一滴 奏が戦士長であった頃、突如暗黒心が、襲って来た。

丁度今から、1年前の事だ。

儂達は、天空の城に住んでいた。

城下町は栄えておった。

天界は、特殊な雲の上にある。

ガレア鉱石が、糸状に固まって、雲として空を飛んでいるのだ。

雲の上に、家々が立って居る。天空城は雲の上の城である。

 城下街の更に南には、下町が続いている。

 最南端には、かつて、住んでいたとされる、何者かの遺跡がある。

 考古学者も頭を悩ませる遺跡だ。

 私は、遺跡から魔術と、降魔術を学び、会得した。

 一年程前 天元暦 2520年 9月。

 奴等が、天界に姿を現した。

 私達は、それ の事を、闇に軍団と呼んだ。

 天空城の、近辺で、突然、酷い揺れがあった。

 空間に黒い穴が空いてゐた。見た事もない自然災害だと思っていた。

 儂は、黒い空間の穴に直ぐに向かった。

 天空城の、庭の上に黒い空間は出来ていた。

 しばらくすると、空間から、奇妙な黒い物体が、流れ出て来た。

 「黒い、液体か。」

 付いて来た近衛兵のもの達は、慄き、警戒していた、異様な雰囲気が辺りに漂っていた。

 「得体の知れない、危険が感じられる。」

 黒い液体は動き出した。 

 「動いてるぞ。」

 兵の一人が、小さな声で叫んだ。

 黒い物体は、形を変え、人型となった。

 「うん。天界の空気は澄んでいていいねえ。うふふ。」

 黒い人型の物体は、近衛兵のものを見つけると、深々と会釈した。

 「ああ、此れはどうも。暗黒心です。今日から、この土地は、私達の土地です。大変申し訳ございませんが、死んで貰います。さようなら。」

 黒い空間から、次々と、液体が流れ出て、形を変え人の形になっていく。

 「さようなら。」

 近衛兵たちが、次から次へと斃れて死んでいった。

 速すぎて攻撃が見えない。

 儂は、焦った。

 全滅だ。

 戦士団が、来てくれ迄の間、食い止める必要があった。

 降魔の儀式を済ませ、魔法陣から、魔物を召喚した。

 「降魔 真竜。」

 銀色に輝く鱗を持つ、竜が空から飛んで来る。

 予め、組んでおいた魔法陣から、召喚された、竜が飛んできたのだ。

 「ほう、降魔術を使えるとはな。」

 暗黒心は、感心した様子で言った。

 召喚魔法は、遺跡で、解読した魔導書により、会得したものである、どうやら、暗黒心は、遺跡の事を、古代文明の何かを知っているらしい。

 「さあ、来るがよい。直々に相手をしてやろう。」

 暗黒心は、不敵に笑った。

 この世界には、五つの魔法系統がある。

 焔、水、雷、風、土である。

 其々の系統魔法は、四段階に分けられ、第四級魔法は、、天変地異を起こす。

 遺跡の碑文を解読し、知った事だ。

 魔導書を読んで、第三級魔法迄は、使えるようになった。

 一部の才あるものにしか使えないと、いう、降魔法を使う事も可能だった。

 私は、五つの魔導を組み合わせる事で独自の魔法が作れる事を発見した。

 「ふふふ。こんな魔法を知っているか。炎獄、水池、稲妻、土畑、台風・・・。」

 私は、第三級魔法をそれぞれ唱えていく、そして、

 「五つの魔法を一つに集約すると、どうなるか。」

 破壊魔導だ。

 「天災ボール。」

 指先に、集まった、小さな、球状のエネルギー体。虹色に輝いている。

 「此奴でも喰らって死にな。」

 暗黒心は、たいそう、感心した様子で、拍手した。

 「いや、お見事。此処まで出来る、鳥人が居たとは、びっくりだよ。」

ぱちぱちパチパチパチ。

 拍手をしている。

 舐めているのであろうか。

 儂は、天災ボールをお見舞してやったが、

 「なっ。」

 無傷で、笑ってゐた。拍手を続けている。

 「あたしに、魔法は無意味ですよ。なんていったって、魔法のエネルギーは、私を透過するのですから。」

 何だ。此奴。

 魔法を喰ったのか。

 真竜に乗り、攻撃するが、暗黒心は、全ての攻撃を受け流した。

 「真竜ですか、物騒な竜ですね。邪魔です、消えて貰いましょう。」

 暗黒心は、軽く真竜に触れると、竜は消えた。

 「え。」

 何処へ消えたのか。

 「空間飛ばし 滅空移。」

 っく。

 絶望かと思われたその時、空から、戦士たちが、舞い降りて来た。空を飛ぶ、鳥族の戦士団だ。

 「来たか。奏。」

 地上へ降りた戦士団は、暗黒心を睨みつけた。

 「いやあ、こわいねえ。そんな目で睨みつけないでくれるかなあ。」

 暗黒心は、極めて軽薄な態度で、言った。

 五人の精鋭部隊だ。

 鳥人の中で、最も強いとされている、大将だ。

 一滴 奏

 出雲 雪永

 虹七 洋太

 街道 珠樹

 七峰 薫

 奏が、戦士長である。

 雪永は、ガタイのいい、男で、髪が短い。筋肉質な、男だ。

 洋太は、小柄な男で、レイピアを使って戦う。緑髪の男だ。

 珠樹は、鋼の包帯使いの女だ。素手で戦う。金髪だ。

 薫は、銃使いだ。黒髪ショートだ。

 「どうなっているんだ。」

 一滴 奏に、起こった事を話した。奏は、起こった出来事を理解し、身体強化纏をした。

 纏とは、己の身体能力を底上げする、術式である。

 纏は、厳しい鍛錬の末に獲得出来る、生き物の身体能力を超える技である。

 古より、伝わる鳥族の叡智であり、技である。

 「閃脚。」 

 奏は、光の速さで、高速移動し、暗黒心の前に移動する、見えない。

 「波動挙。」

 空間を振動させ、あらゆるものを粉々する、打撃技だ。

 暗黒心の身体が、ふっとんで、辺りの家々を貫通し、飛んでいった。

 次々に現れる、黒い液体が、人型になった、暗黒心を、破壊し、消滅させていく。

 しかし、一向に数が減らないのであった。

 「っち。キリがねえ。」

 雪永は、数の多さに悪態をついた。

 一時間程、多々かい続けて漸く、絶滅させたかと思われた時、最初に奏が、ふっとばした、暗黒心が、空間の穴から、出て来て、言った。

 「ふむふむ。やはり、腐っても鳥人の戦士の血を受け継いでいるというわけか。厄介だなあ。ううむ。仕方がない。この町ごと破壊でもするか。」

 街ごと、破壊だと。出来る筈がない。

 「破壊風 衝破。」

 暗黒心の身体の周りに、紫色のオーラがくるくると、風を立てて回り始めた。

 何をする気だ。

 儂は、警戒心を強め、暗黒心の動きを封じる為に、結界を張った。

 珠樹の奴が、包帯で、暗黒心を結界の上から、囲む。

 しかし、暗黒心の衝破は、凄まじいものであった。

 ごゴゴゴゴゴゴ。

 ヒュウうううう。

 儂は何が起きたのか認識できなかった。

 五人の戦士は血だらけで、突っ立ている。

 「ほう。あの攻撃を身をもって防ぐとは、度胸のある事だ。」

 奏は、結界術 五の型だと言った。

 封印魔術だ。

 儂は、目一杯の魔力を込めて念じた。

 魔道が使える、珠樹と、洋太と儂で、連携して、一つの魔導を完成させていく。

 「後、十秒耐えてくれ。」

 奏と、雪永、薫は、必死の戦いで、暗黒心の攻撃を遮っている。

 「よし、出来た。行くぞ。魔結界 絶。」

 暗黒心の周囲に包帯が巻かれていく、包帯を刃が突き刺していく、球体状に巻かれた包帯が、鋼鉄に変化する、更に鋼鉄は、色を変え、真っ黒になる、上から、結界が被せられる。

 「持って、何分程だろうか。」

 儂は、頭を悩ませた。

 兎に角、住民を避難させるのが、優先だ。

 「避難警報をだし、すぐさま天界中部の、第二拠点に、住民を逃すのだ。」

 黒い空間から、は相変わらず次々と、黒い液体が流れてくる。

 「本体を倒さなければ、永遠と、雑魚が沸いてきやがる。」

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