第51話
メイたちを寝かせた後、俺はすぐにひばりの部屋を訪れた。
ノックをするとすぐに扉が開き、ひばりが出てくる。
「唯人、どうしたの?」
「疲れてると思うけど少し散歩しないか?」
「大丈夫。疲れてないよ」
俺たちは通路を歩きながら今日の出来事を楽しく振り返る。
「今日のお祭りは楽しかったな。どこの世界でも屋台のはどうしてあんなに美味いんだろうな?」
「あはは、確かに。僕はノーザイア城から出たことが無かったからこの2日間は夢のようだったよ」
「それにしてもひばりのあのドレス姿はなぁ…」
ひばりが顔を赤くして
「あ、あれは忘れてってば!」
そんな他愛無い話をしながら庭園に着いた。
2人で腰を下ろす。
すると、ひばりが真剣な顔になり訊ねた。
「唯人、三木島さん以外のみんなはどうなったの?」
俺の部屋でこれまでの経緯は話したが、肝心なクラスメイトの話は伏せていた。
「………橘と木嶋、それに鳥井は生きてる。森保、堂島、佐藤、赤井、嶋崎は殺した」
俺は事実を述べた。ひばりに隠し事はしたくない。
「そっか…
でも意外だな。鳥井さんを許してるだなんて」
『今は犬になってるよ』とは言えない雰囲気だな。これは後でいいか。
普通であれば半狂乱になっておかしくないのだが、ひばりは察していたのだろう。全く動じることがなかった。
「唯人はこれからもみんなに復讐していくつもりなの?」
俺は空を見上げて目を閉じて答える。
「……このままだとそうなるな」
実際、クラスメイトの姿を見た、いや聞いただけで全身の血が沸騰するような感覚になりどす黒い感情に支配される。
そして、俺はひばりの目を見て自分の率直な思いを口にする。
「ロストエデンに来ないか?」
少しの間があった後のひばりの答えは俺の予想通りだった。
「僕は唯人と一緒にいたいよ。けれど、みんなも一緒というわけにはいかないかな?」
「無理だな」即答で返す。
「どうして?今ならみんなが唯人に謝って仲良くやっていけるよ」
俺はふぅとため息をついてから答える。
「それは本当に良心からか?イジメに加担した、傍観したという本心からの謝罪か?
ただ、ロストエデンが強いから。庇護を得たいからじゃないのか?」
「後者のヤツらをロストエデンに招く気はない。強いからという理由のヤツらはピンチになるとわーわーと喚き出す。そして、自分が自分だけが助かるために裏切る。他の人のことは一切考えずに。そんなヤツらを信用して置いておくことはできない。
そして、俺は麻奈とひばり以外は後者だと思っている」
ひばりが立ち上がって激しく抗議をした。
「そんなのやってみなくちゃわからないよ!僕はみんなには良心があってそれに基づいて行動してほしいし、それを信じたい」
(そうはなってないから俺はイジメられているんだけどな)
俺はひばりの肩に手を置き落ち着かせる。
「まぁ、落ち着け。
とりあえずひばりはロストエデンに来るってことで良いんだな?
後はみんなをどうするかってだけで」
「うん、僕は唯人と一緒にいたいからね」
「ところで話は変わるんだが、ひばりのスキルは何なんだ?戦闘系か?」
「伝えるのを忘れていたね、僕のスキルは…………」
「そのスキルを知っているやつはいるか?」
「いや、いないよ。唯人が生きてるって信じてたから。唯人に一番に知らせたかったんだ」
俺は少し考えてから、ひばりへと提案した。
「じゃあこうしないか?
…………………………………でどうだ?」
ひばりは笑顔で頷く。
「それイイね!それなら僕も納得できる。ただ僕はやっぱりみんなを信じるよ」
※『ひばり編』長すぎて申し訳ありません。今のところ次回で終わる予定です。
ただ、男の娘を書きたかったので後悔はしてません!( ・`ω・´)キリッ
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