8.変数少女猫屋敷✗をよろしくお願いします!
「新学期ってどうしてこんなに憂鬱なんだろう。」
「勉強したくないからでしょ。」
千重の呟きに対して、さとりは辛辣である。
「ねぇ、さとり、私、イマイチ良く解かんなかったんだけど、結局彼女の能力ってどういうことなの?」
さとりの辛辣さも、千重には効果が無い。
「彼女は確率を操作する、というか選択することが出来るの。元々は見ることしか出来なかった見たいだけど。」
さとりの簡潔な説明に千重は納得が行かない。
「実は、私もその説明だけじゃ良く解らないです。」
いつの間にか二人の席の側に、イロハが立って居た。
「おはようイロハちゃん、教室に来るなんてめずらしいね。」
「新学期ですから、それに今日からなので。」
「確率だけを考えるなら、今教室にいる千重は同時に月面に存在することも出来る。単に濃度が違うだけなの。」
千重とイロハの会話をさとりは無視する。
「瞬間移動出来るってことですか?」
「それで結局どういうことなの?」
二人の疑問にさとりはため息をつく。
「だから、確率だけなら重力を操る彼女も、残留思念を見る彼女も、色を塗り替える彼女も同時に存在出来る。そして存在する可能性の有る事象の中から自由に選択することが出来る。他人の可能性まで見れるのは副次的なものだけど、パラレルワールド見たいなものよ。」
「ふーん。」
「なるほどです。』
さとりの早口な説明は、結局の所、無駄の様だ。
「まぁそれよりさ、さとりは知ってるんでしょ、彼女の本当の名前。教えてよ。」
「彼女がアレで良いって言ってるんだから良いじゃない。それに、遡及少女には人のことを無闇に話さない倫理観が必要なのよ。」
「気に入ってるなら良いんだけどさ、なんか、適当に呼んだだけなのに申し訳無くて。それより、なにその遡及少女って、自分で少女って言う?」
「あなたは重力少女らしいわよ、単純明解で良かったわね。それよりもおかしいのは苗字の方よ、アレは嫌がらせだわ。」
「さとりが猫の話したらしいじゃん、良かったね。それに単純が一番良いでしょ、さとりの話は難しくて解かんない。」
「可愛くて良い名前ですよね。ちなみに、私のことは何て?」
イロハは二人の言い争いを全く気にしていない。
「彩色少女。」
「何か、塗り絵してる子供見たいで恥ずかしいですね。」
「さいしょく?菜食?それってどんな字?」
重力少女には文字までは伝わらなかったようだ。
その時、教室の扉を開けて先生が入って来た。そしてその後ろには、一人の少女が居た。
「はい、席について。そこの少女三人も。」
友達とだべっていた生徒たちも、それぞれ自分の席に付く。
「ホームルームを始める前にお話があります。もう何人か、知っている子もいると思いますが、新学期からこのクラスに転校生が入ることになりました。」
そう言うと先生は側に立つ少女を促す。
「じゃあ、とりあえず名前だけでも良いから、自己紹介して。」
そう言われた少女は、他の三人の少女に目配せして一歩前に出る。
変数少女、猫屋敷ペケです。よろしくお願いします。」
少女Xを定義しなさい。 モリアミ @moriami
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