地獄絵図

海鮮かまぼこ

地獄絵図

くそっ…何でこんな目に…友人に頼まれて来た合コンは惨状を呈していた。レストランの隅っこの机を挟んで向かい合う3対3の男女。うち男たちは絶望していた。あまり言いたくはないが、女は3人ともブサイク。女の露骨なまでの胸アピール、「さすがー」「知らなかった」「すごーい」「センスある」「そうなんだ」通称「合コンのさしすせそ」を連呼するbotと化した女の攻撃を流すこと数分、女1が友人に猫なで声で詰めてきた。正直吐きそう。

「そういえばー、皆さんってぇ、収入はおいくらなのぉ?」

困った。我々はこの問にどう答えればいいのか。今でこそオシャレしているが昔は女とは関わってこなかった。だから今、一流企業に勤めていられるのだが、いかんせん女との会話はどうすればいいのか分からない。こうなったら道は1つだけだ。まずは机の下でこっそりメッセージを打って友人2人に送信する。確認したのが分かったら次、さりげなく平静を装いつつ、自然なタイミングで男3人、トイレに向かう。そしたら声を潜めてどうするかを協議する。鯖を読むのか?正直に言うのか?低く言うのか?低く言えばカス女は寄って来ないが、いい女も逃すのではないか?正直に言えばカス女が寄って来るが、いい女も寄って来るのではないか?いや、金で釣られるなんていい女じゃなくね?そういうフリしてるだけで実はいい女とかもあるんじゃないか?そこからは1人の世界に入り込んでしまった。そもそもいい女とはなんだ?顔か?性格か?技術か?スタイルか?精神力か?物理的な力か?全てを備える人はいない。では、何が必要なのだ?何が女をいい女たらしめるのだ?どの要素だというのだ?くっそ分からん。いや待て、要素は求める者によって異なり、人により「いい女」は「ただの女」にもなりうる。そういう事なのか?それがこの終わりの無い問いかけへの答えなのか?ならば、こんなところで金しか見ない女の話を聞く必要など無い。ふと気が付き、友の顔を見ると、2人とも晴れやかな顔をしていた。きっと、僕と同じ事を考えている。

もう、帰ろう。僕らにとってのいい女を探そう。

席に戻ると、

「代金置いとくんで、僕ら帰ります」

と言い、さっさと店を出た。夜風が気持ちいい。僕らの恋はここからだ。いい人探そう。

そして僕らはずっと1人で生き、1人で死んだ。

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