夢精スキルで高校デビューに成功し無双、しかしマグナムは殺人兵器と化す
みそカツぱん
受験失敗と高校デビュー
1「下半身が気になる系男子」
『スキルレベルが上がりました、おめでとうございます。レベル2のスキル、精力大増強。これからは毎日夢精することが可能になりました』
「…………」
僕のスキルは『夢精成長』。
一時は僕もスキルに希望を抱いていたのだけどこの瞬間、僕のスキルは外れスキルだと確信した。
スキルの特性上、朝目覚めてからレベルアップの声が頭に響く。カーテンから漏れる陽の光に鳥の声、それとは反対に濡れたパンツは非常に不快だった。パンツにはトイレットペーパーを挟んでいたがそれがズレていた。最近アレが大きくなったせいかズレることが多い。これから毎日夢精すると言われたし何か考えないと。
僕は最悪の気分のままパンツとパジャマのズボンを洗う。何度やってもこの瞬間の悲しさは慣れない。
「夢精野郎ぉ~近づくなぁ~」
「歩夢くぅ~ん、今日オナ禁何日目ぇ~?」
「あれぇ~よく見たらボッキしてんじゃ~ん」
「「ぎゃはははっ」」
「……」
僕はストレスを感じると勃起しやすい。イジメの原因は僕の軽はずみな言葉がきっかけだった。僕は精通つまり初めて射精したときスキルに目覚めた。少年らしくスキルに憧れを持っていた当時の僕はそのことを友達に話した。
それはさぞ面白かったのだろう。聞きなれない言葉にその意味は思春期の男子にとって絶好のおもちゃだったことだろう。中学3年の今でも飽きることなく僕のことをからかうやつらが一定数いるほどだ。それがエスカレートしたせいか『あの事件』が起きた。
「うるさいぞ!!」
「はーい、すいませーん」
「まったく、お前ら早く座れー」
教師も教師だ。あの事件のこともあって手を出されたら即対処する、と約束をしたがそれだけだった。放課中に少し言われるくらいなら無視して相手が飽きるのを待てとのことだ。人の意識を変えるのは難しいと教師様はお考えだそうだ。
ダンジョン、モンスター、スキルという超人的な力、そのせいで世界の常識が変わってしまった。例えば教師の体罰を認めることもそのひとつ。力を持つ者を止める手段は暴力を用いるしかない。それでも大人をナメる生徒は一定数いるようだ、そうでなければ僕の耳に蝿の音は聞こえないだろう。
授業が終わり、数少ない友人の智樹に僕は話し掛ける。智樹は友人だが助けを求めない、そんなことをすれば彼がイジメの標的になるからだ。何度も彼にそのことについて謝られたが僕はまともに喋れる友人がいるだけでありがたかった。
「あーあ、嫌になるよ」
「そうだね。でもあと少しだよ」
「ああ、高校はスキルなんて関係ないところに行くんだからな」
僕は才能がない側の人間だ。才能がある人間は早熟型が大半だそうで下手をすると中学生卒業と同時に一流のハンターとして迎え入れられる人間もいるそうだ。
「それにしてもある日突然、人間がスキルに目覚めたなんて不思議な話だよな」
「ダンジョンもな。裏にいるのが神か悪魔かなんて学校で教える日がくるなんて昔の人は思いもしなかっただろ?」
現在、世界では優秀なハンターの育成は重要視されている。その理由は前触れなく現れるダンジョンの存在だ。ダンジョンは放置すれば地上は大量のモンスターで溢れかえる。そのモンスターに現代兵器は効果が薄く、今のところハンターが前線に出るしか打つ手がない。
全国の中学校ではスキル学というスキルに関する人類の発見の歴史、様々なスキルの活用例を学んでいる。戦う以外にもスキルを役立てて職業にする人間がいるのが現代の常識だ。
「僕が受験する高校にはスキル学なんてものはないんだけどね」
才能がない人間はスキルなど関係のない職業に進むしかない。幸いなことに僕はそこそこの頭はある、そのおかげで命をかける仕事以外を選ぶことができる。逆に才能がありすぎると強制的に国が管理するハンターチームに入ることになること思えば僕は幸運なのかもしれない。
僕のスキルはデータにないレアスキルだ。とはいえ先生の定期的な聞き取りと簡単な測定をするだけ。
よく知られる名前のスキルでも才能の差が生まれることはよく知られる。才能とは成長速度と成長限界のことだ。データにない名前のスキルは実はそこまで珍しくなく、注目を集めることはなかった。
* * * *
「受験失敗したぁーーーーーーー!!?」
そんな!滑り止めも不合格してるだって!?
すべての高校に問い合わせたが間違いではないそうだ。僕は親にこのことを話すことを考えて頭を抱えた。
「はぁ!?全部不合格ってあんた……」
「ごめん、だけど全力を出したんだ。名前も何回も確認したし」
「……でも高校は行かないといけないのよねぇ」
「二次募集があるからそれを受けるよ」
「今度はちゃんと合格するところを受けるんだよ」
「……わかった」
二次募集には合格した。妥協に妥協を重ね、家から40分で通える偏差値もそこそこのところに合格することができた。
「どうしてこうなった……」
しかしこの学校にはハンター科があり、普通科でもダンジョン探索の授業がある。学校の説明では、僕みたいな外れスキルの人間でも危険がないように探索をする、と言われたのだけど不安しかない。
「合格したのになにを文句言ってるんだ?」
「そうよ。お父さんが言うように入る前から文句を言うんじゃないわ」
「ダ、ダンジョン探索なんて危険だろ?」
「大丈夫だ。教育機関なんだお前がバカなことをしない限り安全だ」
「そうよ。ちょっとモンスターを倒して男らしさを磨いてきたら?」
「…………」
他人事だと思って!それに男らしさだって?確かに僕は身長が160センチの割にヒョロってしてるから頼りなく見えるだろう。だけどモンスターを殺すような野蛮さが男らしいとは思えないよ。
母さんは昔から適当なことを言うし、父さんは僕の話なんて聞いてないように説教をする。もうこんな人生嫌だ。そんなことを思いながら高校入学まであと数日となった。
『スキルレベルが上がりました』
「げっ!!?」
とうとうこの時が来てしまった。嫌な予感しかしない……
『精力大増強』のスキルを得て以降、本当に毎朝夢精をしていた。その量はいままでの1.3倍ほど。朝起きた時、頭がボーっとするようになった。多分受験に失敗したのはこれが原因だろう。
『おめでとうございます。レベル3のスキル、成長促進。身体的成長を促進します』
「あっ、はい」
思ったよりもまともなスキルなのかもしれない。つい5分間黙って『ただし成長するのは身体の一部だけです』と言われないかビクビクしてしまった。
最近ストレスを感じることばかりだ。イジメられていた中学生活の方が幾分かマシかもしれない。真面目な話を親とするときに限って勃起するし、いくらオナニーしても夢精する。
今度こそはスキルが当たりなことを祈るしかない。
* * * *
「……あんたどうしたのよ?」
「えーと成長期かな?」
入学式のため僕は新しい制服に着替えた。少しだけ大きめに用意した制服は逆に丈が短くなっていた。
「なんでそんな短い間に伸びるのよ!?」
「そんなこと言われても」
母の嘆きはごもっともである。僕の身長は175センチに迫るほど伸びていたのだ。もしかするとこれ以上伸びるかもとはなかなか言い出せない。
下半身の一部も急成長していたのは親には絶対に秘密にしたい。
「あーもうこんな時間!お母さん化粧しないといけないから先行ってて」
「うん、行ってきます」
僕は自転車と電車を乗り継いで高校へ向かう、いい出会いがあるといいな。特になにもなく入学式は終わり、クラス発表の紙が掲示されていた。
「げっ!なんで杉本がここに!?」
同性同名の偶然じゃなかったら同じ中学の杉本だ。あいつはスキルを自慢するやつらと一緒に僕をイジメていた奴らのひとりだ。どうしよう……僕はムキになって相手を追い返してこなかったから言葉に自信がない。勃起してきた。仕方がない、あいつが絡んで来たら無言で睨んでやろう。
教室に入り、自分の席に座っていると心配していた通り杉本が入ってきた。杉本は僕に気が付いたのかニヤニヤしながら近づいてくる。
「おい、歩夢!高校でも可愛がってやるから覚悟しろよ?」
「……」
僕は勢いよく席から立ち上がり無言で杉本を見つめた。その空気を察したのか教室が静まりかえった。
「……」
「ひっ!?」
僕は杉本のことが嫌いだ。こいつを見ていると理不尽に僕をバカにされたことを思い出し目に力がこもる。ついでに僕のち〇こも力が入る。
以前と違うのは僕が杉本を見下ろす形でこいつを睨んでいることだ。なんといっても今の僕の身長は175センチ近く、身長が15センチ高い人間にこんな距離で睨まれ続けるのは耐えられなかった。杉本は逃げるように席に戻った。
あ~すっきりした。スキルが初めて役に立ったよ。
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