十二種族伝説。キャラクター達は別の世界から異能やら魔法やら高度な科学技術のあるワンダーランドへやって来て旅をして、味方に出会い、魔物、怪物を倒し、世界の秘密真相に迫り、ボスを倒します。

無常アイ情

時風 来と湊川 翔

結果から、言って、惨敗だった。

 私が、何者であるのか。其れを探す事が、目的の一つでも、あった。

 あの世界に、置いての、私は、夢の果てに、輪廻転生のやり直しの夢を見た、儚い少年だった。

 別の世界では、宇宙人の夢を見た。

 海底遺跡の、幻想を見た。

 科学の夢を見て、魔術の幻想を見た。

 終わりが、無い夢を見た事も、あった。続き、が、未だ、残っている、夢。

 探偵になった夢。

 シャボン玉の、行方。

 はじまりが、あれば、終わりが、ある、のは、この世の理だ。

 

 「異世界なんて、この現実の事さ。」

 時風 来(ときかぜ らい)は、異世界など、人間の造り出した、幻想でしか、無いのだと、其れ等の世界を、作った、神様気取りの、人間を、嘲笑った。

 「小説の、世界じゃあ、随分、偉くなったもんだなあ。現実じゃあ、ひ弱な、子猫ちゃんの癖によおお。」

 湊川 翔だ。

 この世界で、あれ、何処の世界で、あれ、存在する。光の様な、存在だ。

 人気者。其れが、湊川 翔。

 「君みたいな、低俗な、男に、僕の、作品の何が解るんだ。」

 「きめえんだよ。」

 彼は、そう言って、僕の原稿を破り捨てた。

 まるで、子供だ。

 彼は、僕に、だけ、意地悪をする。僕の事が、好きなのだろうか。男の子は、好きな子に、意地悪をすると、言う。ま、女の子にも、言えた事だが。

 「ありがとう。こんな作品じゃ、駄目だったんだ。此れで、決心が、ついたよ。書き直そう。」

 翔は、異質なもの、でも、見るような、目で、見て来た。

 「どうして、怒らないんだよ。」

 翔は、狼狽えていた、自分には、ない、もの、を持つ、私を見て、脅えていた。

 

 あの、男が、気に喰わない。

 女の子の様な、男だ。

 綺麗な、肌をした、髪が、長く、さらさらな、目大きい、二重瞼の男だ。そして、頭の、おかしい、男だ。

 あの男は、私には、ない、精神性の高さを持っている。

 あの男を見ていると、自分が、惨めに思えてくる。人生を達観したような、男だ。だから、苛めてやった。

 あの、男を、のさばらせない為に、世界から、嫌われるように、俺は、あの男の評判を下げるような、事をし続けてきた。

 其れは、物心ついた時から、始まった事だ。

 はじめて、あの男と、出会った、幼稚園の頃から、今までずっとだ。

 高校一年生になった、今日、私は、あの男の通う高校で、あの男を、苛めた。

 クラス、学年を牛耳った私は、あの男を徹底的に、潰した。二度と這い上がれないように。

 其れなのに、全身痣だらけに、なった、あの男は、笑っていた。笑って、言うのだ。

 

ありがとう。見ててくれたんだね。

 殴ってくれてありがとう。

 苛めてくれてありがとう。

 僕は、君が大好きだよ。

 

 おかしな、奴だった。

 何時しか、彼奴を苛めるのが、私の日課になっていた。

 其れが、楽しかったのだ。楽しかった、それ以上の、居心地の良ささえ、感じていたのかも知れない。

 私は、彼奴なし、では、生きて行けない。

 あいつが、私の負の感情を唯一受け止められる、男なのだから。

 

 破り捨てられた、原稿用紙を見て、僕は、項垂れた。

 最悪だ。何時か、この男を殺してやる。

 学校の、誰も居ない、裏庭での事だ。。

 僕に勝ち目は、無い。この男は、卑怯で、狡猾で、姑息だ。

 だから、僕は、此奴に、身体を売った。

 この男は、私を、苛めて、興奮して、逝ってしまった。

 速い男だ。それに、味の無い男だ。

 男が、余韻に、浸っている間に、逃げた。

 もう、厭だ。

 こんな生活耐えられない。

 僕は、部屋で、泣いていた。

 僕の身体は、穢されている。

 シャワーを浴びて、祈った。

 「いい事が、ありますように。」

 思わず、涙が、零れた、後に、笑った。

 何だか、不幸が空回りして、笑いが、込み上げてくる。

 いつもだったら、この後、空想に逃げ込んで、小説という、名の異世界に。ネットという名の異世界に、ゲームという名の異世界に、勉強という名の異世界に、飛び込んで、僕は、自分を慰めるのだが、どうして、訳か、この日は、復讐心に、燃えていた

 

 考えて居る事が、妄想で、終われば、と思う事がある。どうして、人は、妄想や、空想では我慢できずに、其れを、現実の世界で、行ってしまうのだろうか。

 そう。

 望んでいるだけで、幸せだったのに。

 理想を追い求めた結果が、絶望なのは、余りにも、皮肉な、ものだ。

 復讐は彼にとって必要ではなかった。それなのにどうして、復讐をするのか。理由は妄想と、空想にもう飽き飽きしていたからだ。空っぽな空想の世界で死んでいる、ずっと前から死んでいたのだ。

 「必死に、全力で生きるという事は、死にに行くという事だ。」

 花凛さんは、死んだ。

 生き急いだのだ。

 世界を旅する。

 と言ったきり、帰っては来なかった。

 ずっと、故郷に残っておけば、生きていられたのだろう、空想だけでは我慢できなかったのである。

 世界は、危険だ。

 インターネットの中で、見聞きする世界は、現実とは、違った。

 世界は、文章や、写真、動画では、体験しきれない、経験の連続で出来ていた。情報量の違いだ、ポリゴンの違いだ、其処には、生の体感があった。

 「抽象化してしまった、情報じゃ、分からない事も、あるさ。」

 若い男は、生きていた、目がいきいきと、している。

 死んだ目をしている、抽象化と、インターネットの、文字列と、写真、動画に囚われている、私とは、違った。

 「社交辞令、なんて、バカバカしいさ。自由ってのは、こういう事さ。」

 若い男は、そういって、両手を広げて見せた。

 「私の世界だ。私が、生きる世界だ。」

 男は、叫んだ。

 どうして、叫ぶ必要が、あるのか、僕には、到底理解できなかった。

 「うああああああああああああああああああああああ!!!!!。」

 叫んだ。

 思いっきり笑った。

 男は、寝転がった。

 その後、急に、暗くなった。

 男から、光が、消えた。

 如何したのだろう。

 まるで、死人のようだ。

 「老人は、とっとと、死ねばいい。」

 男は、枝を折った。

 先程まで、あれだけ、穏やかだったのに、暴力的で、周りの物体に、世界という物に、トゲトゲした、尖ったものを、ぶちまけていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る