第12話

「お前、もう帰れよ。」


俺は魔王に言い放つ。もはや、礼儀作法などあったものではない。


魔王は魔王で頭を抱えている。

「あんたんせーで、俺のイメージが…」


2人同時に「はぁ…」とため息をついた。



仕方ない。本題に入ろうという魔王の提案で話し合いを進める。

魔王の話を要約するとこうだ。



①…現在、5大国はノーザイア帝国の侵略を受けている。

②…ノーザイア帝国以外は自分たちから攻撃を仕掛けたことは一度もない。

③…5大国が纏まろうにも、自分たちのところで手一杯な為、他に余力を回すことができない。(不仲関係もあり)

④…ノーザイア帝国は最近、大規模な召喚を行った。

⑤…異世界から来た者は高レベルのスキルを持っている為、これから侵略は激しさを増すだろう。



俺はなるほどと納得した。

確かに人間(こちらではヒト種だったか)は自分たちの種族以外を排除する傾向が強い。



俺は率直に思ったことを聞いた。


「確かアーガイア国は一度侵略で負けてるんだよな?そこに住んでた魔族はどうなったんだ?」


魔王は歯軋りをしてから言い放った。


「女は連れ去られ、男はほとんどが全滅だ。逃げ延びた者も少しはいたが…俺たちが駆けつけたときには村は敵兵に占拠され、男の死体が串刺しにされ高々と掲げられていたよ…」



女がどうなったか聞くまでもない。見たところ魔族の女たちは美形だ。そういうことだ…



「そこまでされて、なぜ報復しないんだ?」

聞きづらいが聞かなきゃいけない。スルーしてはいけない。


「守ってばかりでは勝てないだろう?やがて、疲弊し侵略される。」



これは『The lost world』で俺が学んだことだ。日本人はゲームでも大人しい。

だから、ロシアなどの国から攻められると防御に徹する。やがて、疲弊しゲームを去っていく。

そこで、俺は逆にロシアを攻めてみた。すると、すごく脆い。

あっという間に崩壊し、彼らは暴言と共に引退していった。



「俺たちの国はそこまでの余力がない。戦える者の戦闘力は高いが数が少ない。それに、平和を好む者が多い。」



ソドン村を見ていると、その通りなのだろうと思う。

(まぁ、ノーザイア帝国にはアイツらがいることもわかったし。このままってわけにもいかないだろう。)



俺は魔王に提案をした。


「ひとまず、侵略された土地を取り返さないか?俺たちが力を貸してやる。」


魔王は身を乗り出し答えた。


「本当か!?だが、こちらは出せる兵が少ないんだ。」


俺はニヤッと笑い応じる。


「構わないさ。兵は俺たちが出す。大義名分だけあればいい。試したいこともあるしな。それに…」


魔王はゴクリと唾を飲み「それに…?」の続きを促す。


「個人的に恨みがあるヤツがいるんだ。悪いが、ソイツだけはこっちに引き渡してもらう。それが力を貸す条件だ。」


俺の表情を見て魔王は少し怯んだ。

少し間が空いたが、最終的には「それで頼む。」と言った。


俺は満足して頷き、

「交渉成立だな。それで、いつにする?こちらは準備にさほど時間はかからない。そちらの都合の良いときで構わない。」



「一度戻って編成し、こちらに来る。それからで構わないか?2、3日時間が欲しい。」


意外と早いな。それなら充分待てる。相手が対策をする前に攻めきれる。


「あぁ、それで構わない。こちらは編成を終わらせておく。それから、アーガイア国の旗を多めに持ってきてくれ。さっきも言ったが、大義名分は大切だからな。」



話が纏まると、魔王はすぐに自身の部隊とともに引き揚げていった。



さてと、こちらも準備しなくてはならない。まず、一番重要なことから始める。




「メイ。体調はどうだい?」


俺がメイの部屋に姿を見せると、メイはパアッと笑顔になった。

歳の離れた妹とはこれほど可愛いものか。

非常に可愛いので、後で写真に撮らなければなるまい。


「あ!司令官!メイはもう大丈夫だよっ!たっくさん美味しい物食べて元気になったよ。」


誰だ…俺を司令官とか教えやがったハゲは!後で説教しなければなるまい。


「メイ、俺のことはお兄ちゃんって呼んでくれるかな?」


「うんっ!わかった、お兄ちゃん!」


……これは後で録音しなければなるまい。

違う違う。そんなことをしに来たわけではない。


「ところで、メイ。ツラいことを聞くかもしれないけど許してくれ。

あの街でメイとお父さんに優しくしてくれた人はいるかい?この人は助かって欲しいって人はいるかい?」


メイは少し考えてから「んーん、いないよ。お兄ちゃんどうして?」


俺はそれを聞いて安心した。

「そっか、大丈夫。何でもないよ。もう少ししたらお兄ちゃんが色々案内してあげるよ。」


メイの笑顔がハジける。


「ほんとっ!?もう少しってどれぐらい?」


俺は笑顔で「一時間半後ぐらいかな?」と答えた。これで一時間半後には全て終えなければならなくなった。

お兄ちゃんが約束を破るわけにはいかない。




それから俺はすぐに副官全員を司令官室に召集した。

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