銃士達の邂逅 p.7

 開戦の幕は唐突に上がった。


 アメーバ型の獣はハリネズミが如く、液体状の体表を棘へ変形させ、無数の棘がシャムとリーエンを襲う。


「リーエン!」

「あぁ」


 二人は肩を並べ、各々の銃で降り注ぐ棘を撃ち落とす。

 攻撃が無意味とすぐに判断し、アメーバ型が動きを止めた。


「あいつの目を欺くぞ」


 隣に立つリーエンがそう言い、シャムは頷く。

 リーエンは団服の袖から小さな球体を取り出すと、それを地面に叩きつけた。


 破裂音が響くと同時、シャムとリーエンを包み込んで黒煙が舞う。


 アメーバ型は二人が煙に隠れたことで警戒態勢に入り、液体の一部を触手に変形させ、様子を伺う。


 黒煙の中から最初に飛び出したのはリーエンだった。

 アメーバ型は再び身体の一部を棘状に変形させ、走り回るリーエンと交戦を開始。


 リーエンは小柄な体躯を活かして攻撃が当たる範囲を縮め、棘が一つ飛来するとそれを躱して二発の弾丸を相手に返す。


 弾丸はアメーバ型の身体に命中するも、弾丸が液体に侵入した途端、それは溶解し攻撃が無力化される。 


 互いが弾丸と棘を飛ばし合い、攻撃の応酬は徐々に激化していった。

 アメーバ型は攻撃する毎に身に纏う液体を消費し、体積は徐々に小さくなっていく。


 だが、その分攻撃の量は増しリーエンを追い込んでいく。

 攻撃の波を先に止めたのはリーエンだった。

 弾丸を撃ちつくし、銃からマガジンが飛び出る。


「くっ!」


 飛来する敵の攻撃をギリギリで躱すも、思わず後ずさりしたリーエンにアメーバ型は追い打ちを掛け、体表の液体を一気に消化し棘の量を増やした。


「今だシャム! あいつのコアを!」

「おっけー!」


 叫び、煙の中で待機していたシャムが飛び出る。


 アメーバ型は残り少ない液体を使い、すぐにシャムへ棘を飛ばすが、身体能力が誰よりも高いシャムには通じない。


 シャムはその柔らかい身体を駆使し、体操選手さながらの身体捌きでアメーバ型の猛攻を回避、接近していく。


「ここぉ!」


 最後に放たれた棘をジャンプで飛び越え、アメーバ型の頭上へ飛んだシャムは、銃口がアメーバ型に触れる距離で発砲。


 コアを守っていた液体のほとんどが攻撃で消費され、ほぼゼロ距離で撃たれた弾丸は溶解される前に獣のコアを撃ち抜いた。


 パシャリと液体が弾け、リーエンを襲っていた棘も空中でその勢いを無くして地面にぶちまけられる。


「よし!」


 シャムは目の前に転がる獣のコアが動かないのを確認するとリーエンへ手を振る。


「やったよリーエン! 討伐成功!」


 陽気に飛び跳ねるが、リーエンは地面に広がる液体に視線を落としてシャムを見ようとしない。


「ん? リーエンどうしたの?」


 リーエンが未だ警戒を解いていない様子に気づき、シャムはコアを放ってリーエンの傍に駆けようとする。


 すると、リーエンが何かに気づき、がばりと顔を上げる。


「シャム、避けろ!」

「え?」


 リーエンの声も空しく、事は一瞬の間に起きた。

 シャムを囲むように地面に広がった液体が再び動き出すと、形状が巨大な針に変形。

 針は容赦なくシャムの身体を四方八方から刺し貫いた。


「――っぐ、ハッ!」


 泥のような血を吐き出し、シャムは驚くリーエンから後ろのコアへ振り向く。

 さきほど撃ち抜いたはずの獣の頭は既に再生を終え、ニヤリと笑顔を浮かべていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る