第11話

 数日間、彼女と一緒にいて。彼女と過ごして。気付いたことがある。

 セックスの前に、訊いてみた。


「ねえ」


「ん」


「えっちなことを考えると、喋れなくなるでしょ?」


「う」


 彼女の無地の服を、脱がそうとする。

 しかし。

 彼女が自力で脱ぐほうが、どうしても速い。結果的に、彼女の脱け殻となった無地の服を掴んでいるだけになる。


「喋ってみてよ」


「あ」


 喋ってみてよという問いに対して、あ、としか答えないあたりが彼女らしい。


「じゃ、これは?」


 からだにさわりながら、訊いてみる。


「い」


 喋れる。

 徐々に、からだのそれっぽいところに手を移動させていく。


「う」


 その、う、は喘ぎなのか声なのか。判別しにくい。


「これは?」


「ふ」


 ふ。

 あ、い、うと来て、ふ。

 ふ、が彼女の最後の喋りになった。以降は声がでない。そして、セックスした。

 セックスの後の彼女は、しばらく声がでない。


「ひとりでしてたから、ときどき学校では声がでなかったんだ?」


 彼女。

 顔を真っ紅にしつつ、笑顔で頷く。


「トマトジュースの一件からは、もうずっとえっちなことばっかり考えてたから声がでなかったの?」


 彼女。顔を真っ紅にして、頷きながら、覆い被さってくる。

 くるっと身体を回して、彼女を下にした。

 セックスのときは、自分が、彼女に乗っかる。


「上に乗ってきたのも、えっちな気分だったから?」


 彼女。首を横に降った。笑顔じゃないので、これは嘘。


「ほんとに?」


 彼女。何回か喘いで、その後。

 顔を真っ紅っ紅にして、頷く。

 そしてセックスが始まる。

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