第25話

『青』



その球を見た瞬間パッと木嶋と橘の顔が醜い笑顔になった。


「三木島を押さえろ。最初の仕事だ。」


2人は醜い笑顔で三木島へと猛ダッシュ。

ふるふると首を振る三木島の両腕を押さえた。


「ほらぁ!おとなしくしなよ!公平な結果なんだからさぁっ!!」


俺と魔王は悠然と歩いて向かう。

その途中、魔王は落ちていた剣を手に取った。


俺は進みながら魔王にしか聞こえない声で

と呟いた。



そして、魔王から一振りの短剣を受け取る。

刀身は紫、柄に金の蛇の装飾がされた見るからに凶々しい短剣。魔力が込められているらしく淡く光っている。


「さて、お別れだよ。三木島さん。覚悟はいいかい?」


三木島はなおもふるふると首を振り「いや…助けて…」と呟いていた。


俺はそれを見て「大丈夫だよ。」と声をかけた。

3人の顔は???だったが、次の瞬間俺はその短剣を三木島の心臓に突き立てた。

三木島の顔がガクッと下がったのを確認した木嶋と橘が押さえていた両腕を離すと、三木島は地面に倒れた。


2人は

「本当に助けてくれるんだよね?ね?何でもする!えっちでも何でも!」


俺は2人に向き直り、笑顔で言った。


「もちろん。約束は守るよ。さて、魔王。」


俺が魔王に合図した次の瞬間、木嶋と橘の両腕と両足が切断された。

綺麗に切断されており血はほとんど出ていない。


2人は一瞬何が起きたのかわからず、地面に倒れてから「ギャァぁぁぁぁぁ!!なんで!なんでなんで!!助けるって!!」と悲鳴をあげた。


俺は笑顔から一転2人を冷たい目で見ながら告げた。


「あぁ、でもこれからの君たちに手足は不要だ。その身体だけあれば事足りる。」


2人の混乱をよそに俺は続けた。


「さて、仕事の件なんだが、、、

どこから話そうか。前にアーガイア国とノーザイア帝国の間で戦闘があったのは知ってるかい?

その時、アーガイアには多大な犠牲が出てね。その中にオークという種族の魔族がいたんだ。」


2人は顔をあげ「オークってあの醜いブタの…?」


「そうそう。

で、そのオークの中の2人だけはちょうど採集に出ていて無事だったんだけど、残りはノーザイアの兵に串刺しにされてしまった。彼らは深く悲しんだらしくてね…。」



橘は気づいたらしい。

一気に顔が青ざめてゆく。

「うそっ…そんなっ……」と首を激しく振る。

それを見た木嶋が「遥!どうしたの?しっかり!」と声をかける。


だが、橘はそんな木嶋の声を無視し俺に懇願する。


「お願いっ!それだけはっ…それだけはやめて!!あなた様のなら喜んで受け入れますッ。だから、だから…」


とうとう橘は俺のことをあなた様とまで呼び始めた。

俺はにっこり笑うと、橘に向かって宣告する。


。さっき言ったろ?君たちは同意した。」


橘の顔が絶望に染まってゆく。手足がないのに身体がガタガタと震えている。

木嶋だけがわかっていないようだ。だから、俺はわかりやすく説明してやった。


「つまり、ということさ。これなら木嶋さんでも理解できるだろ?」


木嶋はハァッ!?と声を出し、


「何言ってんの?無理に決まってんじゃん!あんな醜いブタどもの児なんか!!頭イッてんじゃねぇの?」


俺はやれやれと首をすくめ、あえて笑顔で言う。


「木嶋さん、これからオークのお母さんになる人が家族のことをそんな風に言うもんじゃないよ?ね?」


「これはオークの2人も喜ぶぞ。種族繁栄の兆しだからな。心配するな。彼らのアレはでかいし量もハンパないからすぐ孕める。そして、産んだ後はまたすぐに…」

魔王も笑顔で続いた。


魔王の言葉で冗談ではないとわかったのだろう。木嶋の顔も絶望に染まってゆく。橘同様ガタガタと震えだした。

さすがの木嶋もオークの苗床はイヤなようだ。



魔王が俺に「おい、そろそろ…」と耳打ちをする。

あぁ、どうやら2人の絶望の表情を見ていたら時間を忘れていたらしい。


「あぁ、頼む。」


魔王が手を差し出すと巨大な魔法陣が浮かび上がる。

その中心にあるのは『三木島麻奈の死体』

その周りを黒い光が何本も立ち上る。やがて、三木島の死体が宙へと浮かぶ。


木嶋と橘の2人はこれ以上何が起こるのか…という表情で固唾をのんで見守っている。



「そうそう、種族は何にするんだ?」


俺は唐突な問いにはぁ!?となってしまった。


「種族なんかあるのか?聞いてないぞ。」


「あるに決まってるだろ。魔族ってもお前が言ったオークやデーモンなど色んな種族がいる。で、どうするんだ?」


種族をどうするなど言われても全くわからない。仕方ない。


「オススメは?」と聞いてみた。


魔王は少し考え


「ハエの女王とかどうだ?便利だぞ。」


「お前アホか!!俺は虫全般嫌いなんだ!ハエの女王なんかにしてみろ。すぐにバルサンを焚いてそっこー殺す!」


「バルサン??便利なんだがな……仕方ない。時間もないから勝手に決めるぞ?」


俺は超超超超超絶不安になったが、時間がないのも確かなので魔王に任せた。


三木島の身体が黒の光に包まれ、その光が凝縮してゆく。

そして…はじけた。


そこに浮かんでいたのは顔は確かに三木島なのだが、、、


まず、胸。これが今までの三木島の比ではない。そして、その胸を覆っているのは申し訳程度の布。

さらに股間をこれも際どい布で隠しただけ。

着ているものは以上で終わり。

極めつけは尻から黒い尻尾が生えている。





私はゆっくりと目を開いた。

自分の置かれている状況が全くわからずあたふたする。


あれ?あれ?なんで私…死んだはずじゃ…あれ?浮かんでる?

それになんで三鍵君あんなに口を開いて驚いてるんだろう?私を見て驚いてるような…?


そこで、私は自分の身体を見てみた。

顔が真っ赤になってゆく。


「きゃぁぁぁぁぁっ!!」

私は自分の身体を手で抱きしめて隠した。

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