第7話
ウェル領に着いた俺たちは、堂々と正面から入るわけにはいかない。
しかし、カーミラの部隊は隠密部隊の為、全く問題無かった。特殊なワイヤーを使い、難なく中へ入ることに成功。
今回は調査がメインなので、俺一人で街を歩いている。(実際には、カーミラとその部隊が何かあれば即座に行動できるように見張っているが。)
一応、俺自身も準備時間中にマシンガンを撃ってみたら意外といけたので武装してきた。
道は予想通り舗装などはされていない。建物も古そうだ。(地震とかきたらそっこー潰れそうだな…。)など思いながら進む。
しかし、あちこちに露店が建ち並び呼び込みの声が聞こえる。
一人の少女が薪を運んでいる。5、6歳だろうか。ボロボロの服、裸足、ボサボサの黒髪、顔はやつれて手足はガリガリだ。
(あの子、ちょっと量が多すぎ…)
と思った瞬間、案の定つまずいてぶちまける。道行く人が助けるのかと思っていると、
「オイッ!!何ぶちまけてんだよ!さっさと拾え、カスが!」
「これだから、下囚は…いやだわ。汚いし。早く目の前からいなくなって欲しいわ。」
(コイツら…)抑えようと思っていたが、つい体が動いた。
「大丈夫?俺も手伝うから。さ、集めよう。」
「……う、うん。」
手早く集め、俺が運び少女と並んで歩く。
そんな俺を人々は奇異の目で見てくるが、全く気にならない。
そして、街外れの今にも崩れそうな家に着くと、少女は止まった。
「ん?ここで良いの?」とこわがらせないように笑顔で聞く。(内心はカーミラさんが怒ってないかビクビクしているが…)
「あ…あ、ありがと…。」
「じゃあ、俺は行くね。」
歩き出そうとすると、少女に服を引っ張られる。
「…おうち…寄っていって。」
そんなこんなで何故か少女の家にお邪魔している。当然だが、埃っぽくまわりの家具らしきものも全て汚い。座って待っていると、少女とこれまた痩せ細った父親が出てきた。
「このたびは娘を助けていただいたそうで…本当にありがとうございました。何もおもてなし出来ませんが、どうぞおくつろぎ下さい。」
深々と頭を下げる父親。
その時、俺の腹がキュウゥゥと鳴った。
「ハハ、少しお待ち下さい。大したものは用意できませんが…。」
お構いなくという間もなく父親は奥へ行き、すぐに欠けた皿を持って現れた。皿の上には親指ぐらいしかないサツマイモ?のような物が2つ乗っている。
「下囚の身ではこれが限界なのです。申し訳ありませんが、どうぞお召し上がり下さい。」
この家を見る限りでもわかる。本当に限界なのだろう。俺は好意を無駄にしないよう、すぐにそれを口へ入れた。スカスカでとても美味いとは言えない。
それでも、、、
「とても美味しいです。ありがとうございます。あなた方は食べないのですか?」
「ハハ、私たちはお腹がすいてないので…お気になさらずに。」
少女もコクコクと頷いている。
明らかに嘘だ。そんな体であり得ない。
「ところで、下囚とは何でしょう?私は旅をしておりまして世間に疎いのです。」
下囚とは、領主が民に重税を課す。すると、反発が起きる。だが、民より下の者を作ることによって、それを防ぐのだそうだ。自分より下の者がいれば、自分はまだマシである、の理論だ。
しかも、下囚は自分たち以外いないらしい。
「どこかへ移るなど…」と俺が言いかけた時、外から何人もの声と足音が聞こえた。
父親は、ハッとして俺を奥の扉へ誘導し扉を閉めた。
「オイッ!!いるか!?」
「こんなきったないところによく住めるわねぇ。わたくしのドレスに埃がついちゃうわ。」
「これは、、『ムーア様』と騎士隊の方々。こんな汚いところへおいでなさらずとも呼んでいただければ私が参りましたのに。どうしてこちらへ?」
「わかってるでしょ?税の滞納よ。下囚の分際で滞納するとは良いご身分ね!」
ドカッという音と「うぅ…」と父親のうめき声が聞こえる。
「このところ不作でして、、うぅ…もう少しお待ちいただくわけには…。」
「できないから、わざわざわたくしが出向いているのでしょう?お前たちこいつらを。」
「ハッ!」
「な、なにを…。うぎゃぁぁ。お、お許しを…。うぅ…メ…イ……」
その後父親の声は聞こえなくなった。
もう我慢の限界だ。
「何をしている!!」俺は勢いよく扉を開ける。そこに見えたのは胸を貫かれた父親と、腹を切られた少女。
それからドレスを着た女と騎士が7名。
「誰だッ!!お前は!!この方は領主の娘のムーア様だぞッ!誰に向かって…」
騎士が言い終わるより先に俺は、マシンガンで父親の胸を剣で貫いている騎士にマシンガンを撃つ。と、同時に叫ぶ。
「カーミラ!!こいつらを殺れ!!」
俺の合図とともに、カーミラが現れ、近くの騎士を3人瞬時に討ち取る。
あっという間もなく4人の騎士が死んだ。その騒ぎを聞きつけ、外の騎士が5、6人駆けつけた。
一際、良い装備を身につけた1人が、
「ムーア様、一旦引きましょう。撤収だ。」と掛け声をかけると、すぐに引いていく。
「あなたッ!!顔は覚えたわ!待ってなさいッ!!必ず地獄を見せてやるわッ!!」
という捨て台詞とともに。
俺はすぐに父親の元へと駆けつけ
「おい!しっかりしろ!」と声をかけるがもう亡くなっていた。
後ろからカーミラが
「司令官…少女…息ある。」
俺はすぐに少女を抱え、カーミラに叫ぶ。
「カーミラ!今すぐロストエデンへ戻る!」
そして、俺たちはバトルバイクを最速で飛ばしロストエデンへ少女を連れて戻った。
すぐにジョー博士の研究室へ駆けこむ。
「ジョー!!この子を死なせるなッ!!司令官命令だ!!最優先で行え!!」
俺のただならぬ気配に博士は真剣な顔で、
「ハッ!!お任せ下さい!!」と答える。
少女が目を覚ましたのは、3日後のことだった。
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