第37話 情報源
「ふむ……もう観光はいいな」
王都観光は2日ほどで満足してしまう。
言う程みたいと思えるスポットが無かったからだ。
町並みだって、別に『おお!』とか思う程でもなかったし。
「剣ばっか振ってた弊害かねぇ」
直ぐに飽きてしまったのは、子供の頃から訓練ばかりしていたせいで、感受性に難がある為だと思われる。
まあ生まれつきの可能性もあるけど。
「まあなんか仕事を受けるか」
訓練か仕事か。
迷った末に俺は仕事を選んだ。
という訳で、俺はギルドへと向かう。
「ああ、いい所に来てくれました」
ギルドに付くと、ギルドマスターのヤングと鉢合わせる。
「ちょうどあなたへの仕事が入って来たので、お呼びしようと思っていた所です」
「そりゃまた……随分と早いですね」
金級テスト用の依頼は他の試験者との兼ね合いで、そうポンポン受けられないと説明されていた。
あれから3日しか経ってないので、相当早く回ってきたと言えるだろう。
「ええ、いい感じの依頼が入ってきましたので。都合が悪いようでしたら次の機会にまわさせて頂きますが」
「ああ、いえ。正直、暇を持て余してたんで助かります」
「そうですか。では、こちらに――」
ギルドマスターの執務室に案内される。
「貴方に請け負って貰う依頼なのですが、依頼主の護衛を請け負って頂きます」
「護衛ですか?」
テストになるくらいだ。
簡単な護衛ではない筈である。
「ええ。王都の北東、二日ほどの距離に沼地があるのですが、そことの行き来を貴方に護衛して頂く事になります」
「沼地の往復ですか?参考までに、依頼主が何の目的でそこに向かわれるのかお伺いしても?」
「依頼主の目的は、沼で咲く
満月花。
聞いた事のない名だな。
「ちょうど三日後が満月になりますので、明日出発して頂く形になります」
「分かりました。所で……その満月花の採集を護衛する依頼は、今回が初ですか?そうでないのなら、以前の請け負った際の記録や情報などあると助かるのですが」
以前も請け負った依頼なら、何らかの情報があるはずだ。
そう思い、俺はヤングに尋ねた。
「それを試験官である私に尋ねるんですか?」
「確かにヤングさんは試験官かもしれませんが、その本質はギルドマスターです。情報を持っているギルドマスターに確認するのは、おかしい事ではありませんよね?」
今回は試験官だというだけで、普段はギルドマスターだ。
ギルド員が仕事の遂行のために情報を訪ねたり相談したりするのは、別段おかしい事でも何でもない。
冒険者として出来る情報収集の範囲である以上、不都合はないはずだ。
まあ、試験官になるから、それ以外でも金級冒険者は彼を情報源にするのは駄目、なんて良く分からない謎のルールがあるなら話は変わって来るが。
「そこに気づくとは、なかなか鋭い方ですね。たいていの場合、私が試験官という事で、情報収集を皆さん避けるんですが」
ズルは俺の得意分野だからな。
いやまあ、今回に関してはズルでも何でもないが。
単に盲点、もしくは心理的穴を単に避けただけだし。
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