな。気でも狂ったか?」
「いつだって俺は正気だ」
「私と話す時と雰囲気も口調もかなり違いますね。そんな感じで話してくれてもいいのですよ?」
「流石に出来ないかな。こいつほど雑に扱うなんてできないよ」
「あら残念」
「ぷはっ。美味しかったあ」
やってきてずっと無言だった小野田環が口を開いた。食事に夢中だったようだ。
「環はいつもこうなんです。いざ食べ物を口に入れると食べ終わるまで一切喋らないの」
「悠里君近くで見ると筋肉凄いね!」
「鍛えてるからな」
「流石強い男は違うね!肩車して!」
問答無用で座っている悠里の肩に跨った。
「おい、危ないだろ」
そういうが悠里の支えによってどう見ても安定している。筋肉様は偉大だった。
「じゃあ次は前に進め!発進だ!」
渋々悠里は立ち上がり前に進む。どう見ても親子だ。
数分悠理を乗り回した後満足したようで、悠理から飛び降りた。
「お疲れ様です。黒須さん」
「あいつはいつもこうなのか?」
「そうですね。いつも色んな人に話しかけては振り回しています。まあ、肩車を要求していたのは今回が初めてですが」
「とんだじゃじゃ馬だな。リードしっかりつけとけよ?」
「分かってます。本当に不味い時は止めていますよ」
「俺は安全ってことかい」
「晴さんの親友ですしあの程度で怒る方ではないかと」
「随分と晴さんを信頼しているようで」
「お前は俺が信用ならないってことかい?」
「遠くから見てりゃ信頼出来そうな奴だがなあ⋯⋯」
「それは手厳しい」
「よく分かんないけど悠理は信頼できるよ!優しいし!晴くんはよく分かんないけど千佳の彼氏だからね!」
「随分と懐かれたようですね」
「肩車したかいもあったもんだ。別に懐かれたからといってボーナスなんてないけどな」
「ボーナスはあるよ!私の家に招待します!」
「ボーナスあったな」
「ついでに皆も来てよ」
「せっかくだしテスト勉強もしませんか?」
「勉強かあ…… めんどくさいなあ。遊ぶだけにしない?」
「テスト近いんだしやるしかないだろ」
「悠理くん見た目悪そうなのに真面目だ……」
「悪かったな悪人面でよ」
小野田環の家に訪問することが決定した。
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